誰も知らなくていい過去。
「何で先輩はわざわざ自らを陰キャ扱いしているんですか?」
俺の過去を知る人物が、まだ姉妹以外にいたのか……。誰も俺の過去を知らない生徒達に囲まれて、学生生活を送りたいが為に偏差値の高い学校を選択したのに。
「静かに学校生活を過ごしたかったんだよ。いい加減ヤンチャするのも飽きたしね。だから陰キャとして学生生活を送っていたんだ。」
中三までは金髪にピアスで学校に行き、よく先生達や他の生徒達と喧嘩していた。だけど、姉や妹から説得された事もあり、不良生活とはおさらばする事にしたのだ。
「今の城ヶ崎先輩の方が好きですけど、昔の先輩も好きでしたよ! あの時の先輩、女子生徒から人気が凄いありましたから!」
そうだったのか……だとしたら、凄まじく惜しい事をした気分だな。
「ちょっと待って下さい。兄さんの過去はそれ以上は話さないでいただけますか?」
宮代さんの思い出話を遮る様に、花凛がそれまで黙っていた口を開く。
「何故ですか。城ヶ崎先輩から止められたならまだしも、花凛さんに止められる意味が分かりません。」
相変わらず辛口な宮代さんは眉一つ動かす事なく、花凛に詰め寄る。
「あ、あの頃の苦い思い出を、兄さんは封印したいんです! ですから、宮代さんが話す事によって、兄さんがまた過去の自分を思い出してしまうんです!」
「特に苦い思い出という訳でもない気がしますけど。」
ちょっと待ってくれ、二人共。ここは大型ショッピングモール。その中で大声で喧嘩……迷惑でしかない。
「なぁ、ちょっと場所変えよう?人も増えてきたしさ。」
俺達の周りには何事かと集まってきた野次馬の姿があった。結構な人数になりつつある為、警備員を呼ばれる恐れもある。
俺は二人の腕を掴み、引っ張ってショッピングモールから外に慌てて駆け出していた。
「二人共、熱くなると周りが見えなさすぎだな。気を付けないと警備員を呼ばれていたぞ。」
『ごめんなさい……。』
宮代さんと花凛の二人は、素直に頭を下げてくる。まぁ、俺も悪いわけなんだが……。
この場は俺も二人に謝り、お開きになろうとしていたまさにその時だった。
「李玖……君?」
「李玖……?」
聞き覚えのあるその声に振り向くと、そこには水無瀬と雪菜の姿があった。
「な、二人共…………何で……?」




