第八話 最狂に喰われた者
決闘を終え、闘技場から退場すると、セリナが声をかけてきた。
「リーヴ!」
「ん?」
「あんた、一体何をしたのよ?」
「……何をしたって? 僕はテミス先輩を普通に殴って倒しただけだけど……」
「殴った!? 私には、リーヴがあいつを殴ったようには見えなかったわ……」
うん。だって、時間を停止させたからね。
「リーヴ、あいつを一瞬で倒せるほどの威力で殴ったの?」
…………ラッキー。
「……うん。そうだよ。僕の異能力《身体上昇》でね……」
「へぇー! リーヴの異能力、ライズって言うのね! 一体どんな能力なの?」
「……身体能力を格段に上げる能力だよ」
「……なるほど。そういうことだったのね。リーヴの異能力で、あいつを殴る威力と速さが上がるから、あいつを一瞬で倒せた……って訳ね!」
「うん……」
これで……4つ目か……。
★ ★ ★ ★
――翌朝
朝食を食べに寮の中にある食堂に行くと、トレーを持って立ち食いをしているテミスがいた。
僕はテミスに話しかける。
「おはようございます! テミス先輩! いや~、今日は良い天気ですね!」
「…………」
僕が話しかけても、テミスは下を向いたまま黙食をしている。
「……あれ? テミス先輩と一緒にいた二人は?」
辺りを見回すと、テミスと一緒にいた二人は少し離れたテーブル席で食事をしていた。
「…………話しかけても……無視された……」
「じゃあ、テミス先輩……ぼっちですね!」
「…………ぼっち。……俺は……ぼっち。…………ハハハハハッ。俺は……ぼっちなのか。ハハハハハハハハッ……」
あらら~。こいつ、完全に壊れちゃってんじゃん。
僕は不適な笑みを浮かべる。
「テミス先輩、ぼっちでいるのは寂しいし、苦しくないですか?」
「……苦しい。……寂しい」
「そうですよね! そんなテミス先輩に、苦しい思いも寂しい思いもしなくなる方法を教えてあげます!」
「…………どうすればいい?」
「とても簡単なことですよ~! ……この学園を自主退学すればいいんです!」
「学園を……自主退学……。そうすれば……楽になれる?」
「はい! この学園を自主退学すれば……テミス先輩は、自由の身になれますよ!」
「…………じゃあ……そうする」
「退学届は、職員室の廊下にありますよ~!」
「……そうか」
すると、テミスはトレーを床に置いて、退学届を取りに職員室に行ってしまった。
「アハハハハハハ……! 滑稽だね~……」
「あら、リーヴ」
「おはよう。セリナ」
「おはよう……。ん? この床に置いてある食事は……?」
「それは、テミスのだよ」
「そう……。なら、どうでもいいわ。そんなことより、リーヴ……早く朝食食べるわよ」
「は~い」
――僕は今日もセリナと一緒に食事をするのであった。
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