夏休み。
我が家の玄関のドアがそろそろ限界に近づいてきた今日この頃。
不意にバンッ!と勢い良く玄関のドアが開け放たれ、誰かが入って来る。
俺と雪菜はお互いに顔を見合わせ、二階の廊下から一階の様子を伺っていた。
「李玖君、李玖君は、大丈夫ですか!?今日は体調不良で欠席と聞いて来たんですけど……!」
ハァハァと息を切らしながら、水無瀬は肩で大きく息を吸うと、二階の俺達がいる方を見やる。
「李玖君!!………ッ!? ゆ、雪菜さん!何でここに!?」
驚いた様子の水無瀬を少しも気にする事なく、雪菜は階段を降りていく。
「今日の朝、学校に行ったら李玖が居なくてさ、始業のチャイムが鳴っても来なかったから、何かあったんだって分かって、早退してきたんだ。」
雪菜は水無瀬の隣まで来ると、そう言い放つ。そして………。
「水無瀬さんは、いつ李玖がいない事気付いたの?」
そう言い、まだ息切れしながら俯く水無瀬の顔をゆっくり覗き込む。
「始業式が終わってから……ホームルームの時間に……先生から聞いて……。」
まぁ、確かに霧島先生は欠席者の事なんかは後回しにするからな。知らなくても当然と言えば当然か。
「ふーーん。じゃあ、それまで李玖の事、いるかいないか認識していなかったんだよね。そんなんで、『偽』とは言え、恋人って言えるのかな? 早退まではやり過ぎとしても、認識するくらいまでは出来たんじゃない? もっと言っちゃえば、LIMEの一通位出来たんじゃない?」
「ーーーーーーーーーーッ!?」
いつにもなく、真剣な表情の雪菜に、それまで俯いていた水無瀬は、顔を上げて俺の方を見てくる。
「私は正直、どちらの味方でもありませんが、心配ならばLIMEの十通位は出しますね。」
花凛の言葉に、水無瀬はまたしおしおと俯いてしまう。花凛のLIME十通は流石にやりすぎだが……。
水無瀬は思わぬ集中砲火に耐えきれなくなったのか、そのまま無言で去って行った。
「水無瀬さんがあの程度の覚悟でしかなかったとは……ガッカリですね。」
花凛は腕を組み、はぁ〜っと大きなため息をつき、キッチンの方へと消えていった。
雪菜はそのまま無言で俺の元に帰ってくると、俺の肩にそっと手を置き、耳元で囁いた。
「水無瀬さんを追っかけた方がいいよ。『今回の事は貸しにしとく』って伝えといて。」
それだけ言うと、雪菜はトンッと軽く背中を押してくる。
俺は雪菜に向かって軽く頷くと、水無瀬を追いかけに全速力で階段を駆け下りていた。




