相容れない。
「兄さんの事……好きですよね。」
睨みを利かす花凛は水無瀬に詰め寄ると、とんでもない事を言い放つ。我が妹ながら、相変わらずぶっ飛んだセリフを放つなぁ……。
「………………ふぇっ!?」
花凛の言葉に、ボンッ!と顔を真っ赤に染めて、水無瀬は再び俯いてしまった。
「おい、花凛!水無瀬は体調悪いのに、何詰め寄ってるんだ!」
大体から水無瀬が俺の事を好き?そんなわけ無いだろ……。 水無瀬は学校一の美少女で、イケメンをことごとくフりまくる『氷のいばら姫』だぞ!?
ーーーー俺みたいなアニメやゲーム、漫画にしか興味が無いようなブサメン陰キャ野郎を、水無瀬みたいな学校一の美少女が好きになる訳がない……。自分で言ってて悲しくなるなぁ……。
「まぁまぁ花凛ちゃん、水無瀬さんも体調悪いみたいだし、少しここでゆっくりしてもらったら?」
姉の柚葉が水無瀬の肩に優しく手を置くと、花凛をなだめる。
「わ、わかりました……少しなら…。」
花凛は昔から姉さんの言う事は静かに聞くんだよなぁ。まぁ、花凛は元々そんなにムキになる方じゃないから、こんなに感情剥き出しにするなんて珍しいといえば珍しいな。
ーーーー。
「汚いけど……ここ俺の部屋だから、好きに座ってよ。」
俺は水無瀬を自分の部屋に案内すると、ちょこちょこっと、散らばっていた雑誌類を片付ける。
「ありがとうございます。でも……あの、ごめんなさい、李玖君。朝から盛大に迷惑を掛けてしまって……。本当にごめんなさい!すぐに出て行きますので!」
慌てふためく水無瀬だが、こんな状態で一人で行かせるわけにはいかない。
「大丈夫だよ。俺も図書委員の当番だった訳だし。それに、今日の当番は先生が代わりに引き受けてくれるみたいだからさ。一緒にゆっくり登校しよう。」
「ふぇっ……………えぇぇぇぇぇ!!?? 李玖君と私が、一緒に……登校……!?」
「あ、ごめん……嫌だったら別に無理にとは……。」
「嫌じゃない!もちろん、嫌なんかじゃないです!一緒に……行きたい……です。」
大丈夫かな、無理してないといいけど……。無理やり行かせる感じにさせちゃったのかな……。
「ちょーーっと待ったーーーー!!」
ドガァァンッ!と、俺の部屋のドアを破壊せんとばかりに、勢い良く開けて突入してくる花凛。コイツ……盗み聞きしてたな、絶対。あと、ドア壊れるから思い切り開けるのはヤメロ。
「いいですか、兄さん!?兄さんの隣は『私』でなければなりません!クラスメイトとの登校は替えがききますが、妹の存在は唯一無二!これは絶対です! 一日一日を大切に過ごして行かなければ、私と兄さんの関係は日に日に希薄なものになっていってしまいます!つまりそれは家庭崩壊への第一歩!」
花凛はフフンッ!と自慢げに妹アピールをしてくるが、いつかは花凛も兄離れをしなければならない時がきっと来る。 あと、何でそんなに誇らしげなのか解らない。
「分かった。」
「分かってくれたんですね、兄さん!」
パァァァッと表情を明るくする花凛。いつも通り、ブラコン平常運転。はぁ、仕方ない……。
「一緒に行こう、水無瀬。」
「ふぇっ!?」
「え、に、兄さん?」
俺の唐突な言葉に面食らった顔をする花凛と水無瀬だが、俺は意見を変える事なく語気を強める。
「一緒に登校しよう、水無瀬!」
「は、はい! よ、宜しくお願い……します!」
あわあわしながら、水無瀬は俺との登校を了承してくれた。妹の兄離れの為に水無瀬を利用してしまう形になって申し訳ないが、水無瀬も体調悪いし、俺が一緒じゃないと不安だからな。
「姉さん、ドタバタしちゃったけど、行ってきます!」
呆然とする花凛をよそに、俺は水無瀬の手を引き部屋を後にすると、姉に軽く挨拶して玄関に向かう。
「李玖ちゃん、早く帰ってきてね!」
相変わらず、姉のブラコンぶりもなかなかのモンだなと思いつつ、俺は早々に靴を履き、水無瀬を連れて家を出たのだった。




