平穏無事。
さて、俺はというとあれから特にする事も無くなっていた為、水無瀬や花凛と他愛もない話をして一日を終えた。
色々と協力してくれた姉には、いつも言葉に出して言えない感謝の気持ちを、改めて伝えた。
水無瀬も家に帰り、霧島も恐らくはもう学校以外で関わってくる事は無いだろう。
ーーーー学校にいられればの話だが。
貴重な夏休みの時間を奪っていき、尚且つ水無瀬や花凛に酷い仕打ちをしていった霧島には、まだ仕返しをしてやりたい気持ちだったが、また蒸し返して彼女達が傷付くのも嫌だったので、無かった事にしようと思った。
あれから数日が経ち、俺達が平穏な日々を送っていたある日の事。
ーーーーピンポーン、ピンポーン。
何とも間抜けな電子音が家の中に響き渡る。いい加減この音からもっと別の音に変えたい。そう、例えばコンビニのフェミマとか。
「はい、お待たせしました。」
ガチャッと玄関のドアを開けると、そこには何処かで見たことがある顔の少女が立っていた。
ーーーーどこで会ったんだっけ……。
彼女は、えっと……………そうだ、確か花凛と同じクラスの『宮代愛莉』ちゃんだ。
瓶底メガネを掛けており、髪の毛はサイドを三編みにした状態で後ろにまわし、後頭部の白く大きなリボンで纏めている。
水色のパーカーに純白のスカート、黒のハイソックスに、ブランドのロゴがサイドにあしらわれている白のアンクル・ストラップパンプスを履いていた。
首にはオシャレな花柄のネックレスに、これまたハイブランドのバッグまで持っている。
ーーーーもしかして、この子はどこぞのご令嬢なのでは!?
学校とは見違えるほどにお洒落で、俺はその姿に見惚れていた。
いやいやそんな事よりも、この家に何か用なのだろうか……って、用がなきゃ来ないよな、うん。なんかテンパってるな、俺。
「えと、確か……宮代愛莉ちゃんだったよね? ごめんね、今花凛は出掛けてるんだ。よかったら中で待ってる?」
「え、あ、は、はい。や、約束もしてないのに、急にお邪魔して、申し訳ありません!」
なるほど、約束して無かったのか……。じゃあ急用の可能性が高いな……。
俺は宮代さんをリビングルームに通すと、取り敢えずソファーに座ってもらい、飲み物を渡すと、スマホから花凛に連絡を入れる。
『はい、もしもし。兄さんから電話なんて珍しいですね。どうしましたか?』
「宮代さんが今家に来ているんだ。何か相談事があるのかも知れないから、戻ってこれるか?」
『ふぇ!?み、宮代さん!? あまり関わり合いが無いんだけど……。と、取り敢えずすぐに行くね!』
俺の問いかけに花凛は何やら心底ビックリしていた様子だが、どうやら急いで来てくれる様だ。
それにしても、宮代さんは一体何の要件で来たのだろうか……今まで家に来た事は無いはずなのだが……。
ーーーー俺は少しばかり胸がざわついて不安を覚えていたのだった……。




