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華言葉の呪い -Freya-  作者: 衣吹
華言葉のある日
21/24

エルダーナ復興大作戦7

こちらの更新が月1くらいのペースを目指しているので、今どうなっているっけって作者も思います。多分一番良くないですね。

 マユキと共にアブニールの家族のもとへと旅をしていた。アブニールはいるが、セオドアやヘレーナのいないこの旅は新鮮だ。急ぐわけでもなく、のんびり進むわけでもなく、目的地に向かって歩いていた。


イレネー「もうすぐ着くはずだ。隣国だが、それでもエルダーナの近くらしい。」


マユキ「そう。なら一気に進んでしまいましょう。アブニールも、早く会いたいでしょう。」

そうマユキが言って、イレネーの抱くアブニールの額を撫でる。すやすやと眠っていたアブニールはもぞもぞと動いたが目は覚まさなかった。


イレネー「なんだか……複雑な気持ちだ。」


マユキ「どうして?」


イレネー「家族の方が、この子を王にしたいと言ってくれたから、それだけで私達はこの子に王という重荷を背負わせるわけにはいかない。だが人々は遠くないうちに王を必要とする。今は子供でも、いずれは……。」


マユキ「もし、この子が王にならないと言ったらどうするの?」


イレネー「きっと……、私が王になるべきなのだろう。レオンは絶対に拒否するだろうからな。」


マユキ「国王は、王である必要はないのよ?私のかつての国は、国民の中から代表を決めていたの。沢山の人が、この人に国を任せたいという人を選ぶ。そういうやり方だってあるわ。だから、自分がやらなければならないって思いつめないで。」


イレネー「国民の代表か……。それは新しい考えだ。帰ったら話してみよう。」


マユキ「それこそ、私の国は国王と代表は別だったからね。」


イレネー「それはそれで派閥争いが起きそうだが、それでもうまくいっていたのだろう。」


 新たな知見を得て、イレネーは少し気が楽になった。しばらく歩いて行くととても広い草原が現れた。そしてその先には丘があり、その上に小さな家がある。心地の良い空気が、気分も明るくした。あれがきっとヨハンネスの言っていたアブニールの家だろう。二人はその家に向かって歩き始めた。


 家に到着すると、その近くで畑仕事をしている老婦がいた。その女性に声を掛ける。


イレネー「すみません……。えっと、この子に見覚えはありませんか?少し前に、エルダーナで保護したのですが……。」


 老婦はアブニールの顔とイレネーの顔を交互に見比べた。


老婦「この子……、フェンディかい?一緒にいたリーファはどうしたんだい!?」


イレネー「この子の母親らしき方は、エルダーナの城の地下で亡くなっていました。獣からこの子を護るために、自らが傷を負ったのです。」


老婦「そんなわけないだろう!?だって、私にはリーファの記憶がこんなにも鮮明にあるんだよ!?リーファは死んでなんかいないんだよ!」


マユキ「残念ですが、リーファさんはもう……。世界は変わったのです。亡くなった方の記憶を失うことは、もうありません。だからどうか、彼女のことを忘れないであげてください。」


老婦「信じられないよ……。それにあんた、エルダーナ騎士団の副長じゃないか。あんたがしっかりしていれば、あの国は滅びたりしなかったんだ!!」


マユキ「ちょっと、あなたねぇ!!」


 イレネーはマユキを制止した。マユキもその想いを知り、身を引いた。


イレネー「申し訳ありません。私の実力不足に寄るものです。エルダーナを守り切れず、本当に申し訳ありませんでした。」


 そう言って頭を下げるイレネーはとても苦しそうだった。自分が弱かったせいでエルダーナが滅んだことなど、自分が一番痛いほど分かっている。だからこそ、あの場所を取り戻したいのだ。それでも、目の前にもエルダーナを失った悲しみを抱える人がいるならば、その気持ちに寄り添うべきだろう。


老婦「顔を上げておくれ……。少し言い過ぎたようだ。エルダーナは一晩で村も街も全て焼き尽くされたと聞いている。あんた一人で、どうにかなる問題じゃあなかった。そんなの、皆分かっていることさ。……、取り乱して悪かったね。その子の事もある、中にお入りなさい。」


 老婦は家の中へ案内してくれた。そしてかつてアブニールがそこで眠っていたであろう赤子用の小さなゆりかごが置かれている。老婦はイレネーからアブニールを取り上げると、そのゆりかごへと降ろす。少しその籠を揺らしながら、椅子に座った。


老婦「それで……、この子をどうするつもりだい。」


イレネー「この子は、エルダーナ王家の血を引いている、それは間違いありませんね。」


老婦「そうだよ、この子の母親がエルダーナ王の娘だ。だから、リーファが王女だったんだ。だけど、王はその存在を隠していた。だからここで静かに暮らしていたんだ。でもそれで良かったんだよ。エルダーナの崩壊から免れたんだ。そして、エルダーナが復興すると聞いて、リーファはこの子と共にこの家から飛び出していったんだ。」


マユキ「父親は……?」


老婦「父親は、事故で死んだらしい。一時期彼の記憶を失くしていた。それこそ遺体はないからきっとどこかで華になっていたんだろう。その場にいたわけじゃないんでね。」


イレネー「ご冥福をお祈りいたします。となると、この子の肉親はあなただけになりますが、あなたはどうしたいですか。」


老婦「私は……、リーファとその子がしたいようにすればいい。だけど、その子を王として祀り上げるのは許さない。それだけさ。この子が望むなら王にでもなんにでもなればいい。この子が自由を望むならそうすればいい。エルダーナの血筋なんて、知ったこっちゃないね。」


イレネー「リーファ殿は、危険を冒してでもこの子をエルダーナに連れてきてくれた。今はそのことに感謝し、私はこの子を連れ帰ることにします。そしていつか、この子に全てを打ち明け、自由な選択をしてもらいましょう。だからこそ、それまで王家の人間であることは伏せておきます。皆にもそう伝えます。」


老婦「好きにしな……。もう用は済んだかい、ならとっとと帰っておくれ。」


イレネー「押しかけてしまい、申し訳ありませんでした。それでは、失礼します。」


 イレネーがアブニールを抱き上げ、家を後にした。イレネーは思いつめたような表情をしていた。


マユキ「あなたは、それでいいの?国の代表という話をしたけれど、このままいけばあなたがそうなると思うわ。あなたは、悩んでいるの。国王になるような責任を負う覚悟もなければ、その役目をこの子に押し付けるようなことも苦しい。いいえ、この子に押し付けてしまえば、あなたは楽になれるのにね。」


イレネー「君の言う通りだ。こんなことを考えてしまう自分が憎い。だが、誰かがやらなくてはならないんだ。その時は、私が全てを背負おう。」


マユキ「そう……。それがあなたの望みなら、私は構わないわ。でもその時は……。ごめんなさい。なんでもないわ。」


イレネー「君の言いたい事も分かる。神の国にマユキは必要だ。……、ならばいつまでも私はあなたを縛っていてはいけない。」


 イレネーは顔を背けて、立ち止まっていた。本心ではないことくらい誰の目が見ても明らかだった。だがそれでも、イレネーのいう事が間違っているわけでもない。


イレネー「私達は……、ここまでにした方がいいのかもしれない。本当にもう二度と私は君に顔向けができない。もう二度と誰かを愛することはないだろう。君は、自由だ……。」


 マユキは何も言わずにただ静かに涙を流した。そして、それ以降二人は何も話さずに帰路に着いていた。


 やがて復興した街並みに辿り着くと仕事をしていた人々が労いの言葉を掛けながら迎えてくれた。二人は気持ちを切り替える事など出来ず、暗い顔をしていた。その様子を即座に察したヘレーナはマユキの腕を引っ張り、裏路地の誰もいない場所に引き込んだ。


ヘレーナ「マユキ、何があったの?」


マユキ「何も……。これで良かったのよ。」


ヘレーナ「何があったか聞いてるの。イレネーとなんかあった?」


マユキ「何でもないの。彼は何も悪くない……。だからこそ、凄く辛いの。私は神の国へ帰るわ。ヘレーナは、彼を支えてあげて。」


ヘレーナ「待ってマユキ!!」


 マユキは苦しそうながらも笑顔を向けて、神の国へと帰ってしまった。ヘレーナもすぐその後を追って神の国へ飛ぶ。


 イレネーは城へ戻る。そこにはレオンとセオドアがいた。


レオン「遅かった、な……。おい、大丈夫か?」


セオドア「イレネー?」


 声を掛けられるも、応える気力はなかった。アブニールを預け、静かな場所を探した。だがその足は真っ直ぐかつての自分の部屋へ向かっていた。部屋はまだ残っていたが、城は未だに瓦礫の山だ。ここもいつ崩れるか分からない。それでも、一人になれる場所を求めていた。壁に寄り掛かって座り込んだ。誰にも会いたくなかった。こんなにも望んでいた故郷の復興で、これほど苦しむことになるとは思っていなかった。いや違う。目を背けていただけだ。先導者の不在は必ず直面する問題だった。その結果、俺は故郷を選んだ。それだけだ。故郷を愛している、だがそれと同じだけマユキも愛している。そこに優劣などつけられない。だが選ばなければならなかった。苦しい、胸が痛い、呼吸が乱れる、涙が溢れて嗚咽が漏れる。誰かに縋りたい、こんなにちっぽけな俺を、誰かに助けて欲しい。こんなに乱れるのは、いつぶりだろうか。でもダメだ、全ては俺が望んだことだ。やりきらなければならない。すべてを成し遂げるまで甘えは許されない。立て、そして前を見ろ。自分で選んだ道だ、進みつづけなければならない。


しばらく時間を置くことで、「これこの後どうなるんだろう……あ、私が書かなきゃないのか」って思う事、物語書く人なら一回くらいあるんじゃないかなと友人と話した次第です。

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