目には見えないけれど(5)
ゆっくりと封を閉じ、それから指でもう一度閉じられた封筒をなぞる。今朝がた書き終えた手紙を見つめて鼓動が穏やかに、それでいて強くなる。
「神様……書けたよ」
あたしの部屋のベッドに寄り掛かりながらうつらうつらしている神様に手紙を差し出す。
「ん? ああ……手紙ね」
まだ目をほとんど開けずに、寝ぼけたような声で返事をした。そしてもう一度、首が大きく揺れて寝息が聞こえる。
「え? 寝たの? 嘘でしょ? 起きてって。早く優に手紙渡してきてよ。ねえ神様ってば」
肩をがっしりと掴み、神様の肩を揺さぶるとようやく目を開けて神様は「眠いのに」と呟いた。
「この時間なら間に合うよ。大丈夫」
「よかったあ。神様、お願いします」
ホッとして一気に眠気があたしを襲う。ベッドに倒れこみ、目を閉じると意識が遠のくのを感じた。
ギッとベッドが少し軋む音が聞こえて、神様がベッドの端に腰掛けたのが分かった。
おでこに何か触れたような感覚とあたしの名前を囁く神様の声がして、そこであたしの意識は途絶えた。触れた何かと声はどちらも優しかった。
『大好きな優へ。
元気? っていうのもおかしいのかな。突然のことで本当に驚いて、ショックだったよ。
どうして優はあたしを置いていなくなっちゃったんだってずっと考えてた。でも優は一人で苦しみとか悲しみを抱えていたんだね。気づけなくてごめんね。痛かったよね。怖ったよね。
優と過ごした日々はさ、全部全部楽しくて、おもしろくて、大事で。この先もずーっとこうして笑って過ごしていくんだと思ってたし、そうしたかった。
小学校の時のこと、覚えてるかな? 優があたしを庇ってくれた時。あたしすっごく嬉しかったんだ。間違ったことはしていない。そう思っていたけれど、心のどこかで悲しいって思ってたのを、優が救ってくれた。だからあたしは今でも強くいようって思えてる。
あたしには優に何があったのか、今は想像するしか出来なくて、はっきりとしたことは分からない。けれど、優が辛かったことは分かった。あたしは優をこんな目に合わせた人を絶対に許さない。本当は憎くて仕方がない。でもあたしはその人たちみたいな悲しい人間にはならない。ここに誓うよ。大好きな優に誓う、なんて言ったらまた優にポエマーとか言われるかな。
優、今まで言ってきた言葉や約束は全部本気だったから。おばあちゃんになっても一緒に笑っていようって言ったよね。約束、守ってよ! 確かにあたしは空の下で、優は空の上だけど関係ない! お互いを想って、一緒に笑っていよう。約束だからね。それで、あたしがおばあちゃんになって優のところへ会いにいく日までちゃーんと待っててね。しばらくは会えなくなるから、あたしの気持ちをしっかり伝えておこうと思います。
優と出会えたこと、笑い合えたこと、同じ時間を過ごせたことを思うと、感謝の気持ちが溢れて止みません。
優と出会えてよかった。本当に本当にありがとう。大好きだからね。大切だからね。これからもよろしくね。
もっとたくさん伝えたいことはあるけれど、それはまた会った時にたっぷり話してあげる。その時は優の話も全部聞くからね。楽しかったことも苦しかったことも、なんでも全部話して。優は優しすぎるから、遠慮して話さないこともあるけど全部話してもらうから。
なおゆうコンビは永遠に解散しません。永久不滅! 今はゆっくり休んで、また会えた時は二人で笑い合えますように。
優の大好きな直より』
どうか。神様、どうかお願いします。
大切な優にしっかりとあたしの想いが届きますように。




