策略。
「まさか、俺達は徹にハメられたのか!?」
俺の予感は的中した。水無瀬と俺宛にLIMEで『今日は腹が痛くなって、行けそうにないから二人で仲良くな!』だと。
夏場にほったらかしにされていたチャーハン食べてもピンピンしていた奴が、どうしたら腹が痛くなるのだろうか。
「水無瀬も同じ内容だな……。やはりアイツ、ハメてきやがったか……。」
普段はボケーッとしていて、何考えているのか分からない為、徹はクラスメイトからは「案山子」と呼ばれているくらいだ。そんな奴が、俺達の事に気付くなんて……変なトコで勘が鋭いんだよなぁ……。
「と、取り敢えず……水野君から貰ったチケットですし、行きませんか?前回のリベンジも兼ねて。」
水無瀬は比較的前向きな意見を俺にぶつけて来るが、俺は対照的に後ろ向きだ。ここでまた水族館デートなぞしようものなら、泥沼化していくのは必至!
俺は水族館デートを断固拒否する構えを見せた。
「水無瀬はそれでいいのか?俺は申し訳無いが反対だ。これまで何度かぶつかって来たが、今回はその比じゃない。前回、水族館に行ったのは偽の恋人同士だったから。俺は今は水無瀬の偽の恋人じゃないんだ。」
「それは李玖君が勝手に決めて勝手に突っ走って、勝手に突っぱねてるだけ!私は偽の恋人解消は認めていません!」
確かに……俺が言っているだけで、水無瀬の同意を得た訳でもないけど、でも片方の、依頼者である俺自体が偽の恋人を否定しているんだ。
ーーーー無理に続ける理由はどこにも無いのだ。
「なんで水無瀬は、そんなに偽の恋人にこだわるの……?」
「それは……李玖君と唯一繋がっていられるのが、偽の恋人だったから……。」
「今回の水族館の件は水無瀬、知ってたの?」
「うぅん、全然知らなかった。ただ、あの時水野君から『何か悩み事がありそうだね、よかったら話聞くよ』って言われて……。李玖君の親友だし、水野君は情報通だって聞いてたから、偽の恋人の事について詳しく話したいって言ったら、今日の待ち合わせに指定されて……。」
なるほど……確かに徹なら色々と知ってるからな……。俺自身が意識してない所も的確に指摘できる奴だし。
実際、徹に恋愛相談とかで女子が来る事もしばしば。だから今回もなかなか煮え切らない俺に対して、一計を案じたと言う事か。
「仕方無い……今回は徹の作戦に乗ってやるか。水無瀬、行くか?」
俺はスッと手を差し出す。この手に水無瀬が付いてきてくれるかは分からないが、このままではいけない事位は俺でも分かる。
「はい、喜んで!」
水無瀬は俺の差し出した手を握って……くるのかと思いきや、そのまま俺の腕にしがみついて来た。と同時に柔らかい感触が腕全体に伝わってくる。と、同時に水無瀬の温かい体温も。
ーーーー俺と水無瀬の水族館デートが始まった。




