第1話、楽しい残党狩りライフ
世界魔法大戦。今から約10年前に起きた世界を巻き込んだ戦争。この戦争で生じた物理法則を無視した理解し難い現象は総じて魔法と呼ばれた。それに準じ、魔法を使うための力を魔力と呼びそれは全ての人間に等しく与えられた。
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皆さんご機嫌よう。俺の名前はミカ。男である。
俺はといえば、初めての自分だけの部屋に初めての一人暮らし。そして今日から初めての仕事である。ご機嫌悪い訳が無い。
新たな出会いへの緊張と期待で頬が紅潮する。
ああ、今ここから俺の人生は始まる!
俺は勇気を出し目の前の扉を開けた。
「今日から配属されましたミカといいます!よろしくお願いしまバン!」
違う。これは決して噛んだわけじゃない。それにいくら緊張してたとしてもこんな噛み方は有り得ないだろう。
じゃあ何が起こったのかだが、眉間を銃で撃ち抜かれていた。
……もっと有り得なかった。訳もわからず吹っ飛ばされる。
「おい!死んでたらどうするんだよ!せっかくの新人なんだぞ!」
「死んだら只の使えねえ奴だったってことだろ。」
咄嗟に頭を魔力でガードしたので大したことは無かったが少し頭が痛い。いや、すごく痛い。
「あの、これは…?」
「ああ!良かった生きてたよ!ごめんね。一種の力試しみたいなものなんだ。僕はルイズ。この政府直属部隊の副隊長だ。よろしくね。」
「…よろしくお願いします。」
僕の手を取り起こしてくれた。副隊長はいい人だ。全幅の信頼を置いてもいい。
それともあのイカレ拳銃野郎のせいで相対的にそう見えているだけか?
万に一つもアイツが隊長なんて事は無いだろうな。今のうちにガンつけておこう。
「そして今ミカ君にちょっと乱暴な挨拶をした人がこの隊の隊長のパピヨンだよ。まあ他にもメンバーはいるんだけど任務中でね。紹介は後々するよ。」
隊長だった。どうだろう。本気で謝れば許して貰えるだろうか。
「そうなんですか、どうりで人が少ないなと。」
「はは、結構忙しいからね。隊での仕事はそうそう無いんだけどその分個人で処理できる雑務が多いからね。」
「おい。いつまで世間話してるんだ。さっさと能力と己の存在価値を示せ。無能はここじゃ要らねえぞ。」
なんだ?ルイズさんとの楽しい会話を邪魔しやがって。なんで拳銃なんて用意してるんだよ。でもなるほど確かに。言っていることは正しい。ただ後でパワハラで訴えるために録音だけはしておこう。
「はい。俺の能力は“無限に魔力を生み出す“能力です。何時間でもフル稼働出来るし、常に魔力を体中に張り巡らせることも出来ます。そして、近距離戦では俺が最強です。」
緊張の空気が走る。
先輩の前でデカい啖呵切ったのだ。そりゃ緊張も走るってものだ。
「…そうだね。じゃあ能力を見る為にも1本僕と試合してみようか。」
何やら道場のような場所にきた。ルイズさんはいい先輩だが一切負ける気は無い。俺はここでやって行けるんだって所を見せつけてやる。
「よし!じゃあ始めようか。」
俺とルイズさんとの距離はだいたい4m。1歩でも届く距離だ。
速攻を決めてガードする間もなく終わらせてやる。
俺の能力“無限“は並の相手が魔力を一箇所に集中させた時のオーラを圧倒的に上回る量を体全体に纏わせることが出来る。かつ一切の消耗をしない。
つまりこれは全身全霊の渾身の一撃を何度でも打ち込めるということだ。全てが決定打に成りうる攻撃。これこそが俺の能力の真髄である。
まず俺は全力で地面を蹴り、一瞬で間合いを詰める。前傾姿勢になった体勢のまま懐に潜り、低く下げた右手で脇腹を狙う。
完全フリーのがら空きだ。俺は限界まで魔力を込める。
たとえここからガードされても体勢を崩したところを俺の魔力でもの言わせてやる。俺は勝利を確信した。
が、コケた。ドザーっと。それはもうジョークみたいに。恥ずかしい。こんなコケ方1年に1回あるかないかだろう。
「.......」
あまりの恥ずかしさからそのまま顔を伏せていたが隊長も副隊長も何も言わない。そんなに引くほどダサかったのだろうか。引くほどダサかったんだろうな。なんで見てるんだ隊長。もうやだ帰りたい。
「いや〜ちょっと緊張してたんですかねえへへ」
空気にも耐えられ無くなった俺は何食わぬ顔でノーカンって言えばワンチャン無いかな?なんて思い起き上がろうとするが、
「.......へ?」
動かない。体中に魔力を込めるも指先すら自由に動かせない。それよりなんだか身体が圧迫されるような
「ぐ、ぐぇえ」
「はは、ごめんね。これが僕の能力。一定範囲内の筋肉を自由に操作出来るんだ。触れるほど近づけばもう動けないでしょ?」
なんだそのトリッキーな能力。聞いたこともないぞ。
「今まではそのとんでもない量の魔力で何とか出来たかも知れないけど、僕達の目的は世界魔法大戦(WMW)のA級戦争犯罪人グループ通称“戦争屋“の残党掃討だ。自分の強みを把握するのはいいが驕りは良くない。」
.......何も言えない。
絶対に負けないと思っていた近距離戦で瞬殺された。
本当に恥ずかしい。こんなに恥ずかしいのはさっきぶりだ。
「おい。馬鹿みてえに落ち込んでるところ悪いが、初任務だ。行ってこい。」
地べたを泣きそうになりながら這いつくばってる俺と慰めるルイズさん。それを冷めた目で見るパピヨン隊長。
皆さんには訂正しなくちゃならないな。俺のご機嫌は最悪だ。
こうして俺の楽しい残党狩りライフが始まった。
後書きです。読んで頂きありがとうございます。
とりあえず1話書いてみました。初めてなので至らないところもあると思いますがご容赦願います。
続きは様子みてから書きます。