十三夜
星明かりの下で
待宵草を
探したあの日
星月夜から
十三の夜を数えて
薄雲の彼方に浮かぶ
美しき空の鏡
そこに
映るものを見つめて
それは海
満ちては引いて
引いては満ちていく
さゆらぐ人の心のように
それは光
太陽から浴びた
光が空へと反射して
水面に浮かぶ夕映えのように
それは自分
何か足りないと
この手を伸ばし続ける
今宵の空に輝く月のように
十三夜
満月に向かって、時を重ねて
やさしさは
寄せては返す波のように
いつか誰かの砂浜に届き
また自分へと
還る波となるから
十三夜
たとえ今、満月でなくても
闇夜にやわらかに寄り添う
月の光があるように
時に不安や恐れに囲まれ
昏くなった心の中でも
夢や情熱の煌めきが
誰かの想いの灯火が
言葉が持つ光が
照らしてくれる道を
十三夜
まだ満ちていない、未完の月
二夜目の満月が
ないように
いつも完璧な人も
いないから
足りない自分
弱い自分も愛せたら
もっとやさしく強く
もっと自分らしく
なれると信じて
十三夜
満月より、なお美しく
足りないのではなくて
欠けているのではなくて
それがきっと
生きているということ
かもしれない
満ちゆく時には
生きる喜びを
影をつくる時には
生きるその意味を
月は
教えてくれるから
それは空の鏡
そして心の鏡
そこに映る自分を
見つめる十三夜
10月8日の今夜は、中秋の名月(十五夜の満月)に次いで、あるいはそれと同じくらい月が美しいとされる、「十三夜」です。満月より少し欠けたこの月を、風流として大切にしてきた古の人々の心を感じます。お読みいただき、ありがとうございます。