気持ち。
俺は今まで物事に振り回されて自分の気持ちを蔑ろにしていた。
いや、本当は違う……。自分の気持ちを伝えるのが怖かっただけだ。誰かが傷つくのが怖いとか、そんな言い訳じゃなくて、只々自分が傷つくのが怖くて、流されていただけに過ぎない。
ーーーー自分は卑怯者だ……。
俺は水無瀬の後をひたすら追った。でも、途中で俺は人混みに紛れてしまった水無瀬の姿を……見失ってしまった。どこに行ったのか、必死で探し回ったが、どこにも見当たらなかった。
ーーーーそうだ、スマホ!
俺はすぐに水無瀬の携帯に電話を掛けるが、待てど暮らせど応答はないし、連絡も来ない。
イライラと焦りばかりが募る……。俺は最低な野郎だ。偽の恋人を頼んでおいて、必要が無くなったら関係を切る……。
しかも、それを水無瀬に一切伝える事無くだ。 逆に俺がやられていたらどうだった?
ーーきっと、激しく傷つき、下手したら誰も信じられなくなっていたかも知れない。
いや、人を信じられなくなっていただろう。
俺のせいで水無瀬が人間不信に陥るかも知れない。俺のせいで水無瀬が心を閉ざしてしまうかも知れない。
水無瀬は俺の初恋の相手で、ずっと大切に想っていた筈なのに……。
ちょっとチヤホヤされただけで、浮かれて、舞い上がって、調子に乗って……くだらない……。
ーーーー何としても水無瀬を見つけて、謝ろう。許してもらえなくて当然だろうけど、でも謝らなきゃいけない!
俺は必死に水無瀬を探したが、見つける事は出来なかった。俺の家の近くに住んでいる水無瀬の自宅に行ってみたが、まだ帰っていないとの事だった。
どこに、どこにいるんだ、水無瀬!!
そんな時、俺のスマホがけたたましく鳴り響く。
「水無瀬、水無瀬か!?大丈夫?今どこにいる!?」
スマホに掛かってきた相手は、なんと水無瀬からだった。
『ごめんなさい、私……。色々と考えてて……。思えば李玖君が誰と付き合っても、私と偽の恋人を解消しても、それは李玖君の自由ですよね……。』
声が震えている………。水無瀬を俺は激しく傷付けたんだ……。
「水無瀬は何も悪くない。俺がフラフラ流されてばかりしていたのがいけないんだ。 本当は水無瀬が初恋の相手で、今も大好きなのに、俺は優柔不断で、本当にしょうもない人間だ。」
「え…………今、何て、何て言ったの……?」
「いや、だから、水無瀬は悪くないって。フラフラしてた俺がわるいんだ、って……。」
「ち、違うよ、その後!」
俺の言葉に何か気に入らない事があったのか!?
「えぇと、水無瀬が初恋の相手で、今も大好きなのに、俺は優柔不断で、本当にしょうもない人間だって……。」
「李玖君……ズルいよ。李玖君………。大好き、大好きなのに、何でうまく行かないんだろ……。」
水無瀬は、号泣していた。




