まさか。
俺が向かった先、家の近くの公園には義妹の花凛と水無瀬が向かい合う形で何かを言い争っていた。
「李玖君とは、確かに偽の恋人同士でしたが、私は本気で李玖君の事を考えています!」
「貴女がいくら兄さんの事を考えていても、私と兄さんが血の繋がりの一切無い兄妹である事、一番近しい人物である私が優先されるのは至極必然です!」
「でも、もし李玖君が花凛さんの事を妹としか見れなくなってしまっていたら、どうするんですか?」
「ぐぬぬ………!そ、それは………!」
現実で「ぐぬぬ」って言う奴初めて見たな……。まあでも、水無瀬の言う通り、花凛は妹としての枠からは出ないなぁ……。
確かに客観的に見ても、兄として見ても、花凛は可愛い。だけど、性格に難有りなんだよなぁ……。
水無瀬は水無瀬で思い込みが激しい所があるし、雪菜はギャルが抜け切らず、なんかいつもノリが軽いっていうか……。
ーーーーでも、どっちつかずな俺も、十分難有り。これを優柔不断って言うんだよな。
「おいおい、止めろ!喧嘩するな!まず、水無瀬とはまだ偽の恋人同士ってのを完全には解消してないし、花凛とだってまだしっかり話してない。」
「兄さん、もうその段階はとっくに過ぎ去っています!今、私達の間では誰が兄さんを振り向かせられるか、に移行しつつあります!もう偽の恋人等といったものは学校間での話であり、私達には一切関係がありませんし、何より…………兄さんはとても強い為、手を出さなかっただけであり、明智等という輩には負けるはずがありません。」
「で、でも……実際、明智君達に嫌がらせを……。」
「ご存知ではないでしょうが……。武術を心得ている者は、簡単に素人に手を出してはならないのです。ですから兄は、『わざと』嫌がらせを受け流していただけに過ぎません。 寧ろ、【偽の恋人】など、やる必要が無かったという事です。」
花凛の言う通りだった。俺が嫌がらせを受ける『防波堤』となる事で、明智達の嫌がらせを他の生徒から逸していた。最悪、その害が周りにも及ぶ様なら何らかの【対処】をしていたかも知れないが……。
「僭越ながら……アナタの事を少し調べさせてもらいました。アナタは随分昔から兄さんの事が好きなようですね。 でしたら、何故アナタは兄さんの事に気付けなかったのでしょうか……?」
「そ、それは……………!?」
「私は知っています。アナタは『知らなかった』んじゃない。『知っていた』上で偽の恋人になったんです! 兄さんの気持ちを知りながら!!」




