燃ゆる君、焦げては消えた
家族の悲鳴が聞こえる。
けれど助けにはいけない、ごめん。
音を立てて大火に呑まれる家の中で、僕は燃えていた。
発火原因はきっと僕の部屋だ。
何せ、見てくれと言わんばかりに使い切った灯油タンクが置かれていたのだから。
初めのうちは部屋からの脱出を試みたけど、もう何もかもが手遅れだった。
寝ている時間、深夜の犯行に、圧倒的な殺意を感じ取れる。
(ごめん、母さん、茉莉奈。 ごべん)
焼け焦げて爛れた喉。
声を出しても辛い事を理解して、思う。
罪のない優しい母、未来に想いを馳せる可愛い妹。 最愛の二人を、僕は巻き込んだ。
涙はすぐに蒸発した。
眼球の水分も、口の中の水分も蒸発した。
けれど、この想いが蒸発する事は決してない。
「ぜっだいに、ゆるざない、ごろじでやる"」
この世のものとは思えない声が出た。
そして僕ら家族は焼死した。