李玖と水無瀬。
「どうしたんですか、いきなり!?」
バッと俺の方を振り向いてくる水無瀬。俺は今までの行動を振り返って話す。
「水無瀬は俺といつも一緒でいてくれた。俺がフラフラしてるせいで、水無瀬を傷つけた。本当にごめん。」
俺は本心からそう思っていた。本当に感謝してるし、本当に申し訳無いと思っている。
「全然構わないです!……李玖君、恋愛って、そんなに単純じゃないんですよ。悩んで苦しんで、躓いて……、それで時には別の人の優しさに触れて、気移りしそうになったり、それでもやっぱり諦めたくないって……。そういうものなんです、恋愛って……。」
水無瀬は再び水槽に手をかざすと、ゆっくりと苦しみや悩みを吐き出すように呟いた。
「水無瀬…………。」
「だから、私は分かるんです。李玖君の気持ち。私との関係、雪菜さんとの関係、花凛ちゃんとの関係……。私が決める事でも、私が無理やり繋ぎ止める事でもない。」
「…………。」
「私は、そうだな……また、いつか私の元に戻って来てくれたら、それだけで幸せなんだ。水野君から貰ったこのチケットが私達を引き合わせてくれた。それだけでも、凄い事だと思うんだ……。だから、私は待ってる。ずっと、ずっと……!」
水槽の青く、そして明るい光に照らされた水無瀬の笑顔は、笑顔なのにどこか寂しそうに俺の目には映った。
「行きましょうか、李玖君!まだまだ回る場所はたくさんありますよ!」
俺の手を引く水無瀬の手は、薄っすら汗ばんで、小刻みに震えていた。
ーーーーシロクマ。
「シロクマなのに、何か……背中が黄緑だ……。」
「本当ですね!アレだとキミドリクマさんですね!」
ふふっと笑う彼女から、フワリと甘い香水の香りが漂ってくる。
「そ、そういえば…………ごめん、言い忘れてて。水色のワンピース、似合ってる……。白い麦わら帽子も……。」
今日の水無瀬は、水色のワンピースに貝殻のネックレス、白色の麦わら帽子に白のヒールを着用していた。
バッグも小さなショルダーバックでシンプルなのに、凄く似合っていて、綺麗だった。
「………………ッ!? そ、そういうとこですよ、本当に!」
やっぱり言うのが遅かったのか、水無瀬はプイッとそっぽを向いてしまった。
「ご、ごめん………。」
「嘘ですよ、さぁ、次に行きますよ!」
俺は恐らく今日は水無瀬に振り回されるのだろう。




