地獄の始まり。
「私がいない間に随分と好き勝手してくれてるみたいだけど、今はもう水無瀬さんも花凛ちゃんも私も、位置関係は同じ。 私だけ除け者なんて、絶ッ対に許さないから!あり得ない!」
皆と気まずくなり、話さなくなってから一週間は過ぎ去り、その間一切絡んでなく蚊帳の外扱いだったのが許せない、と雪菜は完全にブチ切れてしまっていた。
ギャルでヤンキーだったにも関わらず、彼女は俺と別け隔てなく接してくれていた。
そんな見た目とは裏腹に、優しい彼女がブチ切れているところを、滅多に見た事が無かった俺は、正直ビックリしていた。
「李玖、私も花凛ちゃんや水無瀬さんと勝負するって心に決めてた。だから、こんな話を聞いたからには、こっから去るつもりはねぇよ!」
雪菜は夕日を背に、俺達の行く手を阻むように仁王立ちしている。
よくあるギャルの派手派手しい格好ではなく、白のワンピースに白のサンダル、胸元にキラッと光るネックレス、ハートのイヤリング、金髪のロングヘアーはシュシュで巻かれたサイドテールに。
夏を忘れてしまうような涼し気な姿。ギャルでヤンキーなのに、格好は凄く清楚な女の子って感じでドキドキしてしまう。
「李玖、こういうカッコ好きなんだろ?李玖の為なら黒髪にもするし、言葉遣いも改める。何ならヤンキーやめてもいい。清楚系が好きなら、私が変わる! 李玖が言った事、何でもするから!えちぃ事でもいいし!」
「なっ!?…………李玖君、私は雪菜さんも入れてもらって構いません。今更負けるつもりなど、ありませんので。」
雪菜の挑発にも軽々と取ってしまう水無瀬。絶対に詐欺師に壺買わされるタイプだな。
ーーーーしかし、とんでもなくややこしい事になったな……。陰キャな俺が学校の美少女達に好かれて、デートをするとか…………もうすでにキャパオーバーなんだが。
「わ、わかった……。でも、俺はそうなると三人とデートをするって事になるのか?」
「そうなるかなー。いやー、李玖はモテモテだね!でもさ、三人とデートできるなんて滅多に無い機会だから、気楽に楽しめばいいんじゃない?」
雪菜の言葉に、少しばかり俺はホッとしたが、反面これからどうなるのか不安な面もあった。
「で、李玖。その大荷物、水無瀬と水族館デートしてきたのか?」
「う、うん……まぁ。」
「へぇーーー、あの李玖がねぇ、チッ!」
雪菜はそう言うと、舌打ちして去っていってしまった。




