宮代さんは。
「ちょっと待てよ!何だよその『宮代さんに接近禁止命令』ってのは! 夏休みだから関わる機会は確かに少ないかも知れないけど、出会っちゃったら会話するしかないだろ……。」
花凛の要求、もとい禁止命令は到底聞き入れられるものではない。
「出会ってしまったら仕方ありませんが、兄さんから接近するのを禁止すると言う事です。これ以上のリスクは冒せません。むしろ、今回の行動をリスクヘッジとし、恋敵を減らすのが得策です。」
花凛の奴、俺の青春謳歌の邪魔ばかりして来るつもりだな。まぁ、宮代さんにはそんな気は無いだろうし、未だに俺は初恋相手の水無瀬が好きなままだし。
「分かったよ。俺から故意に近付いたりはしないようにする。だけど、相手から話し掛けて来て無視するのは失礼だから、返事はするぞ?」
「それは分かっています。兄さんの印象が悪くなるのは一番私が嫌な事ですので……。だからといってモテるのは嫌ですし…………ジレンマです……。」
「話はまとまったみたいだね。じゃあ私は買い物に行くから帰るよ。またね、李玖!」
雪菜はそう言うとリビングルームから出て行った。
しかし、俺は何処かで宮代さんと出会ったりしていたのか?全く憶えていないんだが……などと頭を悩ませていたその時だった。
ーーーーダダダダダダッ!!
凄まじい駆け足と共に、雪菜が凄まじい勢いでリビングルームに転がり込んで来る。
「ど、どうした雪菜!? 買い物に行ったんじゃなかったのか!?」
俺の問いかけに、雪菜は息切れを起こしながらこう切り出した。
「来てる……来てるんだよ……。」
「来てるって、誰が?」
「噂の宮代さんだよ……。この家の近くにいたんだよ……。 まだここが見つかってはいないみたいだけど、スマホを片手に一軒一軒表札見てたから……多分、この家を探してる。」
いや、何それ……凄く怖い。 マジかよ、宮代さんってそういう感じの人だったのか……。しかし、城ヶ崎なんて苗字はこの辺りじゃ珍しいから、直ぐにバレるんじゃ……。
ーーーーピンポーン、ピンポーン!
「き、来た……………!宮代さんが、来た!」
まるでホラー映画のワンシーンの様に凍り付く俺達。リビングルームから玄関までは距離があるのに、音を立てないように息を殺しながらも、ゆっくりと玄関に近付いて覗き穴から外を見てみる。
「宮代さん!?」
俺は実際に目の前に宮代さんがいた事による驚きと恐怖から、大声で宮代さんの名前を叫んでしまっていた。
『城ヶ崎先輩ですか!?良かったです、あの、城ヶ崎先輩の手帳を拾いまして……お届けに上がりました!』
玄関のドアの向こう側から、宮代さんの声が聞こえてくる。ん、手帳……?
俺はズボンのポケットを探すが手帳が見当たらない。あの手帳はネタ帳として使っていて、これからの新規ビジネス等のアイディア等が思い浮かんだ時に、ササッと書けるように、いつも肌身離さずに持ち歩いていたというのに……。
「ありがとう!今玄関開けるね。」
俺は玄関を開けた。




