美少女。
「うわ、もう登校時間になってら……。」
半ば家から飛び出す様に出てきた俺達は、もう通常の登校時間になっていた為か、他の学生達に紛れる形で学校に向かっていた。
「あ、あの……李玖君……?」
俺と一緒に登校中、水無瀬は頻りに辺りをキョロキョロしながら俺に声を掛けてきた。
「どうした?まだ体調悪いか……?それとも、俺とは別に登校した方が良かったか? ごめんな、もう少ししたらガードレールがある道に着く。そこからなら安全だから別登校すればいい。だから、もう少し辛抱してくれ。」
俺は陰キャでブサメンのオタク野郎だから、そりゃこんな美少女と歩いていたら、違和感以外のなにものでもないよな……。
水無瀬からしても、いくら体調が悪いとはいえ、俺なんかと歩いていたくないに決まっている。
ガードレール伝いに歩いて登校してくれれば安心できる。
「違うの!別にそんなつもりはないの!ただ、あの時は……その……。と、とにかく!李玖君と登校したくないなんて思ってないから!」
そう言うや否や、俺の腕をグイッと水無瀬の体に押し当ててきた。こ、これはくっつかれとるがなー!! そ、それにこの柔らかい感触はま、まさか……。
「あ、あの……水無瀬……そ、その……胸があ、当たってるんですが……。」
俺はしどろもどろになりながらも必死で水無瀬に訴えかける。もうこの時点で、登校している男子生徒達から羨望なのか嫉妬なのか解らないが、鋭い眼光で睨みつけられている。
「私はこうしていたいんですが……駄目ですか……?」
「い、いや、駄目っていうか……駄目か駄目じゃないかって言われたら、決して駄目ではないかなと思っている次第でして……。」
上目遣いでウルウルと涙ぐむ水無瀬の瞳を見ながら、俺は自分で何を言っているのか全く分からなくなっていた。
「じゃあ、このままで登校します!」
体調悪くなったり、悲しくなったり、かと思えば急に上機嫌になったり……女の子は大変だな……。いや、そもそも陰キャの俺が対処出来るキャパシティを、完全にオーバーしてしまってるんだよなぁ……。
「それにしても、さっきは何であんなにキョロキョロしてたの?」
俺は登校時に、水無瀬がキョロキョロしていたのがどうしても気になっていたのだ。俺と一緒に登校したくないなら、わざわざ腕を組んでまで登校せずにガードレール伝いに歩いて登校出来るし、嫌いなら尚の事。
「そ、それは…………。」
水無瀬は何やら言いにくそうに俯いている。何か理由があるのは確かだが、それをわざわざ本人に強引に聞くまでもない事だ。
「無理に言わなくても大丈夫。俺は陰キャのブサメンオタク野郎だから慣れてるし!」
そう言って水無瀬にニカッと笑ってみせたが、自分自身そんな事を言ってて悲しくなってくる。
「あ、おーい!李玖ーー!」
そんな事を話していた俺たちの後ろから唐突に女の子の声がし、呼び止められた。
「おぉ、雪菜!おはよー!」
俺を呼び止めたその女子の名は「高崎雪菜」と言い、俺の隣の席のギャルだ。
金髪のポニーテールで耳にはピアスをしており、超がつく程の美少女。制服のボタンも二つほど外してしまっており、雪菜のその豊満な胸が今にも露出してしまうのではないか、と思う程に着崩している。
身長は155センチ程だが、小麦色に日焼けした健康的な肌、豊満な胸にくびれた腰、今にも下着が見えてしまいそうな程まで丈を詰めたスカート。
男女別け隔てなく会話するその陽キャぶりから、人気も高い。
ギャル仲間の中心的な人物だが、決してオタクや陰キャをバカにする事はなく、むしろそういったボッチ達に、積極的に声を掛けにいっているあたりからすると、面倒見が良いのだろう。
「李玖、なんで水無瀬さんと一緒に登校してんの?いつもは一人なのに。」
雪菜はいつもとは違う光景に怪訝そうな表情を浮かべている。確かに俺と水無瀬は異色のコンビだからなぁ…………気になるよなぁ。
実際、登校している男子生徒達は二度見どころか三度見、四度見をしてくるくらいだ。
「まぁ、こりゃあれだ、説明するとややこしくなるんだが……水無瀬の体調が悪いから……。」
「ふーん、へぇー、ほぉーん。水無瀬さんの体調が悪いから、わざわざ腕組んで登校してるんだぁ……?へぇーーーー。」
あれ、なんか雪菜の様子がちょっと……ピリついてる……?俺を見る目もなんかキツい目つきになってるし……。すると、突然雪菜が思いもよらない言葉を発してきた。
「ねぇ、李玖はさ、水無瀬さんの事好きなの?」




