疑心暗鬼。
『李玖君……私、李玖君の事が大好き。私と付き合ってください!』
スマホの受話器越しに水無瀬からの大音量の告白が響き渡る。
「プッ、スマホ越しって……!アハハハ!」
『ちょ、ちょっと笑わないで下さい!これでも真剣なんですから!』
「ごめんごめん、で?今どこにいるの?そっちに行くから。」
『今は……実は李玖君の家の近くの公園に……。』
「わかった。そんなに離れていないから直ぐにそっちに行くよ。」
俺は通話を一旦切ると、自宅近くの公園に急いで向かった。ふと、何故か走る足が重くなるのを感じた。
ーーーー初恋の相手で偽の恋人の水無瀬、素直な気持ちをぶつけて来てくれる雪菜、重度のブラコンで義理の妹の花凛。義姉は多分、無いな……。なんて失礼な事を考えながら、俺は一体誰の事が好きなのか分からなくなっていた。
こんな薄っぺらい気持ちで水無瀬に会っていいのか……? どうしたんだ、俺は。
水無瀬の事が好きなんじゃなかったのか……初恋の相手だぞ!?
駄目だ……全然足が前に進まねぇ……。考えれば考える程に、足に重しが伸し掛った様に足取りがドンドンと重くなる。
「兄さん……何してるんですか?こんなところで……パントマイム?」
「違うわ!何が悲しくて道路でパントマイムせにゃならんのだ!」
俺は油が差されていないロボットの様に、ぎこちなく花凛の方を向く。
「兄さん……。人間を諦めるには早過ぎます!」
「どういう事だ!?違う、悩みがあって中々足が向かないだけだ!」
「もしかして、水無瀬さんですか……?」
その名前を聞いた瞬間に、胸を抉られた様にズキンッと痛んだ。こんなにも動揺したのはいつぶりだろうか……。
「今から水無瀬と家の近くの公園で会う約束をしてる。だけど色々と考えちまって、足が先に進まないんだよ……。」
「ふむ。あの公園ですか……。では私は一足先に公園に行っておりますので、兄さんはゆっくり来て下さい!では!」
そう言うなり花凛は踵を返し、公園の方へと走って行ってしまった。花凛のブラコンっぷりは日を増すごとに酷くなってきており、俺に近付く者をことごとく追い払おうと躍起になっている。
恐らくは、今回も水無瀬と俺が会うのを阻止する為に、花凛が先回りしたと考えれば合点がいく。
ーーーーだが、落ち着いて考えてみろよ?俺は天性の陰キャだ。ボッチで根暗、オタクのブサメンときてる。
そんな俺が花凛から重度のブラコンっぷりを発揮され、学校一の美少女と言われ、俺の初恋の水無瀬から好きだと言われ、しまいにはクラスの美少女ギャル、雪菜からも好きだと言われ……。
ーーーー普通に考えたら、ありえない。
まぁ、雪菜がやった事で起きた姉のLIME内容自体は、雪菜を牽制する為の文面だったとしても、妹の花凛が直接起こしている行動とLIMEの内容が一致しているのは看過できない。
俺は足取り重いまま、公園へと向かうのだった。




