抜け駆け。
俺達が水無瀬と花凛に見つかったのは、ドサクサに紛れて俺が雪菜の頭を軽く撫でた直後の事だった。
「追いかけて来て正解でした。兄さん、今雪菜さんの頭を撫でていましたよね!?」
花凛は走って俺達を見つけ、信じられないモノを見たかのように一瞬硬直した後、ギッ!と鋭い視線を俺に向けてズンズンと歩いて来た。
「あ、あぁ……まぁ……そうだな。」
無意識にとはいえ、雪菜の頭を撫でていたのは事実だ。弁解する余地も無い。これで水無瀬や花凛に引っ叩かれても文句は言えないな。
「では兄さん、私も頭ヨシヨシして下さい。」
「わ、私も頭撫でて下さい!」
花凛と水無瀬は俺を引っ叩く訳でもなく、俺の真ん前まで歩み寄り、前のめりになり頭を突き出してくる。
ーーーー一体何なんだ、この状況は!?
取り敢えず、俺はこの訳のわからない状況を打破する為に、花凛と水無瀬の頭をそれぞれゆっくりと撫でるしかなかった。
「えへへへへー!」
「く、くすぐったいけど、気持ちいいです!」
花凛も水無瀬も、それぞれが満足そうな気持ちでいる為、ここは何も言わずにスルーしとこう。
だが、この状況を快く思っていない人が一人、俺の背後にいる訳で…………。 さっきから物凄い勢いで舌打ちされてるんだよなぁ……。
「李玖、優しいのは確かに大切な事だけど、必要以上の優しさは返って傷付けるんだからな……!?」
ーーーー確かに雪菜の言う通りかも知れない。この関係はいつまでも続く訳では無く、
いつかはこの中から、若しくは他の誰かを選ぶ事になるのだろうか……。
「わかったよ、雪菜。確かに雪菜の言う通り、真剣に向き合わなきゃ失礼だよな。」
「うん、待ってるよ!……さてと、私はもう帰るよ。じゃね、李玖!」
俺が『送るよ』と言うよりも先に、雪菜はヒラヒラと手を振りながら去って行ってしまった。
「じゃ、じゃあ私も帰るね、李玖君!」
雪菜に釣られて水無瀬も去って行こうとするが、咄嗟に俺は水無瀬の手を掴んでいた。
「お、送って行くよ、水無瀬!」
俺は握った手を少し引き寄せると、水無瀬と向かい合い、彼女にそうハッキリ言っていた。
「い、いいの…………李玖君?」
水無瀬は戸惑いながらも、俺の握った手をもう片手で重ねてくる。水無瀬の顔は、公園の街灯でうっすらと照らし出されて、耳まで赤くなっている様に見えた。
「に、兄さん……!?わ、私はどうすれば良いと言うのですか!?まさか、私を置いて行くなんて事は無いですよね……!?というか、水無瀬さんは兄さんにくっつきすぎです!離れてください!」
「花凛ちゃんも一緒に付いてきてくれませんか?」
「ふぇ!?」
水無瀬の明るい笑顔は作り笑顔でも何でもなく、本心からの笑顔に見えた。




