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魔法の通じない侵略者

「目標を確認!砲撃術式、構え!!」


 空を飛ぶ黒い塊を目撃したA地区の砲撃部隊指揮官の指示に従い、杖を取り出し空中に慣れた手付きで砲撃魔法の術式を書き込む。A地区だけで30、そして狙える他の地区も併せて累計で70門の砲が用意される。


「もう少し……射程に入ると同時に放つぞ!」


 遠眼鏡を構え、黒い塊の様子を確認するが、進路を変更する素振りもなく真っ直ぐと此方に向かってきていた。空を飛ぶ鉄の塊など見たことがないが、一切自分達を視認出来てない様な動きに指揮官は笑みを浮かべる。何せ、アルテマ国は戦争を勝ち残った勝利国であり、基盤は魔法によって支えられていた。その自分達が使用する魔法の中でも威力の高い砲撃魔法がこれだけの数用意されている所に、防御魔法の展開すら見せず突っ込んでくるのだから愚かさしか感じなかった。


「所詮は奇襲頼みって事か。我々が戦力を整えればこの通りよ」


 そして、敵は砲撃の射程内へと侵入した。指揮官の号令の下、一斉に砲撃が放たれ、瞬く間に敵は煙に包まれていった。厚さ10mの城塞壁すら砕く砲撃だ。敵は海の藻屑になったと確信した指揮官達の眼前に驚きの光景が現れる。


「なっ!?撃墜どころか、傷一つ負っていないだど!?」


 黒煙の中から一切、傷の負っていない敵が姿を現す。進路を変更する素振りを見せなかった事が愚か?とんでもない勘違いを彼らはしていたのだ。そもそも、敵からしたら砲撃魔法など避ける理由にすらならないだけのこと。大人が小さな子供のパンチを避けないのと同じで、当たったところで無傷なのが分かりきっていれば進路を変える必要など一欠片も存在していない。


「う、撃て!!撃って撃って撃ちまくれぇぇぇ!!」


 その事実を認めたくない指揮官は半狂乱になりながら砲撃指示を飛ばすが、当然ダメージを与えられる訳もなく、友軍に誤爆する可能性が生まれた為、彼より上の立場の人間によって止められる事となった。











 砲撃が一切、通じなかった。やはり、連中が乗るあの鉄の塊は一つ目同様に、魔法が効かないのだろう。海から陸へと場所を変えてもなお、奴らは悠々と飛んでいる。砲撃が通用しない以上、僕達に連中の足を止める手段はない。くそっ、このまま見送るしかないのか?敵はすぐそこだってのに!!


「ん?あれは……」


「どうかしたかアレク学徒兵?」


 ミルド軍曹には見えていない様だが、僕の視界の先には空を飛ぶ黒い鉄の塊から姿を現す金色の装飾がされている一つ目が見えた。瞬間、全身が煮え立つ様な怒りを感じ飛び降りようとしているそいつの落下地点目指して走り出していた。


「お、おい!勝手な行動をするな!!アレク学徒兵!!」


「一つ目が落ちてきます!!」


「なんだと!?おい!」


 ミルド軍曹の静止も振り切り、全力で走る。アイツは、アイズ教官やオータム、友人達の仇だ。なんとしてもこの手で倒す!!一つ目が落下していき、前方から戦闘音が響き渡り、それに混ざる様に悲鳴が聞こえだす。やっぱり、魔法が通用していない様だ。なら、僕がやれる事はただ一つ。腰に携えている剣を勢いよく引き抜く。


「ソード!!」


『新手か』


 剣を魔力で強化し、勢いよく一つ目に斬りかかると奴は、その身体からは想像できない機敏さで反応し背後から斬りかかった僕の一撃を手に持つ大剣で防ぐ。


「くっ!」


『……学生か。そんな者まで戦場に出すとはな』


 鍔迫り合い、そんな物を許してくれない圧倒的な力で僕を吹き飛ばし一つ目は男か女かも分からない声で呟く。


「お前らが攻め込んでくるから、僕らみたいな学生も戦わなきゃいけないんだ!!」


『正確には私達の正体を全く掴めない首脳陣のせいだと思うがね。ただでさえ、大きなお前らの国の東側全てを守ろうとするから人手が足りなくなる』


「下がってろ!学徒兵!!……ぎゃあ!!」


 僕を庇う様に前に出た兵士が挽肉にされる。受けに回ればああなっていたのは僕の方だ。


「お前ら!学徒兵を守れ!!正規軍人が引け腰でどうする!!」


 10数名の兵士が剣や槍といった各々の武器を構え一つ目の前に立ち塞がる。僕と同じ様に魔力で武器を強化しているのが分かり、中には炎や雷の属性を付与している者もいた。敵は一つ目一体のみ、本来なら相手に勝ち目など一切ないが一つ目は変わらずそこに立っている。


『……一つ一つ潰すのは面倒だな』


 手を後ろに回し、腰に付いていた独特の形状の武器を構える一つ目。なんだアレは……もっと細長ければ歴史の教科書で見た銃という武器だと思うけど、全体的に太くそして短い。下の方に付いている筒はなんだ?


『消えろ』


 一つ目の言葉と共に空気を裂く凄まじい音が奴の持つ銃の様な物から放たれると同時に、目の前に立っていた兵士達の身体が穴だらけになっていく。このまま立っているのは不味いと直感で理解した僕は、近くにあった塹壕へと飛び込む。音が聞こえなくなるまで待ってから顔を出すと、そこには全身から血を流し倒れている骸と、銃の下にある筒を取り替えている一つ目がいた。


「い、一体、何が……」


『まだ生きてたか。運が良いと言うか勘が良いと言うか。まぁ良い、姿を出したのならお前も殺す』


 このまま此処にいたら死ぬ。自分が穴だらけになる光景が脳裏に宿った僕は、魔力を自分の脚に集める。


「アクセル!」


 脚元で巻き起こる風が勢いよく僕をその場から押し出すと同時に、先程まで居た場所に穴が空いていく。やっぱり、あれは銃の様な物で何かを撃ち出しているみたいだ。加速の魔法で一つ目の攻撃を避けていく。アイツの動きは決して速くないから、脚を止めず動き続ければ攻撃を貰う事はないけど……


『逃げるだけでは勝てんぞ』


 奴の言う通り、逃げてるだけでは勝ち目はない。そんな事を考えていると、カチッという音が聞こえ一つ目の攻撃が止まり、銃に付いている筒を取り替え始める。狙うのなら此処しかない!


「ソード!」


 再び剣を魔力で強化し、加速した勢いのまま一つ目に向かって斬りかかる。筒を取り替えていた奴は、僕の攻撃を防げず右肩から斜めに袈裟斬りを狙った僕の剣を受ける。そこから攻撃の手を止めず、剣を構え直し勢いよく突く。


 ガキィン!!


「なっ!?」


 宙を舞う折れた剣が砂辺に突き刺さる。突き出した剣が黒い装甲に当たると同時に、勢いよく折れたのだ。袈裟斬りを狙った場所も全く傷が付いておらず、僕の攻撃が通じていないのが理解できた。


『狙いは悪くなかった。普通の兵士であれば殺されていただろう』


 筒を取り替え終わった一つ目が銃を僕に向ける。目の前に突き付けられた人を容易く穴だらの肉に変える武器を見て、全身から冷や汗が流れる。こんな、こんな所で僕は死ぬのか?


『私に攻撃を加えた事を誉に思い、死ね』


 引き金を引くのがやけにゆっくりに見えた。人は死ぬ時に周りの景色がゆっくり見えるのは本当だったんだと思いながら、僕は死の恐怖からを目を閉じる。ごめん、オータム……仇取れなかった……!


「全員、攻撃開始!アレク学徒兵を助けろ!!」


『なんだ!?』


 ミルド軍曹の言葉が聞こえると同時に、一つ目の背中が爆ぜる。魔法であれば一つ目の黒い装甲に当たると同時に霧散して通用しないはず……


「へっ、この辺りで取れる爆薬をちょいと詰め込んだ爆弾のお味はどうだ!」


「気を抜くなよウィルズ、奴の装甲はまだ健在だ」


「魔法が効かない装甲ねぇ……厄介だな」


 ミルド軍曹の周りに見たことない3人が立っていた。どうやら、爆弾を投げたのが坊主頭のウィルズという人物らしい。


「っと、この子は貰っていくよ一つ目さん」


「うわっ!?」


 いつの間にか後ろにいた黒髪の女性に抱き上げられミルド軍曹元まで運ばれる僕。い、いつの間にいたんだ?


「良くやったシン。ウィルズは隙を見て、爆弾の投擲!ホムラは、我々へと援護魔法!ルークは私と共に近接戦だ。アレク学徒兵は下がっていろ!」


「「了解!!」」


 先程ウィルズさんと話していた赤い髪をポニーテイルにしている人が数歩下がりながら杖を構えると同時に、ミルド軍曹が剣を構えて前に飛び出し、その後を追う様にもう1人、顔に大きな傷のある恐らくルークさんが大剣を構えながら前に出る。


「ミルド軍曹僕も!」


「君はまだ駄目。大人しく、私と一緒に居ようね」


「ですが!!」


 僕を抱きしめているシンさんに抵抗するが、力が強く抜け出せない。


「軍隊行動の出来ないお前に、軍人の戦いを見せてやる!案ずるな、我々は負けないさ!」


 確かに命令も聞かず飛び出したのは僕だ。本来なら、命令違反で処罰されても文句は言えない。シンさんへの抵抗を止め、ミルド軍曹達の戦いを見守ることに決める。此処で、下手に暴れて迷惑をかける方が愚かだ。


『……はぁ、面倒だな』


「大人しく投降するのなら殺しはしない。お前達の正体を聞かねばならないからな」


『ふん。聞きたければ実力で私を捕らえてみせることだな』


 大剣をミルド軍曹に向けて突きつける一つ目。それを見て、静かにため息を吐き剣を構えるミルド軍曹。此処に、一つ目とミルド軍曹率いる小隊の戦いの火蓋が切って落とされたのだった。

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