ハメられた!?
俺は徹との待ち合わせ場所である、名大前水族館に到着していた。俺は万が一何かあった時でも対応出来る様に一時間は前に来ている。
「しかし、徹との待ち合わせにまで一時間前に来る必要も無かったか……。」
俺はスマホの時間を確認すると、フゥッと軽くため息をつき、近くにあった喫茶店へと入る事にした。
季節は夏。少し路上に立っているだけで、ジンワリと背中や額から汗が滲み出てくる。
「いらっしゃいませ。」
俺は喫茶店に入り、店員さんに案内され、待っている間の繋ぎとしてアイスコーヒーを注文した。
店内はアンティーク調の作りになっており、喫茶店のマスターも物静かな面持ちで、とても安心してコーヒーを飲めた。
「ついいつものクセで早く来ちまうけど、やっぱり徹と出掛けるだけで一時間前に来るのはやり過ぎたな。」
俺はこれでも時間は厳守する派だ。まぁ、たまに予想外の出来事で遅刻する事もあるが……。だからこその一時間前なのだ。
コーヒーをゆっくり飲みながら、窓から外を眺める。目の前には集合場所の「名大前水族館」が見える。
ーーーー俺はこのまま、あいつ等と分かりあえずに終わるんだろうか。
そんな事が頭の中をよぎったりしたが、今はそんな事考えていても仕方ない。
夏休みはまだまだあるし、行事もまだある。挽回のチャンスならまだあるさ……。
楽天的な考えをしつつ、ボーッと外を眺めていると、いつの間にか集合時間になってしまっていた。
「ヤベッ!!ゆっくりし過ぎた!」
俺は窓から外を眺めたが、徹の姿は無く、代わりに見た事ある人影が見えた。
「…………なんで水無瀬が……。」
俺はたまたま偶然だと自分に言い聞かせ、喫茶店の会計を済ませて、無意識に水無瀬の元に歩いて向かっていた。
「水無瀬…………奇遇、だな。」
俺は平静を装い、水無瀬に話しかけるが、明らかに声が上擦っていた。何故ならこうして面と向かって話すのが、本当に久しぶりなのだから。
「り、李玖君!?ど、どうしたの!?李玖君もこの水族館に遊びに来たの?」
俺『も』って事は、水無瀬も誰かと来たって事か……。
「水無瀬は誰と待ち合わせてるんだ?」
「わ、私は………水野君……と。べ、別に変な事はないよ!? ただ、水野君が話があるからって……。でも、水族館に集合なんて何か変だなとは思ってたんだけど…………。」
別に水無瀬が誰とどこにいようが構わない……。偽の恋人は終わらせたんだし……。
でも、なんだろう……徹の名前が出てきた途端に、胸の辺りがモヤモヤしたり、チクチクしたりするのは……。
ーーーーん、徹……?
「ちょっ、ちょっと待った!水無瀬は水野……徹に誘われたんだよな……。」
「う、うん……そうだけど……。」
「実は俺も徹から水族館に誘われたんだ……。」
「え……………?」
ーーーーーーーーもしかして俺達、ハメられた!?




