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華言葉の呪い -Freya-  作者: 衣吹
華言葉の呪い
3/24

【すれ違う思いは強く】

やっと出せました!!第三話です!


 レミールと別れてから丸一日ほど歩いた。今まで嗅いだことのない匂いのする風を感じながら歩き続ける。林道を抜けるとすぐに海岸沿いだった。3人は生まれて初めて海を見た。景色が一変し、広がる碧に感動した。


セオドア「これが海ってやつなのか。なんだろ、広すぎて……それにすごくきれいだな……」


へレーナ「水がすごくキラキラしてるよ。入れるのかな!?」


ヨハンネス「行ってみようぜ、あとここはもうミコヌスなのか?」


セオドア「人がいたら聞いてみようよ。俺も海行ってみたいし!」


 砂浜に降りて走り出す。足が砂に取られて走りにくい。へレーナは盛大に転び、その拍子に服を掴まれたヨハンネスも一緒に転ぶ。セオドアはその様子を見て爆笑し、起き上がったヨハンネスに押し倒された。全員が見事に砂まみれになったが笑顔は絶えない。へレーナは波打ち際まで進み、冷たい水に足を差し出した。


へレーナ「気持ち良い!!凄いね!海って!!」


 へレーナがスカートを持ち上げて海を楽しんでいる一方で、男二人は服を放り出し砂浜から水辺まで全力疾走して勢いよく海に飛び込んでいた。海に潜ったかと思えばすぐにまた顔を出し、水をかけ合いゲラゲラと笑っている。へレーナはそんな男どもを尻目に水の中にある綺麗な貝殻を発見していた。光に当てるとその表情を変える貝殻に惚れ、気にいった物を集めていた。日が傾き始め、そろそろ行こうかとセオドアが提案する。


ヨハンネス「そうだな。はぁ~、楽しかった。でもなんかすげぇ疲れた……。」


へレーナ「ねぇ見て!これ、凄くきれいでしょ。たくさん集めたの!!」


セオドア「へぇほんとだ。すごくきれいだな。」


へレーナ「でしょでしょ!アクセサリーに加工できないかな。」


ヨハンネス「それこそミコヌスに行けば出来そうだけどな。セオドアも新しい剣買えよ?」


セオドア「そうだな。とりあえず人を探すか。」


 海岸を歩いていると子連れの親子を発見し、声を掛けた。話を聞くと、ここは既にミコヌスで、街があるのは島の方だと聞く。その島に行くための船が出ており、親切な親子は船着き場まで案内してくれた。小さな小舟に乗り、街まで揺られていく。海風を感じ、夕日を眺めながら乗る船は3人の心に強く残った。誰もが、この景色を忘れまいとしていたのだ。街までは30分程で到着した。船を降りるとそこは白を基調にした美しい街並みが広がり地面は石畳になって、とても歩きやすくなっている。海岸沿いには沢山の店が並び、盛況だった。道はあちこちに伸びており、迷路のようだった。夕日のオレンジが白い街並みの色を変化させ、また新しい顔を見せていた。


セオドア「凄いな……。村にいたらこんな景色一生見られなかった。とりあえず市場に行ってみようか。買い物あるし。」


ヨハンネス「市場はあっちじゃないか?人も多そうだし。」


 市場に向かうと世界中から船で集められたであろう品々が綺麗に並べられており、品定めをする物や、ただ店主と雑談する者もいれば自分たちと同じ旅人も沢山いた。市場に入ってすぐのところにアクセサリー屋を見つけた。店主は若いバンダナをした女性だった。


へレーナ「すいません、これアクセサリーにしたいんだけど出来るかな。」


アクセサリー屋「もちろんだよ。これは昼光貝だね。太陽の光を浴びるといろんな色に輝くんだ、そして夜になると集めた光を自ら放つ。このあたりの海岸で拾ったのかい?」


へレーナ「そうなの!とっても綺麗だったから。耳飾りにしたいんだけれど出来るかな?」


アクセサリー屋「もちろんそしたらこのままじゃ大きいから色々加工するけどいいかい?それにこの量は使わないわよ?」


へレーナ「余った分はお姉さんが使って。集めるのが楽しくてたくさん集めちゃったの。」


アクセサリー屋「いいのかい?これだけあれば沢山のアクセサリーを作れる。いつかまた必要になった時に寄ってくれ。耳飾りは作っておくよ。また気が向いた時に寄ってくれ。お代はこの貝殻で。」


へレーナ「いいの!?ありがとう!!楽しみにしてるわ!」


アクセサリー屋「そこにいる男どもも、欲しいのがあったら持って行っていいよ。」


ヨハンネス「俺は、このままでいいや。結構気に入ってるしな。」


 セオドアとヨハンネスは小さい耳飾りを付けていた。セオドアは水色、ヨハンネスは左の耳にだけ赤い耳飾りを付けていた。二人は幼少期から同じものを使っているが、誰からかもらったのか、自分で買ったのかはもう覚えていなかった。


セオドア「それずっと使ってるじゃん。片方ないし、なんのやつ?」


ヨハンネス「覚えてないのかよ。まぁいいや、俺はいい。」


セオドア「う~ん、俺もいいかな。俺もこれが気にいってる。」


アクセサリー屋「そうかい、じゃあまた後で来な。街には来たばかりなんだろう?ミコヌスは見るところが沢山あるんだから。」


 アクセサリー屋をでると日はすでに沈んでいた。しかし街はランタンの明かりにともされまだ明るかった。市場を進んでいくと武器屋を見つけた。セオドアは新しい剣を買って、それ背負った。欠けた剣は武器屋が引き取ってくれたので、荷物がかさばる事にもならずにすんだ。完全に夜になり、本日の宿を探していると、丁度良い宿があり夜を明かした。翌朝まずアクセサリー屋によってヘレーナの耳飾りを受け取り、街にある公衆酒場に向かった。酒場には様々な人が集うため、その分色々な話も聞くことが出来る。酒場に入りカウンターに座る。


マスター「何にします?お客さん。」


へレーナ「私、お酒飲めないからミント水を。二人は?」


ヨハンネス「じゃあ麦酒で。お前もそれでいいか?」


セオドア「うん、大丈夫。麦酒二つで。」


マスター「かしこまりました。」


 マスターは手際よくグラスに麦酒を注ぎ、二人の前にサッと出した。へレーナのもとにも他の店員がドリンクを出す。とりあえずドリンクを飲み、一息つくとマスターが声を掛けてきた。


マスター「お客さん旅人さんかい?」


セオドア「うん。でも当てがなくて困ってるんだ。何かこの辺りで変わった話聞いたりしなかった?」


マスター「変わった話ですか……。そうですねぇ、変わった話かは分かりませんがこの海域にいた海賊たちが皆余所へ行ったとか。伝説の海賊も姿を消して、いよいよここが襲われるかと皆不安になってましたが、おかげで海は平和になりました。」


ヨハンネス「へぇ~、海でなんかあったのか?」


マスター「それは分かりませんが、この前ここにいらした商人さんが反対側の大陸に行けなくなったとぼやいておりました。関係があるのでしょうか。」


セオドア「なんで行けなくなったか聞いてない?」


マスター「たしか最近天気が大荒れだそうで。嵐が唐突に起こったりするものだから危なくて近づけないと。」


へレーナ「嵐!?……それが起こり始めたのって1か月前とか?」


マスター「あぁ、丁度その位ですね。良くご存じですね。」


 3人は顔を突き合わせる。言いたい事は同じのようだ。


セオドア「嵐ってとこと水の精霊がこっちに来た時期も一致するし、もしかしたらこれは風の精霊なんじゃないか。」


ヨハンネス「これは行って確かめるしかないな。なあ反対側の大陸に行くにはどうすればいい?」


マスター「前は港から船が出てましたが、今はどこも運休です。この嵐が収まるまでは船は出ないと思いますよ。」


へレーナ「そうよね……とりあえず港に行ってみない?船は出ないかもしれないけど、何か他に聞けるかもしれない。」


セオドア「そうだな。行ってみよう。」


 酒場を出て海の方向へ向かう。港には沢山の船が停泊しており、人々の出入りも激しかった。今日も天気がとても良く波がキラキラと光を反射して輝いてた。港を闊歩していると、終着点まで着いてしまった。港に泊まっていた船はどれも商人が忙しなく荷物を降ろしたり積み上げたりしており、とても声を掛けられる様子はなかった。この街へ観光に訪れた船も反対側の大陸には行けないと一点張りで何も収穫は得られなかった。終着点ではあまり親切ではなさそうな人々が睨みをきかせている。ある船を通りかかった時、壁に寄り掛かりながら酒をラッパ飲みするあまり清潔感の無い男がヘレーナに声を掛けてきた。


酔った男「お、お嬢さん、とっても素敵な首飾りをしているねぇ。どこで買ったんだい?」


へレーナ「え?これは……」


ヨハンネス「おっさん、なんか用?」


 へレーナに絡んでくる男をヨハンネスが引きはがす。セオドアもヘレーナの前に立ちはだかり、男から庇った。


酔った男「な、なんだよ、俺はこの子に用があるんだよ~。ねぇ嬢ちゃん、こいつら置いて俺と楽しいことしようよ~」


 まだ諦めずにヘレーナに絡もうとする男にヨハンネスが先に怒りを露わにし、酔った男を蹴飛ばして海に突き落とした。


へレーナ「あ~、やっちゃったね。」


ヨハンネス「知るかよ、これで目覚めんだろ。」


セオドア「怖っ。へレーナ、大丈夫か?」


へレーナ「うん、私は全然。」


 男がびしょ濡れになりながら岸に上がって、また3人の元に戻って来ると腰に下げていたサーベルを取り出した。


酔った男「よくもやってくれたなぁ……」


 男がサーベルを振り上げ襲い掛かってくるが隙だらけの男の攻撃など相手にならず、簡単に男を地面に倒した。


ヨハンネス「おい、まだやるか?勝ち目はねぇぞ。」


 酔った男はヨハンネスの真剣な眼差しを見て突然大声で泣き出した。3人が「へ?」と油断していると今度は謝罪を始める。怖くなってその場を立ち去ろうとしても今度はヨハンネスの足に縋りついてきて逃げられない。騒ぎを聞きつけた人たちが集まってくる。完全に見世物状態だった。


酔った男「ごめんなさ~い。ほんとはそんなつもりじゃなかったんです~!」


ヨハンネス「わ、分かったから。話くらい聞いてやるから。手離せって!頼む、逃げないから!!」


セオドア「と、とりあえず移動しようか。おじさん、立てる?」


 人目を避けて街の路地裏に移動した。へレーナは未だすすり泣く男に一杯の水を差しだした。その水を一口飲んでまた泣き出した。仕方がないので男が落ち着くまで傍で待つことにした。


酔った男「ありがとう……。皆さん優しいんですね……。」


ヨハンネス「で?何がそんなつもりじゃなかったんだよ。」


酔った男「実は俺海賊だったんです。でも、使えないからって船長にクビにされちゃって、何か金目の物を持っていけばまた仲間に入れてもらえるかもしれないって思って……!!でも、俺やっぱりだめだぁああ。」


ヨハンネス「ああ、船長の気持ちが分かるよ。でもそんなに海賊に戻りたいのかよ。人から物奪えない時点で向いてないぜ。」


酔った男「それを言わないでくださいよぉ。人助けだと思って、その首飾り譲っていただけませんか。」


へレーナ「ごめんね、これはあげられない。出来るなら何か力になってあげたいけど……海賊に戻りたいなら無理かな。」


酔った男「海賊に戻りたいというより、あいつらを見返したいんです!俺だって、俺だってきっと出来るのに!!散々な事言いやがってぇえ。」


セオドア「でもなんで海賊に?しかもそんなひどいこと言われたなら戻る必要ないんじゃないか?」


酔った男「実は、俺宝の地図を持ってるんです。本物かは分かりませんが。船も持ってたけど一人じゃとても見つけられなくて……。それで海賊団にいたんです。彼らは簡単に仲間に入れてくれて、これだけの人がいれば宝を見つけられるかもって。でも結局海賊団でこの地図のことは言えませんでした。皆商船を襲う事ばっかり考えていて、話せなかったんです。」


セオドア「そうだったのか……。ん?今船持ってるって言った?」


酔った男「え、はい。持ってますけど……。そんなに大きくはありませんが。」


セオドア「俺達反対側の大陸に行きたいんだ。海賊団の代わりに君の宝探しを手伝うから、その船貸してくれない?そうすれば、海賊に戻る必要もないし宝も見つかるかもしれないよ?」


酔った男「宝が見つかるならお安い御用ですけど。でも今はとても船が出せる状況ではないですよ?たまに、風が収まるそうですが運次第です。」


セオドア「それでもいい。二人はどう?」


へレーナ「私も手伝うわ。そんなに悪い人じゃなさそうだし。」


ヨハンネス「お前らが行くならついて行くさ。でも次変なマネしやがったら今度こそただじゃおかないからな。」


酔った男「皆さん……、ありがとうございます!!俺、ジョンって言います。」


 セオドアは自分たちの紹介もした。話を聞くとジョンはまだ20代で、その見た目からかなり年を取っているように見えていただけだった。へレーナの提案により、まずはその見た目を何とかしようと、昨夜泊まった宿に戻って水浴びをした。水浴びに付き合ったセオドアとヨハンネスが顔をしかめる程流れてくる水は黒く、どうなってるんだと聞くと海賊に放り出されてから身嗜みを一切整えていなかったらしい。髪もひげもきちんと揃え、やっと綺麗になると別人のように見違えた。


へレーナ「ジョン!凄く綺麗になったね!!見た目が綺麗だと、自分も気持ち良くない?服もほら、洗っておいたからぴかぴか!」


ジョン「ありがとうヘレーナ。二人もありがとうございます。おかげで街を歩けるようになりました。」


セオドア「いいよいいよ、大したことはしてないから。それで、地図はどこにあるんだ?」


ジョン「これが地図です。と言っても、地図というより指令書のような感じなんですよね。ほら、この街の地図とやるべきことって。で、やるべきことをした後、それに関する問題がついてるんです。その答えが宝のありかを示すみたいで。」


ヨハンネス「ほんとだ、じゃあこれを順番にやっていけばたどり着くのか?」


へレーナ「そうみたいだね。とにかく行ってみようよ。」


 指令書に従い街を散策した。すると指令書の内容は[メティーニアでムサカを食べろ]や、[ポルアティニ教会で祈りを捧げろ]など、とても宝探しに関係あるようには思えない内容の物ばかりだった。メティーニアに向かうと、海辺にある雰囲気の良いレストランで4人は食事を楽しんだ。ムサカだけではなく、その土地で取れた魚介類を使った料理は絶品だった。デザートには牛の乳を発酵させたものも提供された。とても滑らかで口当たりが良く、へレーナが大変気に入っていた。空腹も満たされ、問題の答えも簡単に分かり、次の目的地へと向かう。ポルアティニ教会はこの街に相応しい真っ白な教会でドームのような形をしていた。中に入るといくつかの礼拝堂があり、ジョンが祈りをささげた。シスターと会話をすることで問題の回答を得られた。同じ調子でその他の3か所もクリアした。ジョンは地図が指令書の内容をこなせば宝のありかが分かるあまりにも簡単な物だったので、本当に宝があるのかと心配になっていた。指令を全てこなすとミコヌスの名所や美味しい料理、文化を堪能する事が出来た。ほとんど観光だったがむしろセオドア達は楽しんでいた。答えが出そろい、ついに宝のありかが分かる。


セオドア「問題の答えになる所を線で結ぶとほら、一か所で交わるようになってる。ここに宝があるんじゃないか?」


ジョン「おお!!きっとそうですよ!でもここ、海じゃないですか?まさか海底とか?」


ヨハンネス「海底か……。泳ぐにしても限界あるよな。船持ってるんだろ?とりあえずこの海上まで行ってみようぜ。」


ジョン「そうですね!行ってみましょう。船はこちらです。」


 ジョンの持つ船は港に泊められている。近くで見てみるとその大きさがよく分かった。かなり大きい船だった。とても個人で所有しているような船ではなかった。


セオドア「そんなに大きくないって言ってなかった?これ、すごい大きくない?」


ジョン「俺、父さんが商人だったみたいで。母さんのことはほとんど覚えてないですけど。これも昔から家にあったんです。」


ヨハンネス「それなら尚更なんで海賊なんかに入ったんだよ。宝だって必要なかったんじゃねぇか?」


ジョン「この地図は、母さんが残してくれたみたいなんです。すごく厳重にしまってあって。母さんのこと、何も知らないから……だから、何としてでも宝を見つけたかったんです。」


へレーナ「じゃあ、絶対見つけないとね。もしかして、お母さんに会えたりするかも?」


ジョン「そうなったら……どうしましょうね……。」


ヨハンネス「シャキッとしろよ、ジョン。ほら、行ってみようぜ。もう目の前なんだからさ。」


ジョン「はいっ!」

 

 ヨハンネスに活を入れられ、4人は船に乗り込んだ。操縦もジョンが行い、セオドアたちは海に何か手掛かりはないかと目を凝らしていた。


へレーナ「う~ん、なにも見つからないね。」


セオドア「やっぱり海底かもね。ちょっと見てくるよ。」


ヨハンネス「頼むセオドア。……ジョン!ここらで一旦船を泊めてくれるか?」


ジョン「分かりました!」


 セオドアが海に潜る。海の水はかなり透き通っていて泳いでいる魚たちも鮮明に見える。海底には大小の岩が広がっていたが詳しくは見えない。深く潜ろうとしたが海に慣れておらず、誤って海水を呑んでしまった。喉がしびれるようなしょっぱさに、一度船へと戻る。


セオドア「しょっっっぱ!!!!」


ヨハンネス「そんなにしょっぱいのか?」


セオドア「後で試してみろよ。海底もちょっとしか見れなかったな。」


ヨハンネス「水の中でも息が出来れば簡単なのにな。」


へレーナ「そっか。息出来るかもしれないよ!?」


 そう言うとヘレーナは集中し、セオドアとヨハンネスに魔法をかけた。二人の足は魚に変化し、人魚のような姿になった。ジョンはヘレーナが魔術師だった事と、目の前で起こった事象に腰を抜かしている。


へレーナ「昔絵本で読んだことあったの。人魚の話!」


ジョン「え?ええ?どういう事……?」


へレーナ「ほら、気にしてる場合じゃないでしょ!ジョンも行くよ!」


ジョン「え!?な、なに!?」

 

 ジョンも下半身を魚に変えられ、へレーナも自らに魔法をかけて人魚になった。4人で海に飛び込むときちんと息が出来る上に、泳ぎもスムーズになった。あっという間に海底にたどり着き、宝の地図に示された場所に向かった。地図による場所には小さな洞穴があり、その奥へと進むと何やら文字が書いてある。セオドアがその文字を読み上げた。


セオドア「“宝の地図踏破おめでとう。探検はどうだった?きっとこの美しいミコヌスの街そのものが君の宝物になったはずだ。”……だって。」


ヨハンネス「マジかよ、これだけ?」


ジョン「……宝なんて、なかったんですね……。いや、まぁ確かにあったけど…」


 ジョンは複雑な気持ちから文字の彫られた岩を叩いた。すると岩の裏から僅かな気泡が出てくる。不審に思ったセオドアは岩を押し避けた。岩の裏にはさらに通路が出来ており、先に進めるようになっていた。


セオドア「まだ先があるみたいだよ。行ってみよう。」


ヨハンネス「やっぱりこうじゃないとな。」


ジョン「た、叩いといて良かった~。」


 奥に進むとまだ水が入ってきていない洞窟のような空間にたどり着いた。ここから先は徒歩で行こうとヘレーナに魔法を解いてもらい、4人に足が戻ってきた。奥へと進もうとすると突然地面から太い針が飛び出してきた。


セオドア「罠だ……。皆気を付けて、床だけじゃないかも。」


ヨハンネス「俺こっちの壁見るよ。」


ジョン「じゃあ俺は反対側を……。」


へレーナ「私は……天井見てる!」

 セオドアが先導して奥へと進む。良く見ると床に丸い穴が開いているのが分かり、そこを避けて進んだ。慎重に歩みを進めると、自分達の通った後にはかなりの針が落ちているが、誰にも刺さらずに通り抜ける事が出来た。小さな穴が見えなくなり、一息ついているとへレーナが何かに気が付いたような表情を見せた。


セオドア「どうかしたの?」


へレーナ「上から凄い音聞こえてこない?近づいてるの。ほら……。」


 耳を凝らして聞くと確かにゴロゴロと何かが転がってくる音が聞こえてくる上に地面まで振動し始めた。突然天井が開き、沢山の瓦礫が降ってきた。全力で逃げるように進むが、下り坂のようになっており、瓦礫は勢いを緩めることなく迫ってくる。壁面に隙間を発見し、4人は入り込んだ。何とか瓦礫の難を退け、さらに奥へと進むと池のように水が溜まっている場所に着く。池の中には恐ろしい牙を持った魚が沢山泳いでいた。


セオドア「これは……どうすればいいんだろう。」


ジョン「まだ奥ありますもんね……。ここに入ったら、食べられちゃいますかね……。」


セオドア「へレーナ、何か魔法は使える?」


へレーナ「さっきの人魚でかなり魔力使っちゃったみたいで出来ないの……。」


ヨハンネス「さっきの瓦礫、使えないか?沈めて足場に出来ないかなって。」


セオドア「それ良い!!やってみよう!」


 積極的に瓦礫を運び出し、池へと入れた。池はそれほど深くなく、大きな瓦礫を入れれば、それ一つで足場となった。足場を作ってその足場から新たな足場を作り、地道な作業の結果、池を渡りきることが出来た。重い瓦礫を運び出すのは、かなり疲労がたまる。


セオドア「ふう、なんとかなったな。」


ヨハンネス「そろそろゴールだとありがたいんだけどな。」


 そこからの道は特に罠などもなく、今までに比べて楽に進むことが出来た。しばらく歩き、とうとう最深部と思われる場所にたどり着いた。暗い洞窟の中で輝きを放つ物を見つけた。近づいてみるとそこには一生かかっても使いきれないほどの金貨や黄金、宝石などが山になって積み上がっている。


ジョン「宝は……、本当にあったんだ!!は、ははは!!!」


セオドア「これ全部……。見つかって良かったな、ジョン。」


ジョン「はい!!」


 ジョンが心から嬉しいそうにしているのを見て、セオドア達も嬉しくなった。宝に心を奪われていると、背後から近づく影に気が付くのに遅れた。


セオドア「ジョン!危ない!!」


 セオドアは勢いよくジョンの頭を伏せさせた。ジョンを庇った事により、セオドアは顔に傷を負った。立っていたのは、海賊と思われる格好をしている女性だった。女海賊は宝を守ろうと殺意を向けている。


ヨハンネス「大丈夫かセオドア。」


セオドア「ああ、かすり傷だ。」


へレーナ「だいぶ魔力は回復したわ。私も戦える!」


セオドア「それは頼もしい!……いくぞ!」


 ジョンはセオドアに頭を財宝に打ち付けられたことが原因で気絶していた。女海賊の剣の腕はかなり良く、セオドアとヨハンネスが近距離から攻撃しヘレーナが遠距離で魔法を放った。段々と女海賊を追い詰めていくと、また地面が大きく揺れた。立っていられないほど揺れが強くなり、洞窟が傾いていく。


へレーナ「耳が痛い……!!これ、昇ってない!?」


セオドア「そうかも、しれない!!」


とうとう洞窟は海上に姿を現した。その勢いで、セオドアたちは海に放り出されてしまった。洞窟の方向を見ると、それは船の形をしていた。ジョンの船が見え、そこに向かって必死に泳ぐ。たまたま船の上に放り出されたジョンが目を覚まし、セオドアたちを引き上げてくれた。


ジョン「大丈夫ですか!?」


ヨハンネス「はぁはぁ。助かった、ジョン。」


ジョン「あの船は、行ってしまったみたいです。」


 甲板に立ち、夕日と共に消えていく船を眺めた。沢山の財宝を抱えたまま、新たな海へと進んでいく。


セオドア「何も手に入らなかったけど、楽しかったな。」


ヨハンネス「そうだな、すごい冒険したって感じがする。」


ジョン「それが……、俺いつの間にかこれを握ってて……。」


 ジョンが見せてきたのは新たな宝の地図と、大きな宝石のついた指輪だった。3人も自分の身体をよく見ると、宝飾品がいつの間にかついていた。一人一つずつ、宝を貰っていたのだった。


へレーナ「また、探しに来てってことかな。」


ヨハンネス「またどっかのレストランで飯を食えとか書いてあったりしてな。」


セオドア「その指輪が、今回の報酬の宝なんだろうな。またこの地図をたどれば、新しい宝をくれるかも。」


ジョン「……俺、またこの地図やってみますよ。今度は海賊じゃなくてちゃんとした仲間を見つけて。」


ヨハンネス「あぁ、それがいい。」


 ジョンはセオドア達に礼を言う。約束通り、反対側の大陸に向けて新たに船を出発した。大陸で嵐は続いているが、セオドア達を迎えるように海の風が収まっている。船での旅はのんびりと時間を過ごし、大陸への到着を待つのであった。

私自身も彼らの冒険を見てる気分で書いてます!やっぱり想像をうまく言葉にして書けないところが課題w

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