断固拒否。
俺は取り敢えず、雪菜との彼女計画は一旦保留とし、キッチンで夕飯の準備を済ませた。
「夕飯に独りじゃないのって、いつぶり位だろ……!」
ボソリと呟く雪菜のその顔はどこか嬉しそうな顔をしていた。 余程寂しい思いをしてきたんだろうな……。
「ほら、李玖が食べたがってた『マグロの刺し身』買っておいたよ!」
「あれ?それは高いから買わなくていいって言ったのに!」
「いいじゃん、だって李玖との食事、楽しみだったんだもん!」
雪菜はそう言って、俺の隣の椅子に座る。
「なぁ、雪菜。いいのか?その、俺となんかと付き合って……。雪菜ならすごいモテるし、俺よりも良い奴なんて山程……。」
「分かってないなぁ、李玖は。本当に鈍感。」
そう言って、俺の為に買ってくれたという刺し身をヒョイヒョイと食べ始めてしまった。
「お、おい……それ、俺の刺し身じゃ……!?」
「知らないよー!」
ちょこっとだけ拗ねた様に、雪菜は刺し身をつまんでいく。 でも、なんか雪菜との夕飯も楽しいな。変に気を遣わなくてもいいし。
「李玖、さっきの恋人の件……なんだけど……。もし、本当に付き合ってくれるなら、私……何でもするから! 水無瀬さんには、私からしっかり説明するし!」
うーーん……。本当に大丈夫なのかな……。 でも、わざわざ『ニセコイ』になってくれた水無瀬にも悪いから、ニセコイ関係を切った方が、水無瀬の為にもなるかも。
そうすれば、水無瀬もきっと本当の彼氏を作りやすいだろうし……。
「雪菜にお願い出来るならしたいけど、正直どうしたらいいか迷ってるのは事実だよ。」
「分かるよ、その気持ち……。でも、これ以上、水無瀬さんに偽の恋人をお願いし続けるのは、水無瀬さんに失礼だし、私なら李玖の事、理解してあげられるから、私が恋人になれば丸く収まるよ。」
「わかった、じゃあ頼むよ。雪菜!」
俺は雪菜に恋人の件をお願いし、その日はゆっくりと二人で過ごした。
ーーーー。
「李玖、お風呂一緒に入ろ! これからは恋人同士になるんだから、別におかしい事じゃないよ!?」
「いやいや、色々とやる事すっ飛ばしてるから! まだ早い、風呂に一緒に入るのはまだ早いから!」
俺の言葉に雪菜は、どこか寂しそうな表情で俺の顔を眺めてくる。
「そんな顔しても駄目だ。別々に入る!」
今の俺にはそんな度胸はないっての!一緒に入れたらそりゃ嬉しいけど………無理無理!
ーーーー据え膳食わぬは男の恥とか言うけれど、俺にはそんな度胸あるはずが無いので、勿論無理だった。




