家族。
「兄さん、おはようございます!」
朝っぱらから、俺は花凛の挨拶で目が覚める。これは、ほぼほぼ毎日続いているのだが、今日は眠気まなこで辺りを見回すが、花凛の姿が無い。
だが、花凛が毎日欠かさず付けている甘いコロンの香りはする。 俺はハッとして、ベッドの布団をめくり上げると、俺の太もも辺りで膝を曲げ、身体を丸めた状態の花凛が寝転がっていた。
「バレちゃいましたね……!」
ペロッと舌を出す花凛の姿に、正直ドキッとしてしまう。そりゃそうだ。花凛も学校内でも凄まじく人気が高い。
そんな美少女が一緒の布団に寝ていて、ドキドキしない方がおかしい。いや、したらおかしいのか……実の妹なんだから。
「花凛、お前は何で毎日毎日、俺の布団に潜り込んでくるんだ!」
「そんなの、決まってるじゃないですか。今日の兄さん分を補給してるんですよ。 兄さんからはとてもいい匂いがしますから……ハァハァ……。」
このクセさえ無ければ完璧美少女なのにな……。
「ほら、早く降りなさい!ぐおぉぉぉぉ!」
俺は、思い切り掛け布団を花凛から引き剥がそうと引っ張るが、花凛の抵抗もなかなかのものだった。
「兄さん、お願いです、もう少し!後生ですからもう少しだけー!!ぐぬぬぬ!!」
「お前は何で……こういう時だけ力強いの!?」
「兄さん成分を補給出来るのでしたら、私は全力で抵抗させて頂きますぅ!」
花凛もこうなっては引き剥がすことはなかなか難しい。俺は、早々に降参することにした。
「はあぁぁぁぁぁぁ………!兄さんの匂いに包まれて、私は幸せですぅ……!」
兄の布団に包まり、ハァハァする残念美少女……。いつからこんな風にブラコンを拗らせてしまったのだろうか。 気が付けば、花凛はこんな風になってしまっていた。
本当なら彼氏もいていいだろうに……つまりあれか、彼氏が出来ないから、兄で穴埋めをしている、と。
「花凛、恋人は作らないのか……?」
俺の言葉に、それまでハァハァしていた花凛の動きがピタリと止まる。
「兄さん、私は兄さんがいれば男なんて要りません。つまり、兄さん以外の男は、不要。」
真顔でキッパリとそう言い放つ花凛は、もはや狂気じみている。人間、程々が一番……拗らせてしまうといい事はないな……。
「ところで兄さん……今日は学校休みですよ?」
あ、あれ……?そうだったか? 俺は自分のスマホを見ると確かに休日……。
「おい、花凛。俺は休日なのに、意味も無くこんなに朝早くから叩き起こされたと言うのか……?」
よし、誰か俺の背景に『ゴゴゴゴゴ……!』という効果音を入れておいてくれ……。
ーーーー。
「おはよう、姉さん。」
俺は一階まで降りると、リビングに向かう。そこには既に姉の姿があり、朝食の準備がされていた。
「あら李玖ちゃん……今日は早いのね。休みの日はゆっくりと寝ているのに……。」
姉さんはソファーに座り、コーヒーを片手に昨日に録画したドラマを鑑賞中だった。
「花凛に叩き起こされたんだよ。まぁ、俺も今日は学校だと思い込んでたからいいんだけど、休みだって知ってからは損した気分だ。」
俺はそのまま、キッチンの脇にある洗面台に向かう。 歯磨きをしながら、取り敢えず今日は何しようかと考えてみるが、特にやりたい事も見つからない。
ーーーー勉強するか。
俺は歯磨きと洗顔を終えると朝食をとり、姉の隣に腰掛ける。
「このドラマね、姉が弟に恋をしちゃう話なんだけど……。なかなか二人がくっつかなくてヤキモキするのよね。 ね、李玖ちゃん!?」
そう言って姉は座っている俺の上に、向かい合うように跨って座ってくる。
「ね、姉さん!?」
俺は内心穏やかではなかったが、冷静を装い、ゆっくりと引き剥がそうとする。いつもなら簡単にどいてくれるのだが、今日はいつもと違っていた。
「コレ、なぁんだ?」
姉は数通の封筒を片手に、不敵な笑みを浮かべていた。




