抜け駆け?
「李玖君、ちょっと一緒に来て!」
俺は水無瀬に強引に腕を掴まれ、水無瀬は一気に走り出していた。
「ちょ、ちょっと!どこに行くの!?」
俺は水無瀬に引っ張られながらも、水無瀬に必死についていく。
「あっ、兄さん!待って下さい!どこに連れて行く気ですか、水無瀬さん!?」
花凛の呼び声が遥か後方から聞こえてくるが、それでも構わず水無瀬は走り続ける。 もしかして、『花凛達の声が聞こえてないのか?』とも思ったが、後ろから水無瀬の顔がかすかに見える。
ーーーー水無瀬は唇を噛み締め、涙を流しながら何やら険しい顔つきで走っていた。
ーーーーーー。
「はぁ、はぁ、はぁ〜〜っ。こ、ここまで来れば大丈夫かな……。ごめんね、いきなり走り出したりして……。」
水無瀬はあの後、結構長い間走り続け、俺と二人膝に手を付き、肩で大きく息をしていた。
「いや、大丈夫だから気にしないで。」
「で、でも、二人で会うなんてなんか久し振りな気がするね!」
屈託のない笑顔でそう話す水無瀬と俺の間を爽やかな風が吹き抜ける。ミントのようなスカッとした香りが水無瀬の髪の毛から香る。
「あ、ミントの香り。」
俺は気が付くと、ボソリと水無瀬の髪の毛の香りを口に出していた。
「え、あ、く、臭かった!?」
「い、いや、何ていうか……俺、ミントの香り大好きだから、つい。ごめん……。」
「そうなんだ、好きなんだ、えへへ!」
どこか嬉しそうな顔をしながら、水無瀬は俺の方を振り向いてくる。
「ねぇ、李玖君は私の事、どう思ってる?」
水無瀬の思わぬド直球ストレート発言に、俺は心臓が跳ね上がるような感覚に襲われる。一気に心拍数が上がり、呼吸が荒くなる。
水無瀬の事をどう思っているか!?そりゃ、初恋の相手で大好きな人だけど、そんな事を言ったらドン引きされるんじゃないか!?
「俺は…………水無瀬とは、仲の良い友達として好きだと思ってるよ。」
俺は完全に日和っていた。以前、水無瀬は俺の事を好きと言っていたが、今も俺の事が好きかどうか分からないし、そもそもその「好き」は恋愛の「好き」ではなく、友達の「好き」なのかもしれない。
ーーーー意気地の無い俺はそう思う事によって、自分自身の考えを無理矢理肯定させようとしていた。
「……友達としての好き、か。はは、やっぱり夏休み入ってから、李玖君との距離が開いちゃったのかな……。」
水無瀬は俯き、ぽそっとそう呟くとポロポロと涙を流しながら泣き始めてしまった。
ーーーーどういう事だ!?どうするのが正解だったんだ!?




