安らぎ。
「俺が気を遣ってる……?」
「そう。正確には遠慮して一線引いちゃってる感じ。」
俺は雪菜との帰り道、雪菜から「気を遣ってる」と指摘されていた。
「まぁ、そりゃ家にお邪魔してるんだから当然だろ。洗濯は……ちょっとやり過ぎたかも知れないけど……。」
「ちがう。そういう事じゃなくて、私に対して一線引いてる感じ。やたらに私に気を遣ったり、一線引いててよそよそしくて……。何か友達だけど友達じゃないみたい。」
雪菜の言葉に、俺は覚えがあった。雪菜は隣の席で、ギャルが苦手な俺は何となく踏み込めないでいた。
一方、雪菜は陰キャな俺でも気にせずに話してきてくれて、いつも心の扉を開いてくれていた様に感じた。
「俺は今まで雪菜の隣の席だったけど、その、ゴメン。俺は自分がギャルが苦手だって事を理由に、雪菜がいつも心を開いてくれていたのに、自分から一方的に心を閉ざした。……不快な思いをさせてゴメン。」
俺は買い物袋を持ちながら、帰り道をゆっくり歩きながら雪菜と話していた。 気が付けば俺は雪菜に頭を下げていた。
俺の思い描くギャルと、雪菜は全然違っていた。ただ彼女はギャルの格好していただけで、誰にでも分け隔てなく話せる明るく優しい子なのだと。
ーーーーそんな事、とっくに分かっていたはずなのに、時が経てば経つほどどうして接していけばいいのか、分からなくなっていたのだ。
「わかってるよ。ただちょっとからかってみたかっただけ。 李玖、お姉さんと妹さんの件、悩んでてもしょうがないよ。なるようにしかならないんだし。 でも私は精一杯協力する。手伝える事は手伝いたい。」
雪菜はそうだった、こんな感じだった。誰かが困ってたら、必ず手助けしてあげる優しい心の持ち主。
「ありがとう、本当に助かるよ。ただ、姉には何で今更こんな事をしたのか、聞かないとな……。」
「うん……そうだね。正直、私もそれは気になってるかな。三人共すっごく仲良しだったから、血が繋がってないなんて、ちょっと信じられないかな……。」
雪菜から見ても、本当の兄妹の様な仲の良さだったみたいだ。
ーーーー。
雪菜の家に着き、食材を冷蔵庫に入れると、俺と雪菜はソファーでテレビを眺めていた。
「…………なんか、本当の夫婦みたいだね。」
からかう様に、ふふっ!笑ってくる雪菜はいつもと格好が違うせいもあってか、少し大人びて見えた。
「からかうなよ、俺みたいな奴と一緒にいると、陰キャが伝染るぞ!」
「私は別に、李玖といられるなら構わないよ。陰キャでも。というかさ、李玖って別に陰キャじゃないよ? 自分でそう思ってるだけ。」
「そんなわけ……。」
「あるの!李玖は陰キャじゃないし、ブサメンでも、根暗でもない!オタクなのは、認めるけど……。」
雪菜は語気を強めてそう言い切る。雪菜の真っ直ぐな瞳が俺にはとても嬉しかった。
「ありがとう……雪菜。」
俺はこの時、心の底から安らぎを得ていた。




