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華言葉の呪い -Freya-  作者: 衣吹
華言葉のある日
19/24

エルダーナ復興大作戦5

 新たな年も明け、しばらくすると故郷に帰った者達がエルダーナに戻ってきた。前よりも笑顔で、故郷の土産を持ってきてくれたものもいた。


イレネー「皆、よく帰ってきてくれたな。」


男「これ、皆で食ってくれよ。俺の村の特産なんだ。」


レオン「へぇ〜、なんだこれ?」


男「ナミンってんだ。そのまま食っても美味いぞ。」


イレネー「助かるよ、ありがとう。」


男「それで?今日は何したらいいんだ?」


イレネー「あぁ、それなら少し待っていてくれ。」


 少し話していると、遠くからカイルの姿が見えた。何人かの男たちを連れている。


レオン「来たな。」


イレネー「あぁ。」


 街は瓦礫もなくとても綺麗になっていた。あとは家を建て直し、地面を整備すればこの城下町は復興できる。


カイル「待たせたな。こいつらが仲間の大工だ。」


大工の男「俺がエルダーナ城を立てたんだ。復興、任せろや。」


イレネー「頼もしい限りだ。早速お願いしたい。」


 大工たちは野太い声を上げ、早速仕事に踏み出していった。先程戻ってきた男たちにも声を掛け、順番に家を立て直し始めていく。


ヘレーナ「順調そうだね。」


 背後から声を掛けられたと驚いて振り向くとヘレーナが笑顔で立っていた。神の国の伝統衣装を着ており、普段の純白のドレスとは違う顔色だった。


イレネー「やぁ、久しぶり。服よく似合うね。」


ヘレーナ「へへ、ありがとう!」


レオン「中身が一緒だから大して変わんねぇよ。」


ヘレーナ「なによ、レオンなんてずっと同じ服じゃない。なんか汚いし、ちゃんと洗濯してる!?」


レオン「こちとらお前と違って便利な魔法なんてねぇんだよ!それにお前が来るまでここには男しかいなかったんだ、興味ねぇよ。」


ヘレーナ「なによ!私が来たらいけなかったわけ!?」


イレネー「ははは。すまないヘレーナ。マユキや、アブニールはどうだ?」


ヘレーナ「元気にしてるよ。マユキは忙しいし、アブニールも今はセオドアとお兄ちゃんのところにいる。神さまの力でアブニールの家族を探してくれてる。」


イレネー「そうだったのか。本当に手間を掛けてすまない……。」


ヘレーナ「それは言わない約束。さ、建築家さんも来たんでしょ!どんどん家建てなおさないと!」


 ヘレーナそう言って街の方へ飛び出していった。イレネーとレオンだけが城に残された。


レオン「……臭うか?」


イレネー「まぁ、少し。」


レオン「そっか……。」


イレネー「いってきなよ。このくらい俺一人で大丈夫だ。」


レオン「わりぃ。」


 やはりヘレーナが来てからは魔法のおかげで圧倒的な早さだった。男たちが一軒骨組みを建てている間にヘレーナは三軒建てている。このあたりの人は魔法に偏見がなくて良かった。イレネーは建築家のリーダーと街の構想を練りつつ、男たちと一緒に家を建てていった。あちこちでイレネーを呼ぶ声が聞こえる。一通り洗濯と水浴びを済ませたレオンもイレネーの手が足りないところに行って手を貸している。夜までに大体の構想は決まり、あとはどんどん建てて地面を綺麗にしていくだけだ。昼間賢明に働き、夜はしっかり眠る日々は充実していた。


ヘレーナ「さすがだな〜。もうこんなに綺麗になってる。」


イレネー「お疲れ様。今日はカイルさんが食事を作ってくれたんだ。温かいうちに食べてくれ。」


ヘレーナ「ありがとうイレネー。美味しい、これなんて料理?」


イレネー「カスレだ。レオンの好物だよ。はは、途端に顔色が変わるんだな。」


ヘレーナ「だって、レオンなんだもん……。」


イレネー「レオンは嫌いか?」


ヘレーナ「そんなことないよ。でも、なんか他の人と違うのよね。」


イレネー「そうか。でも、嫌われているわけではなくて良かった。あいつは、不器用なだけなんだ。」


ヘレーナ「イレネーの大事な人だもん。嫌いになんてならないよ。」


イレネー「ありがとう。私もここで食事をとっても?」


ヘレーナ「もちろん!!一人じゃ寂しかったから良かった!」


 そこにレオンもやってきて、三人で食事を取ることになった。だがレオンが来ればヘレーナとレオンは当たり前のように言い争いになる。イレネーはレオンの想いを知っている。ヘレーナにその気は無さそうだが、言い争いはほんの少し楽しそうにも見えなくもない。もう少し落ち着けばいいのにと思うが、これもレオンの一面だ。それに、レオンは7年間を失っている。イレネーも、もしかすれば7年前ならこの言い争いに交ったのかもしれない。イレネーはサッと食事を済ませ、大工と共に今後の方針を練りに行った。


ヘレーナ「カスレ……美味しいね。」


レオン「だろ。これは豪華なやつだ。俺が食ってたのは豆しか入ってなかったからな。」


ヘレーナ「そうなの?」


レオン「貧乏だったからな。カスレはご馳走だ。俺はイレネーみたいにこんな都会で育ったわけじゃねぇ。ガスト国の近くで、いつも略奪されて地面にひれ伏せてなんとか生きてた。あそこまで辺鄙な村じゃ騎士の目も届かねぇんだ。だから、俺が騎士になるんだって飛び出してきちまった。騎士になってから遠征はほとんど引き受けた。それでも、なかなか護りにいけなくて、気が付いたら精霊に全部燃やされた。俺が精霊に魂売ったハルの丘ってとこは、俺の故郷のすぐ側だったんだ……。」


ヘレーナ「そうだったんだ……。」


レオン「まぁイレネーも都会育ちとは言うが、あいつも両親が突然死んで、何もかも忘れちまって、彷徨ってた時に団長に拾われてんだ。ま、俺よりはいいもん食ってただろうけどな!……湿気た話しちまった、悪いな。」


ヘレーナ「ううん、知れて良かったよ。私、レオンのこと何も知らないし。」


レオン「……じゃあ、俺は行く。最近いっぱい魔法使ってんだろ?今日はもう寝ろよ。」


ヘレーナ「あ、ありがと……。」


 レオンが立ち去り、一人になったときすごく寂しくなった。見えなくなるまでレオンの姿をおってしまった。その日はレオンの言った通り、いつも以上に魔法を使ったためか凄く疲れていた。戦いの渦中にいたときは、こんなに疲れなかったのに。


ヘレーナ「私……弱くなっちゃったのかな。もっと、頑張らないと。」


 せっかく大魔道士になっても、魔法を怠れば使えなくなる。今よりももっと正確に魔力を操作し、もっと大きな力を起こさなければ、役立たずになってしまう。皆は優しいから、きっとそんなことは思わないだろうが、自分の問題だ。


レオン「イレネー、順調か?」


イレネー「あぁ、皆が本当によく働いてくれているから、来月には街の骨組みは完成できそうだ。まずは首都エルダーナを完成させる。そして、人が住んでくれるようになったら、少しずつ周辺の街や村も修復しよう。まずは、人を呼ばなければならない。」


レオン「どうやって人を呼ぶ?」


イレネー「エルダーナは美しい街として定評があった。まずはそれを再現する。そして、エルダーナを気に入ってくれた人に家と働き口を提供する。そこまではできそうだがその先だな。住んでくれた人々と、国を運営するだけの資金ないのが今の大きな問題だ。」


レオン「飯は出せても、金は出せねぇもんな。俺達の給料は多分大工達で底をつく。新しい資金運用を考えないとな。」


イレネー「そのとおりだ。現状、全く当てがない。どうしたものか。」 


レオン「ったく、世界取り戻しても給料は出ねぇもんな。」


イレネー「我々が勝手にやったことでもあるからな。とにかく街をもとに戻そう。そうすれば、観光に来てくれる人がいるかもしれない。」


レオン「この悲劇の街にか?」


イレネー「悲しみは消せない。この悲劇を忘れてはいけない。だが、先に進むことはできるだろう?」


レオン「それもそうだな。とりあえず、街ができたらマユキに会うのか?」


イレネー「そうしたい……。もう1ヶ月以上なんの連絡も取っていないな。彼女には、申し訳が立たない。」


レオン「男ならドンと構えておけよ。でも、相手があの巫女じゃその役は逆転か?」


イレネー「さんざん待たせたんだ。今度こそ、きちんとして見せるよ。」


レオン「そうだな。」


??「あーあー、聞こえるか?」


 二人で話していると、突然謎の言葉が響いた。耳から聞こえたのではなく、直接言葉が頭に入ってくるようだった。


イレネー「ヨハンネスか!?」


ヨハンネス「そー。ヘレーナに声掛けてもあいつ寝てて全く反応しなかったんだ。で、アブニールの家族見つかったぜ。」


レオン「へ〜、さすが神さまだな。」


ヨハンネス「おうよ。で、まぁ家族なんだが、その家族と血は繋がってなさそうだ。こいつ、エルダーナ王の隠し子の子だったんだよ。」


レオン「ややこしいな。」


ヨハンネス「まぁなんだ。隠し子だったおかげでエルダーナの外にいたから助かったんだが、そのエルダーナが復興してるって聞いて飛んで来たんだろうな。王家の血を継いでるわけだし。そしたら獣に襲われるなんて、運が悪かったんだな。それでどうする?もといた家に返すか?それともこいつを王にするか?」


イレネー「……。とりあえず、その家に私がアブニールを連れて行こう。そこで、その家族とも話してくる。アブニールはまだ赤子だ。今決定してしまうのは酷だろう。」


ヨハンネス「そっか、じゃあとりあえずセオドアにアブニールは連れて帰ってもらう。」


イレネー「ありがとう、助かるよ。」


ヨハンネス「じゃ、また!」


 ヨハンネスの声は消え、ふっと二人で笑った。


レオン「俺たち神さまと知り合いなんだな。」


イレネー「そうだな。こんなにも身近とは。それにしても、陛下が隠し子とは驚いた。」


レオン「本当に誰も知らないだろうな。ってことはこの前の女は王女かよ。」


イレネー「そういうことになる。たしかに、言われてみれば陛下の面影があったかもしれない。」


レオン「大変なことになっちまったな〜。なんで陛下の娘は皆行動力の化け物なんだ。」


イレネー「陛下の血を継いでいるのだろうな。……まずいなもう夜が開ける。」


レオン「一睡もしてねぇよ。でもいま寝たら起きれないな。」


イレネー「走りにでも行くか?」


レオン「久しぶりにありかもな。街の道路もだいぶきれいになって走りやすい。じゃ、先に十周したほうが勝ちな!!」


 レオンは上着を脱ぎ捨て飛び出していった。イレネーも同じように上着を置いてレオンを追いかけた。結局どちらが勝ったかは分からない。そんなことはどうでも良かった。たまには羽目を外すのも悪くない。翌日二人で目の下に大きな隈を作ったのは言うまでもないが、楽しかった。

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