困惑。
「雪菜、雪菜………起きてって、力強えぇ!」
俺は首根っこを抱きかかえられた状態から、更に押さえ込まれ、両足を腰に回されて、完全に抱きつかれてしまった。
これじゃあ、完全に身動き取れないし、どうしたらいいんだ!?
俺は必死に解こうと体を動かすが、全く動じない。そうこうしている内に、雪菜の体から甘い香りが漂ってくる。
さっきの香水とは違う香り……まさか、ボディーソープ!? イカンイカン!これ以上いたら理性を失う!
胸の谷間に顔を埋められた上に、甘い香りまでして、俺の理性を追い詰める。
「雪菜、おい起きろ!」
俺は何とか顔だけ出すと、雪菜の顔を見る。すると、雪菜は既に起きていた。
「どう?興奮した?」
雪菜は俺の顔を見るなり、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながらスマホを取り出す。
「ま、まさか……お前……。」
俺の言葉に雪菜は無言のままスマホの動画を再生させる。そこには、俺がお姫様だっこをして部屋に入ってくるところから、さっきまでのシーンが全て録画されていた。
「これね、予備のスマホ。部屋の隅に仕掛けておいたんだ! 李玖なら絶対に私を部屋まで運んでくれると思って!」
何考えてんだ、雪菜の奴は!さては、あの動画を弱みに何かさせるつもりだな……。
「李玖、私が何の為に協力してほしいか、分かった?」
「い、いや……全く……。」
「鈍感だなぁ……。もう、正直に言うね。……私の彼氏になって欲しいんだ! って言っても水無瀬さんみたいな『偽物』じゃなくて、本当の恋人! 李玖と水無瀬さんが偽物っぽいなってのは、もうクラスメイトから薄々気付かれてるんだよね……実は。」
「待て待て、って事は……俺は明智達を騙す為にわざわざ『学校一の美少女』と偽で付き合ったクソって事になるんじゃ……。」
「まぁ、そうなるかな。てか、学校一の美少女とかハッキリ言わないで。何かムカつくから。」
「ごめん。でも、そうなるとどうすりゃいいんだ?」
困惑している俺を尻目に、雪菜からある提案が出される。
「さっきも言った様に、私が李玖と本物の恋人になるの!で、皆の前で『私から』公言するわ。ニセコイの理由とか、明智達に何で歯向かわなかったのか。全員の了承を得ようなんて思ってない。 だけど、これだけはハッキリ言える。李玖を見てきたのは私の方が長いし、絶対に私の方が李玖の事、好き!! 学校での発言力だって私の方があるんだから!」
雪菜は胸を張って、そう豪語する。彼女の瞳は自信に満ち溢れていた。
そんなんで本当に大丈夫なのかぁ……?俺の頭には一抹の不安がよぎっていた。




