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第十六話 リーヴ・レクトルVSリアヌ・ディヴィス(後編)

 誤認識で見えている奴は、未だに地面に倒れていた。


「ねぇねぇねぇ! いつまで倒れてんの!? たった一発殴られただけで、立つことも出来ないの!?」


 僕はわざと大きなため息をつく。


「もういいや……。さっさと終わらせよ……。とっても残念だ。まさか君がこんなに弱かったとはね……」


 僕は馬乗りになって、誤認識で見えている奴に呟いた。


「おやすみ。リアヌ・ディヴィス……」


 僕は奴の顔面を本気で何度も殴った。

 今、僕……本気で地面を殴っているんだろうな~……。まあでも、もうすぐ本物の奴を殴るから、別に構わないけど……。


 僕は奴の顔面を本気で何度も殴り続け、奴の顔を真っ赤に腫れさせた。

 奴は、鼻血や唇から出血をしながら気絶している。

 僕は深呼吸をして立ち上がり、ボソッと呟く。


「そろそろかな……」


 僕は挙手をして、わざと審判に話しかける。


「あの~、審判の人~! 相手、気絶してるんで……僕の勝ち――」


 奴が異能力を自ら解き、幻聴や誤認識で見えていたものが消えた。


「ざんね~ん!」


 そう言いながら奴は、背後から僕の頭を殴ろうとしているが……奴の行動を読んでいる僕は、笑みを浮かべながら言う。


「ではないか……!」


 僕は奴のパンチを見ずにガードした。


「はあ……!?」


 僕は背後を振り返りながら言う。


「だって、僕が今まで殴っていたのは……壁と地面だからね!」

「…………お前……どうしてそれを……!?」


 奴は顔面蒼白になりながら、僕のことを見つめている。

 僕は、奴が顔面蒼白になっているのを見て思う。

 

 そうだ……その顔だ! お前のその顔を見ると、僕の愉しさが倍増する……! 


 僕は奴の肩に手を置き、不適な笑みを浮かべながら奴に言う。


「ヒッ……!?」

「【決闘申請】が始まる前に言ったよね~。僕が君ごときに負けるなんて、100%ありえないけどねって……。確かに君の異能力は強力だ。2つともね……。カミラなどの並の生徒が、君のことを倒すのは100%不可能だよ……。だって君の異能力は、誤認識をさせて幻聴を聞かせるのだから……」

「!?」

「だけどね……君よりも()()()()()()()()()()していて、君よりも()()()()()、君よりも強い奴が、この学園には()()()いるんだ。君のことをクラスメイトの奴らはイカれてるって言ってたけど、僕からしてみれば君は……女の子の鳩尾を殴って、無理やりゲロを吐かせるクソ野郎で、女の子のゲロを舐めるのが趣味の変態クソ野郎で、幻聴と誤認識をさせる()()()()()()()()()()()、クソ雑魚だよ……。君は所詮、この学園のモブに過ぎない……」


 奴は手足を震わせ、呼吸を荒くして僕を見つめている。


「あっ、そうだ。今だから君に言うけど、昨日君が舐めてたゲロ……あれ、カミラのゲロじゃないよ……!」

「え……!? じゃあ誰のゲロ――」

「アハハハハハハ……! 君のそのリアクション……実に()()だね! アハハハハハ! アハハハハハハハハ……! さ~てと、君との【決闘申請】を存分に愉しめたから、そろそろ終わりにしようか……!」

「ヒッ……!! こ、ここ、ここここ……こうさ――」


 僕は奴の口を左手で押さえて、不適な笑みを浮かべながら舌を出して奴に言う。


「降参は宣言させないよ~! ベェー」

「んんんんー! んんんんんー!」

「アハハハハハ! アーハハハハハハハハ……! よ~いしょ!」


 僕は奴を蹴り倒し、馬乗りになって奴の口を再度左手で押さえ、僕は奴に力強く握り締めた右拳を見せる。


「とりあえず今はこれで楽にしてあげる……!」

「ん……!」

「おやすみ! リアヌ・ディヴィス……!」

「ん! んんんん! んんんんんん! んー!!」


 奴は必死になって暴れるが、僕は奴の腕を足で押さえつけて……奴の顔面を本気で殴った。


「ん……!!」


 一発殴っただけで、奴の鼻からは鼻血が出ているが、僕は構わず殴り続ける。


「この程度じゃ、君が今まで犯してきた罪は償えないよ……」 


 次第に奴の顔は赤く腫れ……30発程度殴った頃には、奴の顔は真っ赤に腫れ上がり、大量の鼻血を垂らしながら気絶していた。

 僕の手や制服には、奴の鼻血が付いている。


(きたな)……。早く洗い流さないと……」


 僕は立ち上がり、審判に声をかける。


「審判の人~。相手、戦闘不能ですよ……」

「しょ……勝者、リーヴ・レクトル!」


 僕はズボンのポケットに手を入れて、早歩きで闘技場を去った。




★ ★ ★ ★




 僕は寮に戻り、奴の鼻血が付いた手と制服を水で洗い流していた。

 すると、セリナが僕に声をかけてきた。


「リーヴ!」

「ん? どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ! あんた、どうやってあいつの異能力から目覚めたのよ……!?」

「え~と、それは~……」

「それは……?」


 セリナは距離を縮めて、僕に聞いてくる。


 ん~、困ったな~。セリナになんて嘘をつこうか……。【決闘申請】が始まる前から、僕の2つ目の異能力《能力無効》を発動して、奴の異能力を無効にしてたんだ~! な~んて、絶対に言ってはいけないし……ん~、セリナにだけつける上手い嘘があればな~……。


 僕はさっき奴と【決闘申請】をしているときに、セリナが僕に『何してんのよ! リーヴ! 目を覚ましなさいよ!』と言っていたのを思い出した。


 な~んだ、あるじゃん。セリナにだけつける上手い嘘が……。


「奴と【決闘申請】をしてるとき、セリナが僕に『何してんのよ! リーヴ! 目を覚ましなさいよ!』って言ってくれたからだよ……!」


 僕がそう言うと、何故かセリナは顔を赤くして、モゾモゾし始めた。


「ど……どうしたの?」

「な……なんでもないわ!」


 その時、僕はセリナが突然モゾモゾし始めた原因に気づいてしまった……わけではないが、恐らくこれなんじゃないかと予想する。


 僕は笑みを浮かべながら、セリナに話しかける。


「ねぇ、セリナ……!」

「な……なによ?」

「君……おシッコを我慢してるから、モゾモゾしてるんでしょ……!」

「…………」


 僕がそう言うと、何故かセリナは指をポキポキ鳴らした。


「リーヴ……」

「ん?」

「あんた、私に喧嘩売ってんの……?」

「えっ……!? ち、違うよセリナ! 僕は本当に君がおシッコを我慢してるから、モゾモゾしているのだと思ったんだよ!」

「……ふ~ん。そう……」


 僕は安心して深呼吸をする。


 良かった~。セリナの誤解が解けて……。


「もうすぐ夕食の時間だから、食堂に行かない? セリナ……」

「ねぇ、リーヴ……」

「な……何?」

「恥ずかしいけど、私はあんたのことを()()してるわ……」

「えっ……!?」


 僕にいきなりビンタをしてくるあのセリナが、僕のことを信用してる……!?


 僕は笑いを噛み殺す。


「だから、あんたが私に喧嘩を売っていないのは信じるわ……。だけど……」

「だけど……?」

「レディーに向かって、下品で失礼なこと言ってんじゃないわよー!!」


 ――そう言いながらセリナは、僕にビンタをしてきた。

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