悪夢は続くよどこまでも。
「水無瀬!?ど、どうしたんだ、いきなり!大丈夫か!? どこか痛いのか!?てか、何で家に?」
疑問は沢山あったが、とりあえず当番どころじゃないな……。
俺は号泣し、家の前で膝から崩れ落ちている水無瀬を抱きかかえると、とりあえず落ち着かせる為に家の中に入れることにした。
「よっと……じっとしてなよ、水無瀬。」
「ちょ、ちょちょちょちょちょ! 何やってるんですか、兄さん!?」
「じ、城ヶ崎君!?ちょ、ちょっと!いきなり何を!」
お姫様だっこで抱きかかえられた水無瀬は何やら慌てた様子で足をバタバタさせていたが、有無を言わさずリビングのソファーに座らせた。
後ろでは何やら花凛がギャーギャー喚き散らしているが、今はそれどころではない……。
「あら?李玖ちゃん、学校に行ったんじゃ……ってどうしたの、その子!? ま、まさか私達だけでは飽き足らずに、誘拐!?」
水無瀬を落ち着かせる為にソファーに座らせると、キッチンの奥から慌てた様子で、パタパタと小走りで姉がやって来る。
「何でそうなる。同級生だよ!玄関の前にいたんだよ、何か泣いてて取り乱してるから落ち着かせる為に連れて来た。 水無瀬、図書委員の当番の事、連絡してくるからここで待ってて。」
弟に対して、ひどくね?と思いながらも俺は学校に図書委員の当番が行けそうにない事を電話で連絡した。 幸い、図書委員会を担当している教師はその辺りは適当な為、説明は簡潔で済んだ。
「す、すみませんでした……。本来ならば図書委員長の私が連絡しなければならないのですが……。」
戻って来た俺に、水無瀬はソファーからフラフラと立ち上がり、深々と頭を下げてくる。本当に真面目なんだよなぁ……。
彼女の名前は「水無瀬 歩乃華」といい、俺と同じクラスの生徒。
学校一の美少女と言われており、ファンクラブも存在する程に人気がある。
真面目な性格で、成績優秀、容姿端麗。サラサラの黒髪ロングヘアーをハーフアップアレンジしており、女優ではないかというくらいの美人。
身長は165センチ程度、モデル並みの体型、色白な肌、キュッと引き締まった腰まわり。いつも黒色のニーハイソックスを履いている為、ただでさえ細い脚が更に細く見える。
今まで男子生徒に告白された人数は数知れず、だがその全てを辛辣な言葉を浴びせて冷徹にフッている事から、付いたあだ名は「氷のいばら姫」だとか。
特に俺は冷たくあしらわれたりした事が無いのでよく解らないが、男子生徒は普通に声をかけるだけでも超絶塩対応らしい。
「水無瀬……落ち着いたか?何で泣いてたんだ?ゆっくりでいいから話してくれないか?」
俺の言葉に水無瀬は小さく頷くと、ポツリポツリと呟いた。
「それは……。今日の図書委員の当番が……李玖君とだったから、一緒に登校しようかなって、思ってて……。 でも、その、が、学校内でも人気の花凛さんと一緒に家から出て来たから……何ていうか、びっくりしちゃって……ごめんなさい……。」
ワタワタしながら話す水無瀬は、そう言うと耳を真っ赤にしながら俯いてしまった。
「水無瀬……。よく分かんないけど、俺と花凛は兄妹だから一緒の家に住んでるのは当然と言うか……。」
「…………ふぇっ!?」
やっぱりな……。姉と妹はよく似ているが、俺と姉妹は似ていない為、学校では兄妹である事は隠しているのだ。
先にも述べた通り、妹は学校内でとても人気が高く、俺と一緒に歩いていたら男子生徒の視線が痛いからだ。 だから、なるべく静かに穏やかに高校生活を送りたい俺は、花凛とは時間をずらして登校していたのだ。
「じゃ、じゃあ、ど、同棲とかでは……なく?」
「何でそうなる!?まぁ、俺達似てないけど、普通に兄妹だよ。」
「そ、そっか……よかった……。」
ホッと胸を撫で下ろす水無瀬。確かに高校生で同棲とかはビビるよな……。 とりあえず誤解を解けたみたいで良かった。
「良くありません。全然良くありませんよ。」
それまで黙っていた花凛が口を開く。その目はキッ!と鋭い眼光で水無瀬を睨んでいた。 そして暫くしてから花凛は再び口を開く。
「水無瀬……先輩でしたっけ。……兄さんの事、好きですよね?」




