美少女ギャルと学校一の美少女。その3
「違う?何が違うのかしら……。」
「先生は私が殴られていたら、と言いましたが、私が殴られていたら、どう変わりましたか?」
「それは…………なってみないと分からないわよ。」
霧島先生はバツが悪いのか、口籠ってしまう。
「では、先生に見てもらいたいものがあります。……これです。」
そう言うと雪菜はポケットからデコりまくりのスマホを取り出す。そしていつ撮影したのか、動画を再生し始めた。
ーーーーそこには俺達が登校する前、教室で俺と水無瀬が一緒に登校しているという話から、明智が『城ヶ崎を痛めつける』という内容、俺を罵倒、侮辱する内容の動画、そして俺と水無瀬が入ってくるまでが全て録画されていた。
「何…………これ……。」
愕然とする霧島先生に対して、冷静に対応する雪菜。
「あなたの前では優等生ぶっていましたからね、明智は。それにこの時、学校一の美少女と言われる水無瀬さんと城ヶ崎君が一緒に登校しているという話がポツポツとクラス内から聞こえていましたので、まさかの時のためにこっそりと撮影していました。それに……先生は知りませんよね、城ヶ崎君がいじめられていた事。」
雪菜はその全てを見透かしていたかの様に、動画を提出してきた。もはや、霧島先生には何も言えない様だった。
ーーーー。
「はぁーーーー、疲れた。でも雪菜のおかげだ、ありがとう!」
あれからまさか雪菜の動画が出てくるとは思っていなかった霧島先生は、すぐさま俺達を解放したのだった。
「気にしなくていいわよ。奴等がザワザワしてたから嫌な予感がしてさ。したらすげぇもん撮れちゃったし。それにさ、明智と霧島先生は実はデキてるって噂もよく聞いてたから。」
雪菜はギャル仲間のリーダー格。だから勿論そういった色恋沙汰の噂も手に入れやすい訳で、前々から怪しいと思っていたらしいのだ。
「でも、高崎さんのおかげで本当に助かりました、ありがとうございました!」
水無瀬も深々と雪菜に頭を下げてお礼を言っていた。まぁ、今回の本当の意味での被害者は水無瀬なんだろうな。 恐らくは霧島先生は水無瀬を嫌っている。だが、まさかの方向からの支援砲火に水無瀬を攻撃することが出来なくなったというところか。
霧島先生は美人の上、とても優しい事もあり、人気が高い。だが、何故か昔から水無瀬に対しての当たりがキツい。
以前も水無瀬が他の生徒同士の喧嘩に仲裁で入ったら、一方的に責められたのは水無瀬だったっけ。 だから、言葉にしなかったものの、水無瀬を庇う形で雪菜は今回の動画を撮影したのだろう。
「あの先生、何でか知らないけど水無瀬さんだけには厳しいよね。べ、別に擁護してるつもりはないけどね!?」
プイッ!とそっぽを向きながら、少し恥ずかしそうに水無瀬にそう話す。見た目とは裏腹に、結構優しいやつなんだよな。
ーーーーキーンコーンカーンコーン。
生徒指導室から教室に向かう途中、授業の就業チャイムが鳴り響く。静かだった廊下には、生徒が次々と飛び出してくる。
「あれ?兄さん……どうして……。」
俺達の目の前に立っていたのは、妹の花凛だった。俺達の教室の方向とは真逆の方から歩いて来た為、不思議がっているのだろう。
ブラコンの花凛にこの事を話したら、もしかしたら霧島先生のところに乗り込んでいくかもしれない。 若しくは、明智をボコボコにしてしまうかも……。でも言わないと、余計に怪しまれて興信所並みに調べ上げてしまう……。
「実は………………。」
俺は仕方なく今までの経緯を正直に説明した。隠したところで裏取りされてしまっては火に油を注ぐだけだ。
「なに、その先生……。マジで腹立つんですけど……!私の兄さんに何たる無礼な振る舞い! わかりました、先生の素行は私が徹底的に調べ上げます!」
あ、言おうが言わまいが結果は一緒だったか。花凛はグッと拳を振り上げるとヤル気満々にその場を後にしていった。
「今のが『例の』妹ちゃん?聞いた通りのブラコンっぷりだねぃ。」
「だから困ってるんだよ……。だから、誰でもいいから早く彼女が欲しいなって。」
俺は雪菜の言葉に大きなため息を漏らす。だが、俺に彼女が出来れば、花凛のブラコンっぷりも少しはマシになるかも知れないからな……。
「じゃあ、私が李玖の彼女になってあげるよ!」
「じ、じゃあ、私が李玖君の彼女になります!」
雪菜と水無瀬同時の、まさかの方向からのまさかの告白だった。




