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華言葉の呪い -Freya-  作者: 衣吹
華言葉のある日
24/24

エルダーナ復興大作戦10

エルダーナ復興最終回です!

 イレネーとレオンがエルダーナのその後について話してから数週間が経った。ついに城の復興にも着手されており、エルダーナに集まった、エルダーナを愛する者たちの中から何人かの代表が選出され彼等を筆頭に、国作りが興っている。かつてのエルダーナが滅んだ際、領土はガスト国のものになるかと思われていたが、一夜にして滅んだエルダーナを誰も我がものとは言わなかった。そのため今この国は宙に浮いたような状態になっていた。選ばれた代表と共にイレネーとレオンは会議をしていた。


イレネー「エルダーナを復興し、こうして今また人が住む新しい国にすることが出来た。だが周辺の国からはまだ、きちんとエルダーナであると認められているわけではない。」


レオン「この状態だと、俺たちが勝手にエルダーナだって主張してるだけだもんな。また戦争はゴメンだぜ。」


イレネー「あぁその通りだ。そこでなんだが、まずは交流のあるアルバディアの王にここがエルダーナであると認めて貰えたらと思っている。既にアルバディアには使者がいるからね。これから新しくこの国を収めるものとして、ハーランドは一緒にアルバディアへ来てくれないか?」


ハーランド「えぇ勿論です。」


 このハーランドという男は元はガスト国の人間だった。しかし住んでいた場所はエルダーナと隣接していた地であり、エルダーナの文化に触れることは多かった。そのため、ガスト国によるプロパガンダよりも、エルダーナという国を肌で感じた末にエルダーナを愛してくれていた。昔は大工の棟梁をしていたらしく、エルダーナが復興するという噂を聞きつけ、復興の初期から携わってくれていた者だった。それ故に今エルダーナに住むものからの信頼も厚く、国の代表に彼以外はいないと言われたほどだった。


ハーランド「まずはアルバディア王へ謁見するという点に異論はありません。その後なのですが、やはり近隣の国にもきちんと認めてもらう必要があるのではないでしょうか。特にガスト国は、またいつエルダーナを奪おうとするか分かりません。アルベルト将軍がエルダーナに居てくれているのは心強いですが、それについて言及される可能性もあるかと。」


レオン「国として認める代わり、アルベルトを返せというのもあり得るな。ま、それはアルベルト次第だがあいつは俺が見た限りじゃ帰りたいようには見えなかったな。」


イレネー「そうだな。今彼らが手を出してこないのは不気味だからの一点のみだろう。また新たに国として機能させるのなら、おそらくまた争いに発展するのではないか。ヘミング、記者としての君の意見を聞きたい。」


ヘミング「それが、そうでもないかもしれません。今ガスト国はミコヌス島を有するグリシャム国と一触即発の状態です。そんな中、エルダーナと……というかあなたと戦をする余裕があるとは考えにくい。というのが私の見解です。副団長イレネーの名は、未だ伝説ですから。」


 彼はエルダーナやガスト、その周辺国の情勢を調べ、民衆に公開する記者として仕事をしていた者だった。エルダーナとガストの戦に巻き込まれた時、レオンの部隊に助けられた事があったという。エルダーナが滅びた後、その事件を追っていたが人の手には負えないと、結論付けたのも彼だった。外交をしていく上でこのように国の動向のプロは不可欠だった。エルダーナの復興に手を貸してくれるのは、騎士団への恩返しだと言う。


ハーランド「手を打つなら今ってことですね。なら早いほうがいい。すぐにでも準備します。イレネーさん、アルバディアまではどのようにして向かいますか。」


イレネー「それなら、ヘレーナが既に任せろと言ってくれている。ここからアルバディアまでは徒歩では時間がかかり過ぎるからな。ここは彼女に甘えよう。」


ハーランド「分かりました。では、出発を……明後日でいかがでしょうか。」


イレネー「そうしよう。彼女にも伝えておく。同時並行で、ガスト国への使者を立てよう。方針も決まったことだ、今日は解散しようか。皆お疲れ様。」


 それぞれが家に帰り、イレネーとレオンも帰路についた。今家にはアルベルトとアブニール、そしてマユキも来ていた。ヘレーナとセオドアは今ヨハンネスのもとへ行っている。どうやらヨハンネスの誕生日が近いらしく、そのお祝いに行ったらしい。家に近づくと、今夜の夕食の香りが漂い、会議で疲れた身体に染み渡った。イレネーが扉を開けるとアブニールがおかえりと飛び込んでくる。まだ幼い無邪気な笑顔は、これからの不安や焦りを消してくれる。そして家の奥からも、優しい声が聞こえた。


マユキ「おかえりなさい。どうだった?」


イレネー「いい方向に進んでいるよ。エルダーナの完全な復興はもうすぐだ。」


マユキ「そう。それなら良かった。良い民主政を築けたのね。さ、ご飯食べましょ!」


 テーブルにはエルダーナの伝統的な家庭料理が並んでいた。先程出来たばかりで、湯気が立っている。


レオン「ポトウじゃん、マユキ作れたのか?」


マユキ「かつての世界じゃ、こっちでもよく食事に出ていたのよ。それこそ学校の給食じゃあ……、まあ私にも馴染み深いの。アブニールも手伝ったのよ。一緒に人参の型抜きしたものね。さ、座って座って。」


 スープの中には、桜の形をした人参と、くり抜かれた後の人参もきちんと入っている。イレネーは自慢気な表情を見せるアブニールの頭をクシャクシャと撫でてやった。皆で食卓に着き、食事にありつくと疲れが癒えていくようだった。アブニールは大きな口を開けてゴロゴロとしたジャガイモや野菜にかぶりついている。今日のスープには、まだエルダーナでは貴重な肉も沢山入っていた。そして、スープの味はエルダーナのものとは少し異なる風味がした。


イレネー「これは……、神の国の出汁というものか。」


マユキ「よく分かったわね。シュウからお出汁をお裾分けしてもらったの。まぁおかげで、この味はポトウじゃなくて肉じゃがみたいになっちゃったけど。これはこれで美味しいでしょ?」


レオン「あぁ、あんまり食べないから美味いな。ついこの前ポトウ食ったな〜って思ったけど、これならまた別もんだ。」


マユキ「あら、メニューを間違えたようで申し訳ないわね。アブニールになに食べたい?って聞いたらすぐにポトウって返ってきたわよ。」


アルベルト「アブニールはポトウが大好きだからな。逆に、レオンのカスレは不評なんだ。どうも豆が嫌いらしい。」


アブニール「カスレも好きだよ!豆以外は!」

レオン「だとよ。贅沢なやつだぜ、俺は豆しか食えなかったのによ。」


イレネー「俺たちが豊かになったという証拠だ。そうだ、明後日ハーランドとアルバディアへ向かう。エルダーナを世界的にまた国として認めてもらうために。」


マユキ「そう、ようやくね。ゴールが見えてきたじゃない。」


イレネー「あぁ。長かったような短かったような……。」

レオン「これで認めてもらえなかったら笑いもんだけどな。」 


イレネー「その時は、またその時だ。それと、ガストにも使者を送るつもりだ。アルベルト、構わないな?」


アルベルト「構わないどころか、俺が行こう。話はおそらくそれが一番早い。俺は、ガスト国に帰るつもりはないが、もし俺の存在を引き合いに出されたらすぐにその場に留まる。エルダーナがそれで平穏なら、そうしてやる。」


レオン「どんな心変わりだよ。」


アルベルト「この国には、恩がありすぎる。エルダーナ王にも、お前らにも。俺の手下達は、今真っ当に生きていられるのは、お前らのおかげだ。だから、その時が来たら俺はこうしようと決めていた。」


イレネー「ありがた過ぎる申し出だが、ここに残りたいのなら、そう言ってくれ。いくらでも手は考える。恩があるのは君だけじゃない。俺たちだってお前には恩があるんだ。」


アルベルト「そうかよ。でもこれは俺が決めたことだ。それに、何もなかったら帰ってくるし、何かあったら故郷に帰るだけの違いだ。これは俺の決意だ。何人足りとも邪魔しないでくれ。」


イレネー「……ありがとう。心からの感謝を。」


 イレネーの言葉に嘘偽りはなく、仇敵であったアルベルトを仲間として受け入れていた。だからこそ、ここで彼の申し出を受け入れて良いものかと悩んだが、アルベルトの決意を無駄にしてはいけないと思った。


アルベルト「まあ次に会う時、またお前らの敵になってたら、そんときゃ捕虜にしてくれ。」


レオン「任せろ、散々こき使ってやるからな。覚悟しとけよ。」


 アブニールはよく分からない怪訝そうな顔をしていたが、それに気がついたアルベルトに頬を突かれてまた笑顔を取り戻した。


 約束の日、ヘレーナはアールヴヘイムから直接エルダーナに来てくれていた。イレネーとハーランドは今エルダーナで用意できる最高の貢物を持って待っていた。


ヘレーナ「準備万端みたいだね。」


イレネー「あぁ、すぐにでも。ハーランドも行けるか?」


ハーランド「もちろんです。」


ヘレーナ「じゃあ行くよ。」


 ヘレーナは杖を振りかざし、その光が眩しくて目を瞑るとアルバディアの暑い空気に変わっていた。あぁもうついたのかと瞼を開けると、とてつもない歓迎を受けた。王宮までの道では音楽隊が賑やかな音を奏で、人々が集まっている。その光景に驚いていると、アルバディア王が王宮の前に立っていた。


国王「イレネー殿!待ちわびておったぞ!」


イレネー「陛下……!!」


 国王まではまだ少し距離があったが、その声は確かに届いた。一行が王宮の入口にたどり着くとヘレーナは深い礼をして、国王に挨拶をした。その後ろにいたイレネーとハーランドも深い礼をした。


イレネー「陛下、御無沙汰しておりました。」


国王「ああ、本当に久しぶりだ。してイレネーよ、今は旅人ではなく、国の代表であろう。ならば、是非手を。」


 国王は手を差し伸べ、握手を求めた。イレネーはそれに応じ、握手を交わした。


イレネー「本当に、またお会いできて光栄です。今日はエルダーナについてと、こちらのハーランドを紹介したいと思いまして参りました。」


ハーランド「ハーランド・アイリドルと申します。平民の出でありながら、こうして陛下とお会いできたことは、最高の誇りであり、幸せでございます。」


国王「国とは、人と人の集まるところに出来るもの。わしとて遡れば平民どころか、名も無いただの人よ。さぁ、こんな所ではなんだ。中へ入ってくれ。」


 国王に広い会議室に案内された。中に入ると既に使者として送っていたエルダーナの者が待っている。そして、皆国王と共に席につく。さて、と本題に入ろうとすると国王の方から話を始めた。


国王「城下町のみとはいえ、エルダーナの復興を心から祝福する。そして、独立の件だがすぐに認めよう。これからは友好国として共に歩めること、誇りに思うぞ。」


イレネー「陛下……、本当にどうしたらこの感謝の気持ちを言い表せましょう。言葉では伝えられぬほど、陛下には感謝をしております。本日はそのお願いで参ったのですが、陛下に全て先を越されてしまいました。」


国王「使者が来た際に話は聞いておったからの。それで、収めるものとして、このハーランド殿が選ばれたのだな。」


ハーランド「仰る通りでございます。国民の中で話し合いまして、私が代表としてこれからエルダーナを治めます。長としてまだまだ未熟ではございますが何卒よろしくお願いいたします。」


国王「そう固くなるでない。これからは同じ国を治めるものじゃ。まずは友好の証としてこれらの品をエルダーナに届けよう。さ、話は以上で良いかの?」


 国王に渡された目録には目を疑う程の豪華な品々が書かれてあった。これからエルダーナに必要な人員や物資、そして家畜や国宝に値するような宝まで書かれている。


イレネー「こ、これは……!」


国王「この国は、かつて主等に救われたのだ。むしろこの程度の支援しかなくてすまないな。だが我々は今日固い絆で結ばれたのだ。何世代先まで、共に歴史を刻もうぞ。ハーランド殿、これからよろしく頼む。」


 イレネーとハーランドは深く深く礼をした。顔を上げると、笑顔の国王とその後ろにいた大臣からみた新たな文書を渡された。


大臣「アルバディアとエルダーナの同盟を示す公式の文書です。どうぞこちらにサインを。」


 ハーランドは初めての長の仕事をした。文書に署名をし、エルダーナの印鑑を押した。そして国王と共に固い握手をした。


 それからは国王の計らいで宴が開かれた。その宴は三日三晩続いた。初日は全員で参加したが、翌日にイレネーはアルベルトのことが気掛かりでエルダーナに一度帰った。


 エルダーナでは今まさにアルベルトとヘミングがガストへ出掛けようとするところだった。人々が集まり、これから各代表になった者たちや、マユキやレオンも見送りに来ていた。


イレネー「アルベルト!!」


アルベルト「イレネーか、アルバディアは良いのか?」


イレネー「あぁ。アルバディアの方はうまく行った。同盟国として支援ももらえた。あっちはハーランドに任せて帰ってきた。」


アルベルト「そうかよ。で、なんか用か?」


イレネー「今日までエルダーナで共に過ごした日々は忘れない。ここまでこれたのは間違えなくあなたのおかげだ。ありがとう、今後もし何かあれば遠慮なくエルダーナを頼ってくれ。もし伝えられない状況に陥っても、必ず助ける。」


アルベルト「余計なお世話だ。あばよ……。」


ヘミング「参りましょう。」


 二人の背中を皆で見送った。かつてアルベルトの手下だった者の中には涙を流す者もいた。彼はやはり、良きリーダーであったと皆の心に刻まれた。


 やがて何日か過ぎ、ヘミングは一人で戻ってきた。その手にはエルダーナの独立を認める文書が握られている。やはり交渉はアルベルトの身柄との交換だった。ヘミングもすぐには譲らず、アルベルトの安全や生活の保証をさせた。それでもしばらくは取り調べがあるようだが、命を奪われる確率は少なからず下がっただろう。皆が悲しんだが、誰も言葉にはしなかった。


 またその翌日にハーランドがヘレーナと共に帰宅した。これらの外交により、エルダーナの周辺国から使者が訪れるようになり、エルダーナはまた国として新たな一歩を踏み出せた。そのためヘミングやハーランドは大忙しであり、アルバディアから届いた物資を友好活用するために各長達は寝る間も惜しんで仕事をしている。この頃には、城も以前のような威厳を取り戻し、日々各国からの使者が訪れている。


 イレネーもしばらくは彼らの働きを見守っていた。だが今日、ついにエルダーナを一度離れ、神の国へ戻ることにした。今ヘレーナと待ち合わせの場所であるあの丘にきている。アブニールを連れて、レオンと共にかつてエルダーナを取り戻すと決意した丘の上で、今荘厳な景色を取り戻したエルダーナを見つめていた。


イレネー「やっと、帰ってこれたな。」


レオン「ああ……、これで良かったよ。俺たちには、また帰る場所が出来た。これで、やっとお前も自由になれたか?」


イレネー「分からない。だけど、清々しい気分だ。ヨハンネスから聞いたが、アルベルトもガスト国で身分を保証されたようだ。とりあえず一安心だな。」


レオン「それなら良かった。アブニール、またいつかおっちゃんに会えるかもな。」


アブニール「ほんと!?」


イレネー「あぁ、いずれ会えるさ。」


 後ろを振り向くと、まだそこにはアンランジュの華が揺れていた。ヘレーナはまだいないのに、そこにカリーナ王女の姿を見た。優しく慈愛に満ちた瞳で微笑んでいる。何も言わず、その瞳に微笑みを返す。すると、王女は誰かに差し伸べられた手を取り、空へと昇っていった。そこに咲いていたアンランジュの華はついにその花弁を落とした。


レオン「何気持ち悪い顔してんだ?」


イレネー「いや、なんでも無い。」


見上げた空は晴れ渡っていた。かつて彼女を失った時見た空と同じ空だ。それでも今は異なる意味を持っていた。

最後までお読み頂きありがとうございました!


実は友人に主人公達のイラストを描いて頂いて、創作意欲が溢れ出しまして、この物語最初からリメイクしようかなと思っていたりします。話の大筋はほとんど同じですが、再構成してより良い物にしたいなと思いました。まだ確定ではないですし、こちらはこちらで続けていくつもりです!私としては彼らの物語をまだ見ていたいので!

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