ニセコイ。
『今、話いいかな……。』
俺は布団に潜り込み、スマホのLIMEアプリを開き、メッセージを打ち込む。
『どうしたの、李玖君。』
メッセージはすぐに返ってきた。俺はすぐに続けてメッセージを打ち込む。
『ニセコイの件、引き受けたいと思う。よかったらお願い出来ないか、水無瀬。』
そう、俺がメッセージを送った相手、偽恋人の相手を頼んだのは水無瀬だ。 学校一の美少女と俺が付き合っている。となれば、周りの奴らも俺の事を『陰キャ』だの『根暗』だの『ボッチ』だのと馬鹿にしてくる事も無くなるだろうと言う訳だ。
我ながら情けない作戦だが、この作戦に関しては水無瀬と雪菜、そして俺とで話し合って出した結論だ。そりゃ、初めは『偽恋人』かぁ。と落ち込んだりもしたが、考え方を変えてみれば、学校一の美少女と恋人になれるのだ。
デメリットよりもメリットの方がでかいのだ!最底辺から一気に最高位まで登り詰めた気分だ。
『じゃあ、早速今から宜しくね!』
今から…………?あぁ、確かにメッセージとかも今から恋人っぽくしとかないとバレちまうからなぁ。 俺は演技が下手だし、気を付けないとな……。
十分程して、雪菜から『まだ諦めてないからな!』とメッセージが来た。恐らくは水無瀬が偽恋人になった事を報告したのだろう。
ーーーーピンポーン。
ドアのチャイムが鳴り響く。時間は夜の八時。今頃誰だ?
下の階から『は〜い。』と、姉の声が聞こえてくる。しばらくして、何やら言い合いをしているような声が聞こえてきた。
「何だ、何だ!?」
俺は只事でない事を察し、階段を駆け下りて玄関に向かう。
「こんばんは、李玖君!」
そこにはデカいボストンバッグを持った私服姿の水無瀬が、姉に入り口を塞がれる形で立っていた。
「り、李玖ちゃん……どういう事……?」
姉は玄関を両手足で必死に塞ぎながら、俺に尋ねてくる。
いや、俺も今日来るなんて聞いてないし……どうなってんの?
「確か水無瀬さんよね、どうしたの?」
姉の言葉に、キョトンとしながら水無瀬は答える。
「李玖君からニセコイの話、聞いてませんか?」
「ニセコイって……偽恋人の事よね?……………えぇ!? 相手って、水無瀬さんだったの!?」
水無瀬の言葉に暫く硬直してから、全力でビビる姉。こんな姿今まで見た事ないなぁ。
「ごめん、姉さん。明日話そうと思ってて。まさか今日来るなんて思ってなかったから……。」
「李玖ちゃん、明日、家族会議にかけるから……。あ、どうぞ、水無瀬さん!」
俺の耳元で恐ろしい一言を呟いてから、水無瀬をリビングに案内する姉。もうこのまま部屋に戻りたい……!
「何さっきから騒いで…………って、兄さん!何で水無瀬さんまでいるんですか!?」
騒ぎを聞きつけた花凛が真っ赤な目をしながら一階のリビングまで降りてくると、その光景に愕然としているようだった。
「私、李玖君とニセコイする事になりました、宜しくお願い致します!」
ニコリと微笑む水無瀬の顔は、正直めちゃくちゃ可愛い!だけど勘違いするな李玖!これは偽!そう、偽の恋人なのだから!
「なぁにがニセコイ、キラッ!よ!ふざけんな!私の兄さんをどうするつもりですか! 私より先に、『偽』とはいえ、恋人になれたからマウント取りたいんですか!?」
キラッ!はよく分からなかったが、完全に花凛は我を忘れて暴走モードに突入している。しかも、この様子だと、さっき俺と喧嘩したことも忘れてるかも知れないな。
ーーーーと思っていたら、突如として、水無瀬が余計な一言を言い放った。
「でも、李玖君と花凛さんは実の兄妹ですよね。」




