修羅場。
ーーーー水族館にて。
「こっち、こっち!早く、李玖ーー!!」
俺は雪菜と水族館のチケットを買い、館内に入る。 俺は釣りが趣味の為、ついつい魚を見ると興奮してしまうが、今回は抑え気味で行こう……。
「雪菜、まずはどこから行く?」
俺はそう言って雪菜の方を向いたその瞬間…………。
「李玖君…………な、何で…………?」
俺の視線の先には、水無瀬が呆然とした様子で立ち尽くしていた。
「み、水無瀬………。」
「李玖ーーーー!何して……ん、の……。」
水無瀬の姿を見た瞬間、雪菜もその場に立ち尽くしてしまっていた。
「ーーーーり、李玖は私と正式にお付き合いする事になったんです、だからお構いなく水無瀬さん!」
雪菜は大きく息を吸うと、水無瀬にそう言い放ち、俺の手を引き歩き出す。
「ま、待ってください!ニセコイ関係はまだ終わっていませんよ!? 李玖君は私の彼氏なんです! ゆ、雪菜さんこそ、お引取り下さいぃ!!」
水無瀬は俺と雪菜の行く先を両腕を広げ、進路を妨害してくる。
ーーーーーーーーその時だった。
「そこの偽恋人ども、待ちなさい。」
どこかで聞いた事のあるこの声……。今まで毎日ってくらいに聞いてきたこの声……。
このタイミングで出会いたくなかった人、ナンバーワン。
今や義姉になった「柚葉」と義妹になった「花凛」だった。
「なんで、アンタ達がここにいる!?」
「李玖君!?お姉さんと妹さんですよ!?どうしたんですか、喧嘩でもしたんですか!?」
あからさまに姉妹(義理)に対する態度を豹変させた俺に、水無瀬はただただ狼狽えている。
「コイツ等は姉妹じゃないよ。今まで散々姉妹のフリしやがって……。 あんな見せられ方して、俺が傷つかねぇとでも思ってたのかよ!」
「見せられ方!?何を見せられたんですか、李玖君!?」
「お前ちょっとうるせぇから黙ってなよ。」
取り乱す水無瀬を雪菜がひっ掴み、どこかに連れて行ってしまった。
「確かに急に鑑定結果見せられても、動揺して当然よね……。でもね、李玖ちゃん。 あの鑑定結果は、父さんから言われたからなの……。」
「親父が…………?何で、関係ないだろ親父は!?」
「あるのよ。『貴方のお父さん』だったから……。私達は、お母さんと前のお父さんとの間に産まれた子供。 そして、李玖ちゃんは今のお父さんと前のお母さんとの子供だったの……。」
な、なんだよ……それ……。今まで知らなくて育ってきたのか……。
俺は本当の母親の顔も知らないまま……病気で亡くなった母親を本当の母親だと思い、義理の姉妹を本当の姉妹だと思っていたのか……。
ーーーーはは、意味わかんねぇや、もう。
その後、俺はどうしたのか覚えていない。雪菜と水族館回った気もするし、水無瀬と水族館回った気もするし、義理の姉妹と水族館回った気もする…………。
一人で寂しく帰った気もする……。
こんな経験、人生で二度と無いから楽しめ、なんて徹には言われそうだけど、そんな器はでかくない。
いくら現実から目を逸したって、今ある事実は変わりやしない。逃げても逃げても、現実は変わらない。
俺はいつしか家の自室に戻っていた。部屋から一歩でも外へ出たら、また『姉妹』と思っていた人と出会わなければならない。
ーーーーその空気感が、俺にはとてつもなくいたたまれなかった。




