(2-1)侍女の仕事は大変だ!
これより2章です。
侍女の仕事については、結構想像部分が多いです。ご了承ください。
ーーー世界最強の侍女になるんだ!
ーーー前世では叶わなかった、本当のなりたいオレになってやる!
そう意気込んだバルルは、翌日からドタドタと仕事に取り組む。が、それは侍女として相応とは言い難いモノだった。
バルルはあの時一念発起したあまり、侍女の衣服は動きにくいと、用意された衣服を破った。身支度はほとんどしない。実家と同じで髪さえ整えず、ボサボサのまま作業に取りかかる。当然サリーの大目玉を食らい、その日は日中の大半を謹慎させられた。後日、大量の反省文を書かされたのは言うまでもない。
掃除はドタバタとうるさいくせに大雑把。広い屋敷で迷子になりかけ、慌てるがあまり転びまくって装飾品を落としかける。その度に持ち前の俊敏さを使い、破壊という最悪の事態からは避けられた。とはいえ、サリーからの説教は避けられないが。
洗濯は相変わらずで、汚れが落ちきってなかったり布がヨレヨレになったり。洗濯の仕方は毎度毎度教わっているが、完璧までは程遠い。とはいえ洗濯では持ち前の体力で、考えられない量の水やら洗濯物を抱えて、サリーやフォーク子爵からは色んな意味で目立っている。
バルルにとって1番の問題は、とにかく落ち着きがないことだ。何かをする度に失敗を起こして、混乱しながら挽回しようとドタバタして、それがまた別の失敗を招く。そうすればサリーから「いい加減になさい!」とまたまたお説教だ。
彼女は、根っからのトラブルメーカーらしい。バルルが来てからというもの、ジェステルの屋敷はとにかく騒がしい日々になっていたのだ。「淑女になりなさい」と期待した母には、とんだ悲報なので知らないことを願おう。
毎日怒られてばかりなので、流石のバルルも参ってしまう。オマケにその理由は自分の不足にあるので、落ち込み度合いは大きい。
「オレ、侍女に向いてないのかな・・・。そもそも、前世なんか思い出さなきゃ良かったのかな・・・」
と数十秒ほど顔を暗くするが、「いやいやいやいや!」と頬を叩いて何とか立ち直ろうと、頭をブンブン振る。
「大丈夫、うん大丈夫。だってオレ、頑張って乗り越えてきたじゃないか!小っちゃい時も野球でヒット打てなくても、諦めずに練習してたら出来るようになったんだ!まずは行動しないと、メソメソしてたら兄ちゃんに突っつかれるし!」
そうだ、乗り越える方法は、既に前世で得られたはず。モヤモヤしてても始まらない、まずは行動しなければ!
とにかく今できることは・・・明日の朝、15分早く起きるために寝ることだ。大欠伸をしつつ、バルルはドスン!とまたまた音を立ててベッドに入るのだった。