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華言葉の呪い -Freya-  作者: 衣吹
華言葉のある日
23/24

エルダーナ復興大作戦9

月1投稿ギリギリ間に合いました……!


セオドア「じゃあ事故だったってこと?」


 イレネーの部屋にかつての仲間たちと、イレネーを襲撃したアンゼがその場に揃っていた。


イレネー「そういうことだ。彼は、私にナイフを振りかざすことはしたが、自分と葛藤してその刃を降ろしたんだ。だがその時に、運悪く資材に当たってしまって、バランスを崩した資材の下敷きになりそうだったところを、私が突き飛ばしたんだ。」


レオン「で、その時更に運悪く首が切れたって?」


イレネー「そんなところだな。本当に心配かけてすまなかった。」


 イレネーは苦笑いをして見せる。仲間たちは皆呆れ顔で心配を返せと言わんばかりだった。


イレネー「アンゼ、踏みとどまってくれてありがとう。」


アンゼ「本当に……すみませんでした!!でも、これでよく分かったんです。あなたが心からエルダーナを大切にしていて、よりよい場所にしていこうと考えていると。俺たち王家派はあなたのことを誤解していた。誤解していたと言うのもおこがましい……。勝手にあなたのことを悪い方へ妄想してありもしないことを現実だと思い込んでいたんです。罪は償います、でもその前に、仲間にこのことを話させてください。」


レオン「事件が起こったのを知っているのは一部の人だけだ。見逃すつもりはないが、そのくらいは好きにしろ。」


ヘレーナ「優しいとこあるじゃん、隊長様。」


レオン「お前には後で別途話がある。舐めたマネしやがって。」


ヘレーナ「あれ、なんのことだろう。」


 ヘレーナはおどけて見せるが、レオン以外は何の話か読めていなかった。すぐに話しは戻り、久しぶりに仲間が集まったうえに、わだかまりも消えて穏やかな空気が流れていた。


セオドア「やっぱりいいな、皆揃うのは。久しぶりで嬉しいよ。マユキも、来てくれてありがとう。」


マユキ「私も、今は来て良かったって思ってるわ。でも、もう戻らないと。アカツキに任せっきりだから。また来るわ、今度は美味しい物も持ってくるから。あなた達も、たまにはこっちにも帰ってきなさいよ。」


ヘレーナ「うん!とりあえず陣書くの大変だと思うから送ってくるね!」


レオン「てめぇ、さっさと帰ってこいよ?」


 ヘレーナは笑いながらマユキに触れてそのまま姿を消した。一瞬静かになった部屋の中でレオンの舌打ちの音が鳴り響く。


セオドア「ヘレーナ、何かしたのか?」


レオン「いや、本人の前で言うことじゃねぇ。全部が嘘ってわけでも無さそうだしな。」


セオドア「ま、いっか。それよりアンゼの処遇はどうするんだ?どちらにせよ罰は受けてもらうんだろ?」


イレネー「エルダーナの法律的には殺人未遂になるからそこそこ重い罰になるんだけど、情状酌量の余地ありってことと、特別処置として慈善活動に取り組むこと。内容はレオンに任せる。」


レオン「ならお前が崩した資材を街の東側に運んでおけ。で、その後はそこのボスに従って働いてくれ。3日のタダ働き、それが罰だ。今すぐ解放するから、そのお仲間とやらに話してこい。労働は明日からでいい。」


アンゼ「ありがとうございます!!きっと皆簡単には意見を変えてくれないと思うけど、それでも少しずつ、話してみます。」


セオドア「じゃあ、俺は途中まで送っていくよ。二人は少し休んで。特にイレネーは。」


イレネー「あぁ、少しお言葉に甘えさせてもらおうかな。なんだか……、気分がいいんだ。ここ最近で一番な。」


セオドア「そっか、そりゃそうだよな。じゃ、また後で。」


 セオドアとアンゼが部屋を後にし、残ったのはレオンとイレネーだけになった。レオンは大きなため息を一度ついたあとイレネーを睨みながら言う。


レオン「ほんっとに、バカみてぇにマユキが好きなんだなお前。」


イレネー「そうなんだろうな。……どうしても愛おしいんだ。だからこそ、また大きな罪を背負ったと思っている。」


レオン「互いに和解したならそれでいいじゃねぇか。でも、そういうものなんだな。」


イレネー「お前は違うのか?」


レオン「分かんねぇよ。こんな気持ちで人と話すことなんて無かったんだ。ある意味で後悔してるな、過去にたぶらかしてたこと。」


イレネー「あぁ、そうだったな。でも大切なのは今だろう。どちらにせよ、ヘレーナにその気は全く無いだろうしな。」


レオン「……、ぐうの音も出ないな。だが俺はあいつに言わないといけないことがある。そういうことじゃなくてな。」


イレネー「ヘレーナなら戻ってくるよ。きっとすぐに。」


レオン「待ってるさ、こっちにはやることはまだまだ山積みだしな。何にせよ、俺には先に進む勇気なんてない。お前は休んでろよ。自分じゃ気が付いてないだろうが、色々と限界だったんだ。この部屋から出たら俺が殺すからな。」


イレネー「分かった。じゃあ、後のこと頼んでもいいか?やるべきことはリストアップしておくから、紙とペンだけくれ。」


レオン「おう。ついでに昼飯作ってくるから、大人しくしてろよ。」


 レオンがイレネーの部屋から出る。またカスレが食べたいと思いながら食料庫を漁りそれなりの材料を集めた。料理台の上で芋の皮を剥き、トマトと豆と共に煮込んでいく。まだ牧畜は進んでいないため、肉は入らない。後ろでアブニールに文字の読み書きをアルベルトが教えている声を聴きながら、鍋をかき混ぜていた。料理もこの復興を始めてから随分するようになった。料理において炎の精霊の力はかなり役に立つ。片手で鍋を混ぜつつ、もう片手で炎を繰りパンを焼く。精霊も、こんな程度のことに力を使われるのは屈辱的だろうと思うと笑いが込み上げてくる。料理が完成すると、白い皿に盛り付けて2階のイレネーの部屋へ運んだ。


レオン「出来たぞ、そっちは?」


イレネー「こっちも。確実にやるべきことはこれだけだ。あとは見回りと、作業の進んでいない所の確認。そこに人員も回していくだけだ。」


レオン「ヘイヘイ。やってること副長時代と何ら変わらねぇな。じゃ、後は任せろ。食い終わったら適当に置いといてくれ、部屋からは出なくていいから。」


イレネー「分かったって。あ、一つ頼んでもいいか?」


レオン「なんだよ。」


イレネー「城の書斎に読みかけの本があるんだが、それだけ持ってきてくれないか?」


レオン「分かった、アルベルトに頼んどくわ。なんの本だ?」


イレネー「最近越してきた子が書いた物語なんだが、読んだら感想をくれと言われていてな。」


レオン「そうか、そりゃ大変だな。」


 その後レオンはアルベルトとアブニールと共に下で食事をした。イレネーには確実な休息が必要だ。だからこそ、ずっと自分が傍に居続けるのも違うだろうと考えた。その後、イレネーから受け取ったメモをみながらやるべきことを進めていった。イレネーの不在を人々は何かあったのかと尋ねてきたが、ただ休みだと伝えた。何があったかなど知る必要はない。


 それからしばらく街で事件が起こったりすることもなく、平和が続いていた。イレネーも心身ともに回復して、また街を出歩き、人々の話を聞いている。アンゼもきちんと行動を起こしてくれたらしく、イレネーに対する悪い噂なども明らかに減った。今イレネーの仕事はレオンが引き継いで行っており、一日の仕事を終える頃には日が暮れ、また家に帰ろうとした頃にヘレーナの気配を感じた。家に戻るとやはりヘレーナがいる。神の国で育てられた大量の食材を持ち帰って。


セオドア「早かったな。マユキは?」


ヘレーナ「ずっと楽しそうだったよ。ここ最近で一番。だからこの通り。お肉もお魚も食べられるよ。」


アブニール「やった!やった!」


レオン「おい、ヘレーナ。帰ってくるとはいい度胸してんな。ちょっと来い。」


ヘレーナ「あっ……、浮かれて忘れてた……。」


 ヘレーナの腕を引っ張って外に連れ出した。誰もいない場所を探して二人だけで話をしたかった。壊れた城の1室に辿り着き、ヘレーナを問い詰める。


レオン「なんで嘘ついたんだ。お前、イレネーを治せただろ。」


ヘレーナ「私の魔法に抵抗があったのは本当だよ。まあ越えられたけど。でも、死ななそうだったしそれよりも根本的な問題を解決するべきだと思ったからそうした。」


レオン「ならそう言えよ。」


ヘレーナ「だめだよ、二人の問題だから。レオンはイレネーのこと、一番よく知ってるでしょ?私も、この中なら一番マユキのこと知ってる。それに、イレネーは本当に深く傷ついていたの。護ると誓っておきながら、自分から別れ切り出したのはイレネーだもん。勝手過ぎると言えばそれまでだけど、そこに至るまで凄く苦しかったと思うよ。しかもその後はずっと良き長として振る舞ってきた。それなのに自分を殺そうとしてくる街の人がいたらもう限界だって。自分では気が付いてなさそうだけど、深層で生きたくない、そう思っていたのは本当だよ。でも、それはレオンも分かってたんじゃない?だからわざわざ私一人を呼び出してきたんでしょ?」


レオン「……、そうなんだろうな。聞いても別に何にもならないのに、わざわざ……。よく分かんねぇよ。お前は治療をしなかった訳じゃない、最終的な治癒をマユキに任せただけだ。君は……、強くなったんだな。」


ヘレーナ「強くなったのか、冷酷になっちゃったのか。昔の私なら、絶対にやらなかったと思うよ。」


レオン「だろうな。どんな気持ちだ。」


ヘレーナ「何も思わないよ。本当に、何も。だから選択出来た。」


 そう言った彼女はとても遠い存在になったように感じた。兄は神になり、その妹は大きな力を持ったからこその孤独があるのだろう。


レオン「お前は最善の選択をしたんだろ?なら……、俺から言えることなんて何もない。ただ、お前はまず一人の人間なんだ。そんな力があるからって、お前に責任はないんだからな。」


ヘレーナ「うん。でも、分かっちゃうから。その人のことを知って、苦しんでることを分かって、その人をどうしたら助けてあげられるんだろう……ああ、この方法ならって。なんか、作業みたいになっちゃったね。」


レオン「なんだ、やっぱり寂しいんじゃねぇか。」


ヘレーナ「分かんない。でも、そうなのかもしれない。教えてくれて、ありがとう。」


 ヘレーナは少し笑ってじゃあとその場を離れた。これでいい。そもそもこれに気が付けたのは相手がイレネーだったからだ。レオンは自分の気持ちを伝えないまま天井を見上げた。ここは、またエルダーナの復興序盤にヘレーナと二人で話した場所だった。力を持つ者の孤独はよく分かる。だからこそ、ヘレーナを一人にしてはいけないと思った。


 家に戻り、アブニールを寝かせているセオドアと話をした。


セオドア「そっか……。本当に、俺たちが護らなくちゃいけなかったヘレーナはいつの間にか、一人で何もかも選択できる位強くなったんだな。」


レオン「あぁ、だからこその孤独だろう。今ヘレーナのことを一番良く知ってるのはお前だろ?一番気を遣わずに接せるのもお前だ。傍にいてやってくれ。」


セオドア「それでいいのか?レオンは。」


レオン「何がだよ。……俺も、最善を選ぶだけだ。」


セオドア「そっか。実は、マユキと二人で世界を周った時にヘレーナの好きそうな場所を見つけたんだ。そこに誘ってみるよ。エルダーナも、こんなに綺麗になったんだ。また自由に皆で旅ができたらいいな。誰かのためでも、世界のためでもなくて、ただ自分のためにさ。」


レオン「楽しそうだな。また、新しい夢ができた。ヘレーナのこと頼むぞ。」


 レオンは席を立ちセオドアの肩をたたいて二階へ上がろうとした。


セオドア「レオンは!?」


レオン「イレネーのとこ。」


 聞きたかった質問はそうではないのだろうが、適当に返事をしてイレネーの部屋をノックする。返事が帰ってくる前に扉を開けた。イレネーは、前に渡した本を読んでいた。


イレネー「どうかしたか?」


レオン「今後のエルダーナの運営方法について、きちんと話しておくべきだと思ってな。」


イレネー「それは、是非話したい。今の現状、お前はどう思う?」


レオン「今のエルダーナは、お前がいないと立ち行かない。だけど、それじゃあお前が死んだら一貫の終わりだ。だからこそやっぱり前に少し話してた、民からの代表を新しく出すべきだろう。復興まではお前のままでいいとしても、きちんと国の運営をしていくなら、適任はお前じゃない。」


イレネー「その通りだと思う。街に凄くこの国を愛していて、街のリーダー格の人がいるんだ。各区画で、私から行動を起こさなくても、そういう人が目立つようになった。自主制で各役割に応じたリーダーを作りたい。」


レオン「自薦他薦は問わなくていいんじゃないか?自薦だけだと選ぶ数も減るだろ。」


イレネー「確かに、そこは自由にしよう。なりたい人で、責任のある人、あとは人望だな。エルダーナはここからだ、まずはその一歩目。とにかく行動することの方が大切だろう。」


レオン「必要な人員はなんだ。リーダーをそれぞれ挙げるとして、その議長になる者も必要だろう。全体の長と、環境整備と、外交と……あとなんだ。経済もきちんとしないとな。」


イレネー「農業や畜産においてもこれから必要になるだろうな。後は、まだ外交が弱いはずだから国防も必要だろう。あとは法律か。」


レオン「全部きちんとした知識が必要だな。それなりに移民の国になりつつあるし、まあそれぞれの知識があるやつ位いるだろ。国防か……、騎士団復活させるか?」


イレネー「それは我々のエゴじゃないか?新しいリーダーに任せるさ。」


レオン「でももし騎士団が復活するってなったらどうする?」


 イレネーは少し考えたが、結論はすぐに出たようだ。


イレネー「どうする……、か。どうもしないかもしれないな。元は騎士だが、俺は解任されている。それにせっかく新しい時代になろうとしているのに、いつまでも旧時代の者が先頭にいてはよくないだろう。というのが俺の意見だ。お前は?」


レオン「昔に戻りたい気持ちはある。だけど、思い出は彩られ過ぎてそれは二度と手に入らないものだから、新しい時代に任せたい……ってとこかな。」


イレネー「そうか、同じ意見だな。あの日々は戻らない。でも、皆また新たな幸せを見つけていけたらいいんだ。でもまあ新体制になってからも、少しの間は見守ろうと思っている。アブニールのこともあるしな。」


レオン「やるなら早いほうがいい。明日にでもおふれを出そう。それで、早く自由になろうぜ。セオドアが、なんかまた面白そうな場所を見つけたらしい。全部終わらして、自由に旅するのも悪くないだろ?今度はちゃんと、帰る場所もあるんだからさ。」


イレネー「良いな、とても。どうせならもっと遠い場所を目指したい。まだ誰も見たことのない場所……。」


レオン「神の世界まで見ちゃってるのに、そんな場所あるのかね。……探しに行こうぜ。」


 イレネーはそうだなと言ってここ最近で一番の笑顔を見せた。皆、やはり根は旅人らしい。じゃあそういう方針で、と言ってレオンはまた部屋を出た。やらなければならないことを確実に遂行し、全てが終われば自由。それを目指すことをレオンは決めた。

次回でエルダーナ復興は最終回になると思います!

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