第三話 赤髪の美少女=セリナ・イーリス
ギドは白目を向いて地面に倒れている。
「リーヴ、試合終了だ。戻れ」
「はーい」
僕は笑みを浮かべる。
リスクヘッジ完了!
「……ジョーカー、あいつは俺と……よく似ている」
「ジノル先生」
「あー、保健委員の奴らか。コイツを保健室まで運んでくれ」
2、3年生の保健委員によって、ギドは保健室に運ばれていった。
「……ねぇ!」
「ん?」
「あんた、まあまあ強いのね!」
僕に話しかけてきた少女は、目を見張るほどの美少女で────リナによく似ていた。
「アリナ……」
「アリナ? アリナって誰よ?」
「あっ、いや……なんでもないよ」
「そう……。私、セリナ・イーリス! あんたの名前は?」
「……リーヴ・レクトル」
「リーヴね! 覚えておくわ!」
「あー、第2試合、セリナ・イーリス対ライナス・ブロワリア」
「……リーヴ!」
「ん?」
「ボッコボコにしてくるわ!」
「あ~、うん。頑張って」
自信満々なセリナは前に出る。
「あー、第二試合、セリナ・イーリス対ライナス・ブロワリア。試合開始」
自信満々なセリナは前へ足を踏み出す……と同時に、相手のライナス・ブロワリアが右手を上げた。
「降参します。僕の異能力は戦闘に適していないので」
「えっ……?」
「試合終了だ。戻れ……」
「……試合……終わっちゃった……」
それを見ていた僕は、下を向いて唇を噛んで笑いをこらえた。
『ボッコボコにしてくるわ!』って、自信満々な顔で僕に言ってたけど……戦えずに試合終了してんじゃん!
「戦えなくてごめんね。君は戦いたかったと思うけど……」
「そうよ! 本当は戦ってボッコボコにしたかったけれど……戦闘に向いていない異能力なら、仕方ないわね!」
「……そう言ってくれてありがとう。えっと……セリナちゃん」
「ちゃん……!?」
「ん? どうかしたの?」
「な……なんでもないわ!」
「そっか……。セリナちゃん、試合が始まる前にリーヴくんと話してたよね?」
「え……ええ。リーヴと話していたけど……」
「試合を見て思ったけど、リーヴくんってすごく強いし、頭も良さそうだよね」
「頭がいいのかは知らないけど……そうね! まあまあ強いわね!」
「アハハハハ……! まあまあ強い……か。……ねぇ、セリナちゃん」
「ん? 何?」
「リーヴくん、セリナちゃんを見てこう言ってなかった? ────アリナって」
「!! あんた……どうしてそれを!?」
「実は僕……リーヴくんと顔見知りなんだ」
「な……なんだ! そうだったのね!」
「うん……」
★ ★ ★ ★
学園の授業が終わった僕は寮に戻り、自分の部屋のベッドに横たわって大きなため息をついた。
「めっちゃ疲れた~。だけど……ギド・カンネスの顎を蹴り上げて気絶させたときは、めっちゃ気持ちよかったな~! あの快楽をまた味わいたいな~。……さてと、お腹が空いたから食堂に行こ」
僕は寮の中にある食堂へと向かった。
★ ★ ★ ★
食堂に着き、僕はトレイに乗ったミートソースパスタ、シーザーサラダ、オニオンスープを手に持ち、空いている席を探した。
「え~と、空いてる席は……」
すると、僕は一人で食事をしているセリナを見つけた。
「あっ、空いてる席見っけ」
僕はセリナに近づく。
「隣、座ってもいいかな?」
「リーヴ……!? べ……別に構わないわ!」
僕はセリナの隣に座り、にやけ顔でセリナにこう言った。
「君、友達いないんだ~」
「なっ……! う、うるさい! あんただって友達いな――」
「君、口の周りにミートソース付いてるよ」
「えっ……!? え、えっと……ど、どうしよう!?」
「こっち向いて……」
「えっ……?」
僕はセリナの口の周りに付いているミートソースを指でとり、指についたミートソースをなめた。
「へ……変態!」
「えっ……どこが?」
「どこが!? 普通はなめないわよ! 女の子の口に付いてたミートソースを!」
「え~、美少女の口の周りに付いてたミートソースをなめるぐらい普通でしょ」
「び、びび、びびび、美少女……!?」
「ん? どうしたの?」
「な……なんでもない!」
「もしかして……怒ってるの?」
「別に怒ってなんかないわよ!」
「君、すごく顔が赤いけど……本気でどうしたの?」
「…………お……オニオンスープが熱すぎるからよ!」
「全然湯気出てないけど……」
「で……出てるわよ! あんたには見えていないだけよ!」
さすがに無理があるでしょ。その嘘は……。
「さっきから様子が変だけど、どうしたの?」
「な……なんでもないわよ!」
「君がそう言っても、僕には君がなんでもないようには見えないよ。ねぇ、どうしたの? 僕に教えて――」
すると、セリナはテーブルを『ドンッ!!』と叩いた。
「なんでもないって言ってるんだから、なんでもないのよ!」
「…………」
食堂で食事をしていた生徒らが、僕らの方を見ている。
「へ……部屋に戻るわ」
セリナはトレイを持って、席を立って行ってしまった。
僕はため息をつく。
「これだから僕は……あの時だって────」
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