プロローグ
趣味は創作小説投稿、さんっちです。ジャンルには広く浅く触れることが多いです。
軽く見切り発車の長編なので、投稿頻度はまちまちです。ご了承ください。
この世界に産まれてから、散々「女の子らしくいろ」と言われてきた。
そんな身なりで恥ずかしくないのか。服装やメイクに興味を持ったらどうだ。もっと落ち着きなさい。まぁ総じて「淑女として相応しくしろ」という矯正だ。彼女には強制で、存在否定でしかないが。
もう既に出来てしまった性格だ、居心地の良い自分だ。求められている姿が正反対であることが、どうしようもないことだが、どうにも辛い。
前の世界は、こんなこと言われなかった、でも偶然転生した“貴族社会”では許されないのだ。どうせなら記憶が消えていれば良かったのに。都合の良い展開にならないのは、如何にも人生らしい。
ーーー君といると、すっごく楽しい。
そんな最中に出会った、野良犬の群れに怯えていた彼。強気で明るすぎる彼女を否定しなかった、拒絶しなかった、馬鹿にしなかった。それが本当に嬉しかった。
路地裏を駆け巡り、パンにがっつりかぶり付き、色々なことを話して。受け入れてくれた彼の前では、本当の自分でいられた。たった数十分を共に過ごすだけで、幼心ながら好意を抱いてしまう。
その後、彼は公爵家の産まれであり、貧乏男爵家の自分では手の届かない存在だと知るのだが。