しっくりこない。
「李玖君、さっきはかっこよかった!」
「李玖君、やっぱり強いんだね!しかも髪の毛かき上げたらイケメンって、ノーマークだった!」
俺は今、困惑している。それは金持ち君との戦いの後、俺が強いのを再認識した女子、俺の顔がイケメンだという節穴女子から言い寄られているからだ。
「良かったな、李玖!あれからモテモテじゃん!」
「良くねぇよ。それより、花凛が心配だわ。金持ち君と同じクラスなんだろ?何かされてないか、心配で心配で……。」
「李玖も負けず劣らずのシスコンだよな。まぁ、こんな事もあるかと思って、さっき屋上で出会った子と連絡先交換しといたのよ。これで花凛ちゃんが何かあったらすぐに連絡してくれるって訳!」
そう言って徹は親指をグッ!と立ててくる。
「まぁ、シスコンかどうかはさて置き、さすがは徹だ!お前、やるじゃねぇか!」
俺は徹の頭をわしゃわしゃ撫でくり回した。よし、ここは奮発してアップルパイを奢ってやるからな!
「でもよぉ、さっきの金持だっけ?アイツ、お前にあんな大口叩いてたけど、大丈夫なんかね?俺は李玖の正体知ってるからアレだけど、多分金持は知らねぇだろ?」
そう、徹は俺の素性を知る数少ない人間の一人だ。ついついポロッと口から情報が漏れてしまう徹も、流石に俺の正体に関しては固く口を閉ざしている。
「まぁ、知らないだろうな。知ってたらあんなアホな事をしてこないだろうし。………ってか、そもそもなんで花凛は狙われたんだ?」
今更ながらだが、何故花凛が金持ち君に狙われたのか、俺はその理由を知らないのだ。
「李玖……お前は勉強も出来るし、喧嘩も強い。だけど、こういうことに関してはからっきしなんだよなぁ……。」
徹に心底呆れた顔をされると、無性に殴りたくなるのは何故だろうか。 しかし、姉妹からも、似たような事でちょくちょく『李玖は何も分かってない!』と怒られる事もしばしば。
「あ、あの……李玖!さ、さっきは……。」
「り、李玖君……さっきは、あの……。」
談笑していた俺と徹の前に現れたのは……水無瀬と雪菜だった。
二人は申し訳無さそうに下を向き、うっすら涙を浮かべていた。 俺と徹はお互いに顔を見合わすと、首を傾げてから俺が声を掛けた。
「どうした?話があるなら手短に頼むよ。」
俺は敢えて突き放す様な態度を取ってみせた。恐らくは花凛の事なんだろうけど。
「そ、その……さっきの、花凛ちゃんの、事で…………。ご、ごめんなさい!」
水無瀬と雪菜は半べそをかきながら、ほぼ同時に謝罪してくる。
「さっきの金持ち君との事だろ?気にしなくていいよ。あそこで水無瀬たちが止めたところで状況は悪化しただけだろうし、謝ってくれただけで充分! あそこでコソコソしてるエセ不良グループの明智君よりはずっとか人間だと思うぜ?」
俺は普段オラオラしてる癖に、いざとなると陰でコソコソしてるエセ不良グループが何よりも気に食わない。
そこで俺は、以前俺にぶん殴られてから、一切口を出して来なくなった自称不良グループリーダーの明智に対して、わざと聞こえる様に大声でディスってやった。
「……………………ッ!」
言い返すことも出来ずに机に突っ伏している無様な姿を見て、俺は嘲笑う。
「何だ、言い返す度胸も無いのか。とんだ負け犬だな。本当の陰キャブタ野郎はどっちなんだろうな。」
そう、これが俺の本当の性格だ。あまりにもねじ曲がって拗れに拗れてしまった為、徹には『なるべく大人しくしてろ!』と言われてきたが、二人もぶちのめして大人しい性格なんて、今更できるはずも無い。
「おい、やめとけ!!もうアイツのライフはゼロだ。」
徹に諭されて、やっとこさ溜飲が下がった。 フゥッとため息をついて辺りを改めて見回すと、皆俺の事を遠巻きにジッと見つめていた。
「…………何なんだよ、ったく。」
まぁ、今まで人と深く絡んで来るのを避けてきた俺からしたら好都合なんだが、なんかしっくりこない。心の片隅のモヤモヤが晴れない、そんな気持ちだった。




