宣戦布告。その2
「ですので、私は兄さんを賭けて雪菜さんと、水無瀬さん、そして姉さんに宣戦布告致します! 兄さんは誰にも渡しません!」
花凛はそう言うと、ビシッと人差し指を突き立て、雪菜と水無瀬にハッキリ宣戦布告をするのだった。
「いやいや、花凛ちゃんさ。何だかんだ言ったところで義妹に変わりは無い訳だし、私に渡しときなよ。」
雪菜は俺の元に来ると、ギュッと手を握って引き寄せてくる。そして…………。
ーーーー頬に伝わる、暖かく柔らかな感触。微かな吐息が俺の耳に伝わる。
「ゆ、雪菜…………今の……キ、キ……。」
「そそっ、キスだよキス。一応初めてなんだからね、李玖!」
雪菜は頬を赤らめながら、スッと視線をそらしてしまう。さっきの顔に伝わった暖かく柔らかな感触は、雪菜のキスだったんだ……。
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!』
唐突に水無瀬と花凛が、今にも家を破壊しそうな大声で叫びを上げてくる。耳を劈く様なその金切り声に、俺はついつい耳を塞いでしまう。
「ゆ、ゆ、雪菜さん!り、り、李玖君にキスを……!?」
「兄さんに、兄さんにキスなどと!!絶対に、絶対に許しません!」
雪菜の行動に水無瀬は取り乱し、花凛は激昂する。
「じゃ、また明日会おうね、李玖!」
雪菜はそう言うとササッと部屋から出て行ってしまう。この状況で俺を置いていくとは!
ーーーー30分後。
俺は水無瀬と花凛に挟まれたまま、まるでカタツムリの様に頭を引っ込めながら縮こまっていた。あれから二人共無言のまま俺を睨んでくる。
三十分経ったんだぞ、いい加減無言のままで無く、いっその事罵って欲しいんですが……。
正直、俺は今まで一度もモテた事が無い。だからこんな時、どんな話をしたらいいとか、こんな反応をすれば良いとか。そういったことが全く分からないまま、窮地に陥っている。
ゲームの様に選択肢が出たならば、恐らくは攻略出来るだろうが、そんな事があるはずも無く……。
「兄さん。」
それまで沈黙を貫いていた花凛が、唐突に口を開く。『兄さん』と呼ばれただけなのに、何故か背筋が凍り付く様な寒気を覚えた。
「兄さんには、今から私のキスも受け止めて頂きます。勿論いいですよね?」
花凛は口調だけではなく、眼差しも冷徹そのものだった。だが、俺の寒気は花凛だけでは収まらなかった。
「李玖君、私ともキ、キスをしてもらうから…………!」
何を張り合っているのか分からないが、水無瀬も花凛に続けて声を張り上げてくる。
ーーーーこりゃ、どうすりゃいいんだよ!!




