地獄を見ろ。
『はぁ!?城ヶ崎、お前何言ってやがる!?負け惜しみか!?』
「さっきの問い掛け。俺は女の子と言っただけで、水無瀬とは一言も言ってない。そして、お前はハッキリと水無瀬と言った。 そして、お前は水無瀬を脅迫して神戸に呼び出した。この旅行の計画を何処で知ったかは分からないが、お前はやっちゃならん事をした!」
『だったら何だよ!?俺が脅迫したなんて証拠、一体どこにある?』
「証拠ならあるよ。しっかりと会話は録音させてもらった。あとはこれをテメェの親父の元に送り、水無瀬の親御さんに捜索願を出してもらうよ。そして、俺は警察にこの録音記録を持っていくだけだ。」
ふざけた真似しやがって…………。いや、フザケてたのは俺か。何やってんだ、俺は。
『ま、待ってくれ!そ、そんな事したら俺は終わりだ! い、いや、そもそも録音なんて本当はしてないんだろ!? そうだ、そうに違いない!』
コイツは……本当にどこまでもムカつくクソ野郎だな……。
「金持時生!お前の父親は、お前のせいで今から責任を取って辞職してもらう! もう少し俺の事をよく調べておくべきだったな。 俺はお前んとこの親父が経営する会社の親会社、城ヶ崎グループの人間だ!」
『そ、そんな……馬鹿な……。嘘だ!嘘だ、嘘だ!』
金持はギャーギャー喚き散らかしているが、もう遅いんだよ!
「金持ち君、今そこに水無瀬がいるだろう? 今すぐ九州の小倉にある〇〇旅館まで、水無瀬を無事に送り届けろ。そうすれば考えてやらんでもない。」
俺はそう簡単に金持ち君を許す気はなかったが、先ずは水無瀬の安全からだ。
『ほ、本当か!?い、今すぐうちの運転手で無事に送り届ける!』
その言葉を聞いて、俺は通話を切った。今思えば、こんな旅行なんてしなきゃよかったと後悔ばかりが募った。
ーーーーブーッ、ブーッ!
スマホのバイブが激しく振動する。スマホを手に取ると、そこには水無瀬の名前があった。
「もしもし。」
俺はあくまでも平静を装い電話に出た。
『り、李玖、君………………。ごめんなさい……。』
水無瀬から真っ先に出てきた言葉は、『ごめんなさい』だった。
「何の事?何がごめんなさいなの?」
『私は李玖君と旅行に行くってなった時には、既に金持さんから脅迫をされていました。 金持さんのお父さんが兵庫にいるから自分も来ている、だから来い。でないとお前のせいで父親はクビになる、と。』
やはりそんなこったろうと思ったよ。もっと前から相談してくれていれば……。
俺は水無瀬との通話を切り、旅館で待つ事にした。実際に無事で辿り着けるのか心配だった。
水無瀬を待っている間、金持ち君のお父さんからスマホに着信があり、内容としては、
『何を血迷ったか、テンパった金持ち君が水無瀬を脅迫してさらった事、俺の地位について話し貶した事、会話をすべて録音されている事』を洗いざらい話してくれたそうだ。
どうやら、お父さんは息子の金持ち君を許す気は無いらしく、徹底的に制裁を加えるらしい。 本来は次期社長として経営を学ぶ立場であったが、今回の不祥事で永久追放という厳しい沙汰が言い渡されたらしい。
俺はノートパソコンに録音内容をコピーし、メールで金持父に転送した。これは決定打となる証拠だろう。
ーーーー因みに、さっきの水無瀬の電話内容も録音されている。
あとは警察がやる事だが、金持ち君の事務所に入っていく所を、監視カメラ映像が記録していれば問題無い。
プチ駆け落ちから始まった事件だが、思い掛けない障害を取り除く事が出来そうだ。
ーーそんな時だった。コツンコツンと部屋の前まで足音が聞こえてくる。
俺は恐る恐る覗き口から見てみると、水無瀬がグッタリとした様子で待っていた。




