第四話 狂人にして凶人=リアヌ・ディヴィス
――翌日
「あー、今朝も話したが、今日の授業は昨日の模擬戦の続きを行う」
今朝から僕はセリナに昨日のことを謝ろうとしたが、声をかけづらく謝れずにいた。
「はぁー……。ちゃんと謝らないとな~……」
「リーヴ」
「……セリナ!」
「そ、そのー……昨日は不快な思いをさせ――」
「ごめんなさい。昨日、君にしつこく聞いて怒らせちゃって……」
「リーヴ……。だけど、昨日は私にも非があったわ」
「うん。そうだね」
「うん。そうだね……って、はあ!?」
「アハハハハハハ……! 冗談だよ!」
「……バカリーヴ」
僕にはその時のセリナの表情が、うっすら笑っているように見えた。
「あー、第11試合、リアヌ・ディヴィス対カミラ・セミロフ」
「イーヒヒヒヒヒヒヒヒヒ! 女女女女女女女女女女女女女女女女女女女……」
「ねぇ、リーヴ……」
「うん。狂ってるね!」
リアヌはカミラを見つめる。
「あ~、いいね~」
カミラはごくりと生唾を飲む。
「俺は君のような華奢な女の子が大好物なんだ~」
「…………キモッ」
「イヒッ! イーヒヒヒヒヒヒヒ! キモッ……今キモッって言われた。イーヒヒヒヒヒヒヒ……! あ~、楽しみだ~。イヒッ! イヒヒヒヒ! イーヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……!」
「……狂ってる」
「あー、第11試合、リアヌ・ディヴィス対カミラ・セミロフ。試合開始」
カミラは異能力《弓と麻痺矢》を発動して、リアヌの足を目掛けて麻痺矢を放つ。
リアヌは足を目掛けて放たれた麻痺矢を間一髪で躱す。
「イーヒヒヒヒヒ! 危ねぇ危ねぇ」
「……勝った」
「はあ?」
次の瞬間、リアヌの体は麻痺して動かなくなる。
「グアッ……!?」
「その麻痺矢は半径2メートル以内の周囲を麻痺させるの。あんたはこの矢を躱せば麻痺することはないと思ってただろうけど、残念。あんたの敗因は私を甘く見たことね。……ジノル先生、相手は体が麻痺して動けないので戦闘不能ですよね? 試合を終了し────えっ……? どうして……? どうして私の前に……木があるの?」
すると、カミラの背後から聞き覚えのある声がする。
「ざんね~ん! 君が今まで戦ってたのは……木、だ~。イヒッ! イーヒヒヒヒヒヒヒヒ……!」
カミラは振り返る。
「な、んで……」
「君が木に攻撃して勝利を確信したときの言動は……実に滑稽だったな~! イーヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……!」
カミラは混乱して黙ってしまう。
「おいおい、黙るなよ~。試合はこれからだろ~」
「…………試合は……これから?」
「だって~、この試合で勝つには、相手を戦闘不能にさせるか、降参を宣言させなければいけない。そうだろ~。……つまり~、君はまだ戦えるし、降参を宣言してないから敗北していないってことになるよな~」
「…………私は……まだ……」
「だから~、試合はまだ終わってないだろ~」
「…………そうよ。試合はまだ終わってない。私は……まだ……負けてない!」
「…………はあ? 何言ってんの? お前~」
「えっ?」
リアヌは不適な笑みを浮かべて、舌を出す。
「お前はもう負け確だぞ~」
「えっ……?」
「じゃ、始めるとするか~」
「……な、にを?」
「イヒッ……!」
リアヌはカミラの鳩尾を左拳で殴る。
「う゛っ……!」
カミラはしゃがみ込んで、鳩尾を押さえる。
「しゃがむなよ~」
リアヌはカミラの顔面を蹴る。
「カハッ……!」
カミラは仰向けに倒れる。
リアヌは馬乗りになって、カミラの口を右手で押さえる。
「降参は宣言させねぇぞ~。イーヒヒヒヒヒヒヒヒ……!」
「んー! んー!」
「あ~らよっと」
リアヌは再度左拳でカミラの鳩尾を殴る。
「う゛っ……!」
「あ~、楽し~! 楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しーー!!」
リアヌはカミラの鳩尾をひたすら殴る。
「もっと! もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっとー! イーヒヒヒヒヒヒヒヒヒ……!」
「う゛っ……!」
カミラは涙目になる。
「あ~、いいね~! その顔……実に美しーい! イーヒヒヒヒヒヒヒ! イーヒヒヒヒヒヒヒヒ……!」
リアヌは再度カミラの鳩尾を殴る。
「う゛っ……! オェェェェェェェェ……」
カミラは嘔吐をして、カミラの口を押さえていたリアヌの右手に吐物が付く。
「イーヒヒヒヒヒヒヒ……! や~と吐きやがった!」
リアヌは右手に付いた吐物の匂いを嗅ぐ。
「あ~、いい匂いだ~」
リアヌはその右手に付いた吐物を舐める。
「…………う……うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」
「こ…………こう……さん……」
「試合終了だ。保健委員」
「「「「はい」」」」
保健委員の生徒らは、嘔吐をして倒れているカミラを保健室に運ぶ。
「リアヌ、お前はその右手を洗ってこい」
「……は~い」
この試合を観戦していたリーヴは――何故か笑みを浮かべていた。
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