心から。
「わぁ~~! 見てみて、李玖君!すごく綺麗だよ!!」
水族館を回る俺達は、クラゲミュージアムで幻想的に光り輝くクラゲを眺めていた。
紫や青、緑色等ランダムに照らし出すイルミネーションの輝きが、クラゲをきらびやかに照らし出しているのだ。
「本当だ……綺麗だな。クラゲって刺してくるイメージしか無かったから、こういう風にゆったりと泳いでいるクラゲは癒やされるな。」
「うん、とっても綺麗。前は見れなかったけど……今日は来てよかった。」
「おいおい、まだ見に来たばかりだろ?まだまだ見るところはたくさんあるぞ!」
「うん!でも、そういう意味で言ったんじゃ無いんだけどね……。」
水無瀬は何やら苦笑いをしながら、クラゲの水槽を眺めている。
今、落ち着いて考えてみると……コレは凄い事なんじゃないか?
水無瀬は学校一の美少女とも言われているくらいの美人で人気者。クラスメイトの奴だけでなく、他クラスや他学年の男子達から告白されても『生理的に無理』とか『前世からやり直してきたら?』等、隣の席から聞いている俺でも心臓を深く抉られた感じになる程に痛烈なフリ方をしている。
「水無瀬は学校で男子生徒が告白してくると、結構エゲツないフリ方をしてるけど、何で敢えてそんな事を?」
俺の問いかけに特に動じる事も無く、水無瀬はゆっくりと、優しくクラゲの水槽を撫でながら話す。
「私、今まで何度もそういう経験をしてきた。だけど、皆は私の表面しか見ていない。見た目、それだけ。誰も私の『内面』には目もくれなかった。」
「…………。」
「だから、私は敢えて冷酷にフる事で、私の悪評を広めたかった。そして、相手もきっぱり忘れられる事が、次の恋愛への第一歩になるんじゃないのかなって。」
そうか、だから『氷のいばら姫』なんてあだ名が付く様になったのか。誰も近づいて来ない様に……。
「次に行こっか!黒潮水槽が見てみたいな!」
水無瀬は俺の手を引くと、スタスタと歩き出す。俺はその後ろ姿にどこか寂しさの様なものが感じられた。
ーーーー黒潮水槽。
そこはめちゃくちゃデカイ水槽で、水槽の中にはマグロやカツオ、イワシにアジと、ありとあらゆる魚たちが悠々と泳いでいた。
「すっげぇな、見てみろよ水無瀬!」
俺は水槽にビッタリ張り付き、魚達の動きを必死に目で追っていた。
「ふふっ、李玖君。まるで小学生みたいですよ!」
ふわっと笑顔になる水無瀬に俺はついドキッとしてしまう。
「そういえば、李玖君の趣味は釣りでしたもんね!」
「ま、まぁな。って、水無瀬に話した覚えは無いぞ!?」
「何故知ってるのでしょうか?」
水無瀬はフフンと自慢げに笑いながら、俺の隣に立ち、水槽を眺める。
「水無瀬…………ごめんな、本当に。」




