新しい年を
久しぶりの投稿です!もう年末なんですね……!
冬は一層厳しくなり、神の国には雪が振り始めた。セオドア、ヘレーナ、マユキの三人は宿の縁側に座っていた。暖かい焚き火のそばで温かいお茶を啜りながらのんびりと過ごしている。芝生を四つん這いであちこちへと動き回るアブニールを見守りながら、新年の準備で忙しなく働く人々を見ていた。イレネーとレオンはいまだエルダーナに残り、復興を進めている。
マユキ「明後日には年明けね。私もそろそろ正月の準備しないと。」
セオドア「準備って?」
マユキ「この国では年明けのことをお正月っていうの。年神さまを自分の家に招きいれる行事なのよ。」
ヘレーナ「年神さまって?フレイヤとは違うの?」
マユキ「神さまは、沢山いるのよ。少なくともこの国ではね。八百万の神がいるから、神の国と呼ばれたのよ。フレイヤはこの星の守り神だった。たくさんの神がいるこの地に巫女を置いたのも、その存在を隠すためだったのかもね。」
セオドア「へー。そんなに神様がいたら大変そうだな。」
マユキ「それがこの国の文化だからね。年明けの前日から大晦日として、年越し蕎麦を食べたりしていたけれど、今はきちんと家を掃除して、神様に挨拶して、皆でおせち料理やお雑煮を食べるくらいね。」
ヘレーナ「おせち料理って!?お雑煮って!?美味しいの!?」
マユキ「ええ、正月のご馳走よ。それぞれ家庭のやり方があるから、アカツキが大体で皆の食材の用意をしてくれているはず。その食材にも一つ一つ意味があって、願いを込めて食べるの。私も正月は巫女として仕事をするから、あんまりアブニールのことは見てあげられないわね。」
セオドア「またレクイエになるのか?」
マユキ「いいえ、女神の巫女でなくなったとしても、私は一生巫女なのよ。こういう行事一つ一つに意味をもたせることも、全ては人のため。今年も神様が来てくれた、きちんとお参りしたから大丈夫だ。そういう意味があるのよ。」
セオドア「なるほどな……。俺達は新年にランタン飛ばしたりするよな。」
ヘレーナ「うん!私達の土地冬はずっと暗いし、凄くきれいなんだよ!」
マユキはヘレーナの話を相槌を打ちながら聞いている。
セオドア「あ、いいこと思いついた。なぁ、俺達もその料理少し分けてくれないか?」
マユキ「いいわよ。アカツキに声を掛けてみて。」
セオドア「ヘレーナ、行くぞ。そのオセチリョーリもってヨハンネスのとこへ。」
ヘレーナ「うん!!」
セオドア「あ、アブニールは連れてくから安心してくれよ!」
お茶を一気に飲み干し縁側を立った。アカツキに声をかけると丁度シュウが試作品を作っていたらしく、それを貰えることになった。アブニールはお出掛けだと嬉しそうに笑顔を見せる。ヘレーナの魔法でアールヴヘイムへの門がある広野へ飛ぶとヨハンネスが気がついたのか、すぐ空に歪みが生じた。その場所に入ると、以前のように不思議な景色は見れず、すぐにアールヴヘイムへ着いてしまった。ヨハンネスはフレイヤから継いだ杖を片手に出迎えてくれる。
ヨハンネス「おう、どうした?……、お前ら!!いったいいつ子供なんて!!!てめぇヘレーナに手ぇ出しやがったな!!」
セオドア「いや違う!!違うからヨハンネス!!」
ヘレーナ「そう違うから!!私達の子供じゃない!」
ヨハンネス「てめぇ一発殴らせろ……。いや一発じゃ気が済まねぇ!!歯ぁ食いしばれゴラァア!!」
ヨハンネスは完全に混乱している。その気迫にアブニールが泣き出した。子供の泣き声にヨハンネスは我を取り戻し、なんとか殴られる前に話を聞いてもらえた。
ヨハンネス「へぇ〜、エルダーナに。そんで?エルダーナの復興は進んだのか?」
ヘレーナ「うん、少しずつ。とりあえずアブニールのことがあるから私一人だけ戻ってきちゃったけどイレネーとレオンはまだ頑張ってるよ。」
ヨハンネス「アブニール、ここで預かるか?俺暇だし。そしたらお前らも復興手伝えるんだろ?それこそ、俺ここからこいつの家族探してやれるし。」
セオドア「なんだそれ、やっぱり地上の様子とか見えるのか?」
ヨハンネス「まぁ見えるけど見ると疲れるから見ない。」
ヘレーナ「怠惰な神様ね。本当に見つけられるならその方がいいわね……。どれくらいで見つかるの?」
ヨハンネス「う~ん……、大体の位置はエルダーナ付近だろうしまぁすぐ見つかるよ。俺神だし、フレイヤからなんとなく聞いてるし。」
セオドア「はは、大丈夫かこの星……。」
ヨハンネス「やっぱ殴るぞ。」
ヘレーナ「ほら、それよりこれ!持ってきたの!!皆で食べよ!シュウのオセチだって!」
セオドア「もうすぐ新年だろ?これ正月に食べる料理なんだって!だから年越しはここで過ごそうかなって。」
ヨハンネス「そりゃいいや!でも明日だし、これは当日までこのまま保存しとくよ。」
セオドア「あれ?年明けって明後日じゃないか?」
ヨハンネス「あぁ、歪み通ってくるのに1日かかるんだよ。だから今日はもう今年最後の日だ。」
セオドア「そうだったのか。危なかったな。」
ヨハンネス「それより腹減ってるか?城に飯あるぜ。」
セオドア「やった!!何があるんだ!?」
ヨハンネス「なんでもあるさ。あ、アブニールの飯は作んないとないな。」
ヘレーナ「材料あるなら私作るよ。」
神の城へと進む道は、どこか懐かしい思いがあった。ここでノルゲと戦い、城ではフレイヤと戦った。仲間たちと共に歩いた道に、思いが馳せる。城の門が開けられると、もう好きに見て回っていいと現在の守り神に言われた。ヘレーナは大喜びであちこち見て回っている。城は入口を入ると正面の道と左右の道、そして2階に繋がる階段が湾曲して建てられている。
ヨハンネス「厨房はあっち。ヘレーナ、この子の飯頼む。基本的に食べたいもの出せるから好きなの言えよ。」
セオドア「そうだな〜。さっきまで寒かったから何か温かいもの食べたいな!」
ヨハンネス「なら、ミートボールでも食うか!!マッシュポテトもつけてな!」
セオドア「最高じゃん!!」
3人で厨房にいくと、調理場の他に大きな箱があった。ヨハンネス曰く、自分が食べたいものを想像してその箱を開くと、材料が出てくるらしい。
ヨハンネス「どうせなら料理だしてくれりゃあいいのにな。さ、作ろうぜ!」
ヘレーナ「私の分もちゃんと作ってね!?」
肉を挽いて香草と合わせ、丸く形作ったあとはミルクで煮込む。その間に蒸かした芋を潰して、生クリームを入れると贅沢なマッシュポテトが完成する。ヘレーナは食材を小さく刻み、じっくりと煮込んでいる。アブニールは揺り籠でスヤスヤと寝息を立てていた。
料理が完成したあとは3人で食卓を囲み、久しぶりの会話を楽しんだ。ヘレーナはマユキとミコヌスへ旅行に行った話をし、セオドアは全部終わってからというもの、これから何していいのか分からないと心境を明かした。
ヘレーナ「お兄ちゃんは?神様はどう?」
ヨハンネス「特に何してるって訳じゃないからなぁ。だけど、ここにいると時間の感覚が違うんだよ。俺はあの日からまだ二日位しか経ってない気分なんだ。まぁだとしても、ここにずっと独りでいるのもなぁ。しばらくはアブニールがいるから平気だけどよ。あ、セオドア暇ならお前も残れよ。アブニールの家族見つけたらすぐお前が連れていけるようにさ。」
セオドア「そうだな。じゃあ俺もしばらくはここにいるか。」
ヘレーナ「それなら私はイレネー達をまた手伝いに行くよ。マユキを早く安心させたいし。」
ヨハンネス「あいつ、嫁放ったらかして復興してんだもんな。まぁ復興は大事だけど、マユキが可哀想っちゃ可哀想だよなぁ。」
ヘレーナ「イレネー、綺麗になったエルダーナを見せたいんだって。でもマユキがいればもっと早く復興進むと思うのよね。だってマユキまだ巫女の力も残ってるし、アカツキも連れてきちゃえばもっと早く進みそうだし!」
セオドア「でもイレネーの気持ちも分かるな〜。故郷を取り戻したいのは当たり前だ。まぁたまには帰って来いとも思うけど。」
ヘレーナ「次行ったら絶対連れて帰ってやるわ!エルダーナにはレオン残しておけば平気よ!」
セオドア「いや、きちんと成し遂げさせてやるべきだと思うな。あれだけ好きなんだったらもうちょい構ってやれよとは思うけど、マユキも忙しいだろうし、ある意味ピッタリなんだろうな。」
ヨハンネス「でもイレネーもキツイと思うぜ。今確実な味方はレオンだけだろ?昼間は忙しいから平気だけど夜は静かで寂しくなるもんな。」
セオドア「あ〜、確かに。」
ヘレーナはよくわからないという顔をしている。彼女は実は効率重視なタイプだった。他にも話題は尽きず、3人で語り合った。やがてアブニールが起きたため、ヘレーナは食事をあげに行く。
ヨハンネス「これからしばらくはお前と二人か。」
セオドア「神様に居候させてもらって悪いな。」
ヨハンネス「まぁいいさ。ずっと無音で嫌だったんだよ。話し相手がいるだけマシさ。」
セオドア「俺も、これからどうするか考えないとな……。」
三人で過ごすうちに時間は過ぎていく。地上ではもうまもなく年明けだった。エルダーナではアルベルトの手下の何人かが故郷に戻ったらしい。ここでしっかりと仕事をするうちに、年明けくらいは家族のところに戻りたいと思ったようだ。今日は早めに仕事を切り上げ、宴を開く。カイルが沢山の料理を持ってエルダーナに来てくれたのだ。料理を楽しみ、カイルと少し話しをした。
イレネー「カイルさん、建築家の知り合いがいたりしないか?」
カイル「おう、何人か心当たりがあるな。昔エルダーナで職人やってたやつもいたはずだ。」
イレネー「その人に仕事を頼みたい。復興の協力に、声を掛けてはくれないか?もちろん報酬は出す。」
カイル「そりゃいいとも。あいつも惜しがってたから、きっと協力してくれるさ。それで、報酬ってどこからでてるんだ?」
レオン「俺とイレネーの騎士時代の給料だ。有り余ってるからな。」
カイル「それもいつかはそこを尽きるだろう。」
イレネー「人手はアルベルト将軍の者たちもいる。彼らには将来家を約束しているのでね。報酬にお金を支払うのはその者たちだけのはずだ。」
カイル「そうかい。まぁ、足りなくなったら言ってくれりゃあ少しは手伝うぜ。」
イレネー「ありがとう、カイルさん。」
カイル「それじゃ、俺は店に戻る。また来年にな。」
イレネー「あぁ、よろしく。」
夜も更けて、城に居る者たちは寝静まる者も新年だと騒ぐ者もそれぞれだった。街には松明が灯る程になっている。その明かりをイレネーは城のバルコニーで眺めていた。レオンが酒の瓶とジョッキを持ってきた。
レオン「たまにはどうだ?」
イレネー「悪くないな。」
二人で盃を交わし、特にする話もなくただ二人で外を眺める。今夜は雲ひとつない空に明るい月が差していた。神の国ではマユキが巫女として新年を迎えるための舞を踊っている。舞を終えたその時が新年になった瞬間だった。あのときのように綺麗な花火が上がり、皆で新年を祝っている。人々が神殿に集まり、手を合わせて祈っていく。セオドアやヘレーナはその様子をヨハンネスに見せてもらった。皆がそれぞれの場所で新年を迎えられたことを見て安心した。シュウの作ったおせちの重箱の蓋を開ける。そこには色とりどりの美しい料理が所狭しに詰まっていた。それが三段もあるのだ。三人は興奮して食器を取り出す。シュウは、合わせて小さな酒も持たせてくれていた。セオドアとヨハンネスでその酒を飲み、ヘレーナも神の国の茶を飲んだ。おせちを食べながら、新しい年を迎えた。
今年は沢山読んで頂き、本当にありがとうございました!また来年も続けていきますので、よろしくお願いします!




