実妹。
「でも、何を言ってきたとしても、李玖君と花凛さんは実の兄妹ですよね。」
水無瀬が放った言葉は花凛には相当効いたらしく、その一言で押し黙ってしまった。
そう、俺と花凛は兄妹。そして、花凛は実妹。秘密裏に付き合うとかは出来るかもしれないが、法律がその先を許さないだろう。そして、世間も。ましてやそれが結婚ともなれば尚の事。
花凛は、現実をまざまざと見せ付けられたのだ。その事実を受け入れるのは容易ではないだろう……。
「そう、ですね……。偽恋人の癖に。私なんかが出しゃばって……すみませんでした……。偽恋人の癖に。」
花凛のその声は、とても小さくか細くなってしまっていた。オマケで余計な言葉が入っているが……。
「で、でも……一つだけ、一つだけお願いがあります!」
でも、そこは俺の妹。食い下がる食い下がる……。諦めが悪いとはまさにこの事です。
「兄さんと一緒に登校だけはさせて下さい!お願いします!最近やっと叶った私の夢なんです!」
もうここはなりふり構っていられないのだろう。水無瀬の真ん前で遂に土下座までしだす花凛。ブラコンもここまで来ると、狂気の沙汰ともとれる。
「か、顔を上げて下さい、花凛さん……。登校については、今まで通り李玖君と一緒に登校して下さっても結構です。 ただ、学校では私と李玖君は恋人同士ですので、宜しくお願いします。」
水無瀬は若干、花凛の土下座に引きつつも、登校については了承する事にしたようだ。 まぁ偽の恋人だと、あんなにお願いされたら断りにくくなるよな……。
「せっかくお泊りセットを用意してきたんですが……今日はやめておきますね。また今度泊めてくださいね!」
そう言い残し、鬼を二人残して水無瀬は帰ってしまったのだった。
「兄さん、水無瀬さんとの『偽恋人』楽しいですか?楽しいですよね。だって、ずっと鼻の下伸ばしてましたから。 何でそんな大事な話を放っておいたのか、理解に苦しみます。ホント変態。 小さな頃からの付き合いを一気に無かった事に出来る兄さんはとても素敵ですね!」
「李玖ちゃんは、こんなに美人な姉と可愛い妹がいるのに、わざわざ『偽恋人』を作ってまで私達を拒絶するつもりなのかしら。 まさか弟にこんな形で裏切られる事になるなんて……。」
花凛の刺々しい集中砲火の後に、姉の援護射撃まで入って、俺のハートはズタズタだった。
気が付けば、リビングには俺一人が取り残されていた。姉と妹はどうやら、無言で部屋に戻っていってしまったようだ。
俺は姉妹に愛想を尽かされた気がして、ただ呆然としていた。
翌朝、俺は二人に挨拶をしたがガン無視され、朝食も用意されていなかった。仕方なく、その辺りにあった食パンを口の中に詰め込むと俺は家を飛び出すかのように登校していた。
この日は花凛もおらず、一人寂しく登校するのか、と嘆いていたその時だった。
「やほーー、李玖!どしたん、一人で登校して。水無瀬さんと付き合ったんでしょ、一緒に登校しないの?」
後ろから声を掛けてきたのは雪菜だった。俺は気がつけば今までの経緯を、雪菜に話してしまっていた。雪菜は俺がスッキリするまで黙って聞いてくれていた。
「なるほどねー。確かにブラコン具合が酷いけど、それってさ、最終的に李玖が誰と一緒に登校したいのか、じゃないのかな?」
雪菜から帰ってきた答えは、至極真っ当な答えだった。俺が一緒に登校したい人、か。
「いくら恋人だって言っても、『登下校は友達がいい』って子は私の友達でもいるし、そこは強制できないでしょ? だから、最終的には李玖が選べばいいんじゃないかな。 まぁ、私は李玖と一緒なら、登下校が一緒でも……。」
確かに雪菜の言う通りだな……。そこまでは誰かに選択させられるものでもないし、自分で選べばいい。雪菜の最後の方まではよく聞こえなかったけど、いい事言うじゃん!
「そうだな、じゃあ俺は…………。」




