本気。
「クソッ!な、何でパンチが当たらねぇんだ!オラッ!」
明智はブンブンと相変わらずの喧嘩パンチばかり繰り出してくる為、躱すのは容易だった。
「本来なら、前に闘った時点で自分との格差に気付くはずなのに、愚かな奴だな。」
俺はこの間も一切反撃に転じてはいない。むしろ、周りから見たら集団で攻撃されている俺の方が被害者なのだから、正当防衛として一発くらいは反撃してやりたいのだが。
ーーーーと、そんな事を考えていた時だった。
「兄さん…………!」
振り向けば、コンビニを背に花凛が不良の一人に羽交い締めにされていた。
「う〜ん、この子めちゃくちゃいい匂いすんじゃん!?お持ち帰りしちゃおうかな〜!」
花凛を羽交い締めにしているその男は、花凛の首筋をなぞる様に鼻を沿わせる。
見れば水無瀬も不良に羽交い締めにされてしまっていた。
「李玖君、私の事はいいからこの人達を倒して!」
「そうです、兄さん!こんな女の敵、ぶっ倒してやって下さい!」
ーーーー殺っちまうか、もう。
この時の俺は完全に思考回路がぶっ飛んでいたんだと思う。考える事を忘れていた俺は、気が付けば不良5人全員をコンビニ前の地面に沈めていた。
ーーーー数分後。
騒ぎを聞きつけた住民や、コンビニの店員等の通報を聴き付け、パトカーがけたたましくサイレンを鳴らしながらやってきた。
俺達は詳しく話を聞かされる事になったが、俺の狙い通りコンビニの防犯カメラは、不良達から喧嘩を仕掛けてきた様子や、花凛と水無瀬に暴力を振るったという決定的な証拠もあり、厳重注意という形で収まった。
水無瀬はそのまま自宅から迎えが来て帰って行き、俺は花凛で姉が来るのを待ち、そして姉と共に帰る事になった。
その後の明智達の事は知らないし、別に知りたくも無かった。
姉は何も言わずに俺達を迎えに来てくれ、その日は姉に礼を言い、風呂に入って寝た。俺は別に間違った事はしていないと思っている。
ーーーーあの時、花凛と水無瀬を助けなければ、二人は酷い事をされ、トラウマを抱えてしまう事になっていたかもしれない。
翌日、俺が目を覚まして一階に向かうと、何やらリビングの方が騒がしい。 俺は何事かとリビングルームのドアを開けると、そこには思いがけない人物が座っていた。
「き、霧島先生……なんでここに。」
そう、俺の目の前には俺が目の敵にしている担任の霧島先生が座っていたからだ。
「おはようございます、城ヶ崎君。昨晩の事で少しお話がしたいのだけれど。」




