無言。
彼女を作って、夏休みをエンジョイしようと考えていた俺は、今自分の置かれている状況を客観的に考え、夏休みはインドアを決め込む事にしていた。
そんなある日、俺のスマホが突然鳴り響いた。着信の相手は徹からだった。
「もしもし、どうした?」
『実はさ、商店街の夏のくじ引きで大当たりが出てさ!水族館のチケットが二枚あるけど、一緒に行かね?』
「行くかよ。何が悲しくて野郎二人で水族館デートしなきゃならんのだ!」
『まぁまぁ、そう言うなって。せっかく当たったチケットが無駄になっちまう。李玖はそれでもいいってのか?』
「わかったよ、行くよ……。で。いつ?」
『明日朝九時、集合場所は名大前水族館だ。時間厳守、じゃ!』
まくし立てる様にそう言い放つと、徹からの電話は一方的に切れてしまった。
「あの野郎、好き勝手決めやがって……!」
俺はスマホをベッドに放り投げると、自分もベッドに体を放り投げ、寝転がった。
「いただきます。」
俺と花凛と柚葉の3人での夕食。俺と花凛の無言が続いている為、さすがに義姉の柚葉が堪らず口を開く。
「ね、ねぇ………。二人共、何があったの?あんなにも仲良かったじゃない?」
そんな義姉の言葉に耳を貸す事無く、無言で夕食の唐揚げを口に放り込んでいく花凛。
我が家の唐揚げは義姉の柚葉が作っているのだが、ニンニクを少しばかり多めに入れている為、臭いを気にする花凛は殆ど食べないのだが……。
「李玖ちゃん、一体どうしたの?」
心配で仕方が無い柚葉は、俺に助けを求めて来るが、あの時は謝りはしたものの、花凛の度重なる無視に、俺自体も半ば面倒になっていたので、構わない事にしていた。
「なんでもない。気にしないでいいよ。」
俺はチャッチャと夕飯を済ませると、自分の部屋に戻る事にした。
明日の男同士の水族館、行かなくてよくね?等と考えてみるが、徹と二人で行った事で、色々と話が出来るというのもある。
俺は早々に布団に潜り込むと、深く考える事も無く、眠りにつくのだった。
ーーーー翌日。
少し早めに目を覚ました俺は眠い目を擦りながらも、洗面所まで行き、歯を磨き、顔を洗う。
「李玖ちゃん、今日は早いのね!」
柚葉はキッチンで朝食の準備をしていた。俺は徹と二人で悲しい水族館デートがある事を告げ、用意してくれた朝食を食べると二階の自室に駆け上がる。
途中、階段で花凛とすれ違ったが、花凛は気まずそうに顔を背けて来た為、敢えて俺もそれに触れる様な事はしなかった。
ーーあの花凛でさえ、こんな調子なのだから、雪菜や水無瀬は俺とは会うことすら拒否反応を示しそうだな。
そんな事を考えつつ、俺は出かける準備をすると、早々に玄関を飛び出した。




