転落か、それとも。
「どうしますか、霧島先生。これでもまだ明智を庇いますか?」
奴等がした事は到底許せる訳じゃない。それをあろう事か明智を庇うなどと……。
「それは…………!」
「霧島先生でしたっけ。私は貴女の事は詳しく存じ上げませんが、傍目から見ても分かる程に、庇う方がおかしいのではないでしょうか。 絡まれた方、しかも女性が羽交い締めにされているというのに、貴女は寄りにもよって絡んだ方を助けるなど、言語道断!!」
姉は今まで見た事も無い剣幕でまくし立てる。霧島はと言えば、自分の置かれた状況にやっと気付き始めたらしく顔面蒼白になっていた。
「霧島先生。正直、今までの貴女の蛮行は看過できません。 この監視カメラの映像、そしてボイスレコーダーを持っていけば全て簡単に解決出来ます。これについては僕は何ら躊躇はありません。」
俺はボイスレコーダーを手にすると、再生ボタンを押す。するとコンビニでのやり取りが鮮明に流れ始める。
「霧島先生。今何も言わずに帰るのであれば、このレコーダーを提出する事もしませんし、コンビニの防犯カメラ、並びに自宅の防犯カメラの提出も無しにしましょう。」
姉はイライラしながらも、あくまで冷静を装い霧島先生に語りかけた。
「しかし、もしも弟と妹に何かあったら容赦しないから覚えときな!! くだらない提案してないでさっさと帰れ!」
いきなりの姉の怒号は、俺も霧島も、そして部屋に籠もりきっていた花凛でさえも飛び出てくる程に迫力があった。
ーーーーもしかして、姉は元ヤンか何かなのだろうか。
俺は頭の片隅でそんな事を思いつつ、姉の怒りの声に恐れおののいた霧島が、さっさとバッグを手に取り走り去っていく様を見て笑いを必死で堪えていた。
「ありがとう、姉さん。これで幾分かは溜飲が下がったよ。」
「でも、あの先生何がしたかったのかしら……。」
さっきまでのレディース総長の様な覇気のある姉は何処へやら。今はおっとりお姉様ないつもの姿に戻っていた。
「あの先生は俺に絡んできた明智って奴とデキてるって話なんだよ。だから今回も『愛する明智君』の為に、俺に罪を擦り付けようとしたんじゃない?」
明智も霧島も俺にとってはどうでも良かった存在だが、今回の事で花凛と水無瀬に害が及んだ事。見過ごすわけにはいかなかった。




