想いの差。
「李玖、これまた面倒くさい事になってんねー!」
「雪菜か……。そんな他人事みたいなこと言ってないで助けてくれよ……。」
「まあこればっかりは、李玖が優柔不断なのがいけないと思うんだよね……。私も水無瀬さんも花凛ちゃんも、みんなそれなりにアピってたと思うんだよね……。」
俺達を見つけて駆け付けてくれた雪菜はどこかそっけない返事を俺に向けてくる。
「花凛ちゃんは花凛ちゃんで、義理の妹だって知って喜んでたと思うし、水無瀬さんは水無瀬さんで、どさくさに紛れた状態だったと思うけど、偽の恋人になれた訳で……。」
「何が言いたいんだよ、さっきから……。」
「李玖は、人のせいにばかりしてるけど、自分自身は周りを見てきた?」
雪菜にそう言われた瞬間、全身の血が引いていくような悪寒を感じた。
恐らくこの悪寒の元は、雪菜の口調と冷たく凍りつく視線によるものだという事はすぐに分かった。
「そ、それは…………。」
「李玖は、その場であぐらをかいていればいいのかもしれない。でも周りの子達は李玖を取り合うために必死で自分の身を削っている。李玖はその気持ち分かる?」
ギャルの雪菜から発せられたとは思えない程の真っ当な意見だった。
雪菜の言う通りだった……。自分はいつも高みの見物をして、あぐらをかいてそこで見ているだけ。何かを必死で頑張っているのは、水無瀬であり、花凛であり、雪菜だった。
「その顔だと気付けたみたいだね……。ホントはこんな、李玖に嫌われるようなコト、言いたくなかったんだけど、どうしても気付いて欲しくて……。」
雪菜はどこか悲しげで、気まずそうな顔をしていた……。
「馬鹿だな、雪菜は。そんなんで嫌う訳ないだろ……。むしろ言ってくれなければ俺は今も、これからも気付けないままだった。ありがとう!」
気付けば俺は、花凛と水無瀬の間に入り、二人の前で深々と頭を下げて謝罪していた。
二人は俺のせいじゃないと言ってくれたが、雪菜の言う通り、俺はみんなから言い寄られている事に酔いしれ、有頂天になっていただけなんだ。
花凛の義理の妹という立場を利用し、水無瀬と雪菜のひたむきで純粋な心を利用した。
「水無瀬、花凛、雪菜……。俺はお前達の誰とも付き合う事はできない。そんな資格は俺には無い。」
三人にそう言い残し俺は家へと足を進めた。
ーーーーあれから一週間が過ぎた。水無瀬と雪菜からは何の連絡もないまま、花凛ともお互い気まずい為か、それほど会話をしていない。
俺は夏休みの殆どを、おそらく勉強で費やすのだろう。高校三年生の夏、それでいいじゃないか……。
そんな事を考えていたある日、俺のスマホがけたたましく鳴り響いたのだった。




