自分。
「え、は?……俺みたいな奴が、女の子に好かれてる!? いやいや、そんな筈ないでだろ!?」
俺が女の子に好かれてるなんて……あり得ない。そもそもどこの誰に……。
「本っ当に、兄さん……そういうトコなんですってば!! 気配り出来て、優しくてイケメンで、強くて頼り甲斐があって、しかも高身長で頭も良い! こんな優良物件なかなかないですよ!?」
それは俺と真反対な感じがするんだが……。花凛はブラコンのせいか、俺を過大評価するんだよなぁ。 てか、物件って……。
「兄さんは自分の魅力に気付いていませんが、周りの女の子達からは絶大の人気を誇っているんですよ!(少なくとも一年生の間では…!)」
「はぁ、よく分かんないけど、花凛がそう言うならそういう事にしておくよ。ありがとう。」
確かに花凛の言う通り、俺は自分自身を評価していない。それは卑下とかではなく、本心からそう思っているからだ。
昔から男子からはボッチだ、陰キャだ、オタクだのとイジられて、女子からも陰キャだの、そんなんだから彼女が出来ないだの、そんな陰キャには彼女出来ないと言われ続けてきた。
そんな俺が、今更前向きに恋愛等について考えるなんて、到底無理な話に決まってる。
「まぁ俺は、花凛がそう思ってくれているだけで充分嬉しいよ。」
「うぇ!? に、兄さん……それってどういう……。」
「どうも何も……そのまんまの意味だよ。花凛だけでも、そう思ってくれているのなら、それだけで充分嬉しいし、満足だって事。」
「兄さん。……あ、ありがとう……ございます……!」
花凛は何故か急に上機嫌になり、普段は歩かない、俺の三歩程先を歩く。他の家庭では当たり前の事なのだろうが、妹の花凛は普通に歩く時は滅多に俺の前を歩く事はない。
余程何か楽しい事があったのだろう。
ーー母さんに久しぶりに会えたから、かな?
「ただいまー。」
すっかり日も暮れてしまっており、完全に姉に連絡をし忘れていた俺と花凛は、姉から大目玉を食らう事になった。
「どうしてあの『たぬきおやじ』の所に行くなら、予め連絡を入れなかったの!心配するでしょ!?」
それを聞いた俺と花凛はスマホを見ると、姉から鬼電があった事に今更ながらに気付いた。
「まさか、貴方達……スマホ見てなかったの!?スマホも着信の音量上げて、常に確認しておかなきゃ、意味無いでしょうが!!」
ここまで姉にこっぴどく叱られるのは久しぶりだった。
小さな頃に、近所の窓ガラスをサッカーボールでぶち割った時は、小さいながらも姉が矢面に立ち、父親はといえば、コンピューターで言葉を打ち込まれたロボットの様に、只々無表情で『申し訳ありませんでした。』と言うのみだった。
今の俺達があるのも、姉が陰ながら支えていてくれるからなのだろう。
ーーーー。
「それで、李玖ちゃん……。アイツはどうだった?相変わらず傲慢だった?」
姉の問いかけに俺は静かに首を振った。
「いや、あの頃の面影は全く無かったよ……。なんかこう、言い表しにくいんだけど、痩せ細ってて抜け殻みたいだった。」
姉は、そうなんだ。と一言だけポツリと言い、キッチンに向かって行った。
「ご飯まだでしょう?食べなさい。」
俺と花凛は、姉から出された夕食を食べながらテレビを眺めていた。
「もう絶対にあの家には行っちゃ駄目だからね。」
姉は俺と花凛にキツくそう言い放つと、二階の自室に戻って行く。
残された俺と花凛はまたも不思議な気分でお互いの顔を見合わせるのだった。




